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5.王女

「ここだ」


王宮学園内の奥に案内された。

圧迫感があるほど狭い部屋だった。


机1つとイス2脚しかない。


「はじめましてヘリオス。私がアキレアです。狭いですけれど、ここが私の研究室です。キロンおじいさん、ヒュペリオンおじさんありがとう」


俺と同じ年齢だという緑髪の少女が座っていた。


「初めましてアキレア王女」

ヒュペリオンを見習って俺も片膝をつけ跪く。


「私、ヒュペリオンおじさんからもヘリオスのことをずっと聞いていたから早く会ってみたいと思っていました。今日は会えて嬉しいです」





俺が魔法を使うのは難しいかもしれないと聞いていたそうだ。



「一緒に実験できないのは残念だなって思っていたけれど、今日は凄い魔法を使ったのでしょ?国に住むみんなのためにこれから一緒によろしくね」


 聖女と呼ばれているが、見た目はかわいらしい女の子だ。楽しそうに笑顔で話す緑髪の美幼女だ。


「はい。私でよければ力をつくします」

 小さな女の子だけれど王女と聞いているから思わず敬語になる。


「私をお友達と思って話して。ヒュペリオンおじさんからヘリオスの話はずっと聞いていたから私はヘリオスと仲良くなりたいと思っていたの。ヒュペリオンおじさんの息子だから、きっと楽しいおしゃべりしてくれるのだろうなって。」


 あんなに饒舌に話せる自信はないなと思って苦笑した。


「アキレア王女がいいって言っているのだから、セレネに話すみたいに話したらいい。ただし、俺や魔導士長以外の人がいる前で王女に馴れ馴れしい口を聞くなよ」


 ヒュペリオンに言われるまでもなく分かっている。他の人の前で王女に敬語じゃないのはまずいだろう。


「ヘリオスは、王女と仲良くなってもらわないと国のためにも困る」

 キロン魔導士長が俺と王女を交互に見て言う。


 アキレア王女は、不安そうな顔をしている。返事が欲しかったのか?


「はい。喜んで」

 努めて明るく笑顔をつくって俺は答える。


 王女といってもこの小さな部屋で会ったから気後れしない。広く豪華な宮廷で見降ろされながらだったら、こんなに気軽に返事は出来なかったかもしれない。それに、アキレア王女が父さんであるヒュペリオンに懐いている雰囲気であったから俺も話しやすい。


「ありがとう。学園で私も勉強するから一緒によろしくね」

 ほっとしたようにアキレア王女は笑顔になった。


「俺のほうこそ魔法を何も知らないからよろしく。」


「何も知らないって、ヘリオスはすごい魔法を使えるのでしょ?本当は今日も実験に付き合ってほしいけれど朝から畑一面に魔法をかけたっていうから疲れているよね」


 俺は全く疲れていない。3人の話を聞いていると魔法を使うと疲労がたまるものらしい。広い空間に作用する攻撃魔法だったら熟練の魔法使いでも1日に数発しか撃てないそうだ。


 ――そういや、昨日、セレネも小さな魔力の塊を出していただけで、ひどく疲れた様子だったな。


「全く疲れていないから今からでも俺は実験してみたい。昨日初めて魔法を使ったから、もっと使ってみたいんだ」


「いいの?じゃあ、外の畑で試してみましょう」




 外に出てもキロン宮廷魔導士長とヒュペリオン魔法師団長は付いてきた。役職があり忙しそうだから気を使ったけれど、今から確認することのほうが国家の今後に関わる一大事だそうだ。


 プレッシャーと期待を感じつつも、黒パンの原料になる穀物の新芽に向かって魔法をかけようと努力してみた。


 昨日みたいに膝丈くらいまでは伸びた。数本だけだったけれど。

 何度か試してみたけれど同じようなものだった。


「ヘリオスの魔力の流れはヒュペリオンから聞いた通りだった。空間からは取り込んでいない。器の穴から魔力が流れ込んできている。ただし、量は少ないし、今は流れが止まっている」


 キロン魔導士長とヒュペリオンは、何か考え込んでいる。


「すごいです。ヘリオス!」

 アキレア王女は満面の笑みで喜んでいる。


 期待に応えられなかったと思い、少し不安だったけれどアキレア王女が喜んでくれて、ほっとしたし嬉しかった。


 ――少しは期待に応えられたのかな?


「私は回復魔法を使ってキロンおじいさんに教えてもらった色々な方法を試したけれど上手くいかなかったの。ヘリオス、あなたのやり方を私に教えて」


 教えてと言われても力を込めているだけでやり方なんか分からない。畑一面成長させるくらいを期待されていたのだろうけれど、どうしたら出来るのか全く分からない。


「アキレア様。ヘリオスも魔法を使えるようになったばかりで分かっていないのです」


 ヒュペリオンが言ってくれて助かった。


「アキレア王女、ヘリオスが研鑽していけば本人も理解し教えることができるでしょう。私とヒュペリオンも学園で指導しますからご安心ください。それから、二人の入学を早めましょう。祝祭が終わったらすぐに通えるようにしておきます」


「ホント?ヘリオスだけじゃなくてセレネも一緒に学べるんでしょ?それに明後日は祝祭でしたね。私、ヘリオス達といっしょに祝祭に参加したい」


「女王の許可は私が取りましょう。ヒュペリオンと部下を付けます。ヘリオス達に祝祭の意味をしっかり教えてあげてください」

 キロン魔導士長は、目を細め微笑んだ。


「私、キロンおじいさんから教えてもらった神さまのお話をヘリオスたちにしてあげる」

 白い歯を見せてアキレア王女は笑った。


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