30.平等
「親がいないこの子たちでも望めば学園で授業を受けて、努力と能力と希望に応じて好きな仕事に就けるような国にしたいのです」
アキレア王女は真剣な眼差しでそう言った。
チャンスが平等な国というのがいい。俺は、魔法師団長の息子に生まれたので学園に通えている。
もし、生まれが違えば、通えていないし、見出されて国に貢献することもなかっただろう。
国のことを思えば、どんな生まれでもチャンスは平等にあって、能力があるものを見出すほうがいいのに、そんな国のほうが珍しい。
国で権力を握り中枢にいる者が自分の子どもに有利な条件を変えるつもりがないからだろう。
「この孤児院に親を失った子たちがいますが、国境近くの村には多くの孤児がいます。けれど、引き取って養えるだけの食糧もお金もありません。農奴のような扱いを受けています。少しずつでも孤児院で引き受けることが出来る子ども達を増やしたいとも思っています」
アキレア王女は言った。
「俺で出来ることはいくらでもします」
自分の頑張りで救われる子供たちが増えるなら、こんなにやりがいのあることはない。
俺は話し続けた。
「それから、孤児院の子ども達にはハンデを背負っているのだから、幸せになるには人より努力しないといけないことを伝えたいです」
同じ境遇の子たちしかいないと自分たちがハンデを背負っていることにも気づきにくい。王女は特別だから比べることもないだろう。ディアントス達を連れてくるのもいいかもしれない。平民出身で学園に入学したディアントスの努力を知るのが成長につながるはずだ。
アキレア王女はうなずいた。そして笑顔で言った。
「頑張ったら褒めてあげたいです」
俺はうなずいた。王宮魔導士たちからきつく当たられている王女は、馬鹿にされることは多くても褒めてもらうことが少なかったと聞いている。
キロン宮廷魔導士長やヒュペリオンが褒めたら嬉しそうにしているとも聞いた。
大人になれば、いくら努力したって結果を出さないと認めてもらえない。
騎士になれば、努力は当然で結果を出さないと、それこそ死んでしまう。
だからこそ、子どもの時だけでも努力したことを褒めてあげないといけない。
「お腹いっぱい!」
「食べ過ぎて苦しい……」
「毎日こんなに食べられたら幸せなのに」
満足そうな子どもたちが口々に言っている。
「ちゃんとお礼をヘリオス様に言いなさい。」
副院長が言った。
「ありがとうございました!」
「ありがとう。また持ってきて」
「また食べたい!」
「俺たちも狩りに行けるようになりたい!そしたら、たくさん食べられるから」
年齢の近い男の子たちが言った。
「狩りに行くためには訓練しないといけないね」
俺はうれしくなって言った。
「この子達に私たちの訓練を見せましょう!リアンサス、セレネ、ディアントスにもお願いしてみましょう」
アキレア王女は言った。
それから、放課後の訓練は、孤児院前でするのが日課になった。
アキレア王女の笑顔が増えたのが嬉しかった。
投稿が遅くなりすいません。投稿ペースが遅いですが、執筆は続けていますのでよろしくお願いいたします。




