2.魔獣の肉
黒パンは固かったけれど皆の真似をしてスープにつけながら食べたらあっという間に食べ終わってしまった。
スープは塩味が薄くて野菜も少なかったけれど肉の味がしっかり出ていて美味しかった。
「レアさん。いつも食事をありがとうございます」
ヒュペリオンが日頃の感謝を伝える。
「こちらこそ。ヒュペリオンがいつも魔獣を取ってきてくれるからお肉がたくさん食べられるわね」
レアさんが感謝をのべる。
母親のレアさんと同じ金髪で似た容貌の息子のリアンサスと妹で水色髪のセレネもお礼を言う。
黒パン1個とスープだけなんて少ないと思ったら、魔獣の肉が多く入っている分、他の家庭よりも豪華らしい。
――魔獣の肉?
俺は驚き、わくわくして聞いた。
「魔獣を狩ってくるの?」
ヒュペリオンが返事をする前にすかさずセレネが口を開いた。
「おじさんは、魔法師団長だし皆を守るために魔獣を倒すのは当然でしょ。それに私たちは、魔獣の肉を食べて魔力を上げないとね。ヘリオス。」
誇らしげにヒュペリオンのことを話すセレネと何で覚えていなんだと呆れ気味のリアンサスから話を聞いた。
魔力持ちの人が多いジセロ国は、魔獣も多いらしい。
魔法師団の主な仕事は魔獣を倒すことだそうだ。そして、どうやら魔獣を倒すと魔力を奪えるらしく、食べても少しは魔力が上がるらしい。
「土地が痩せていて、穀物もたいして取れない。塩も他国から買わないといけない。なのに売るものが魔獣の皮くらいしかこの国は無いからな。だから魔獣の討伐だけではなく皮や肉を得るのも父さんたちの大事な仕事だ」
普通の武器では魔獣を倒すことは難しく、なので俺やセレネみたいな魔力持ちは重宝されるらしい。早くから鍛えようとしてくれるのも分かる。
それに、話を聞いていたら早く自分で魔獣を倒せるようになったほうが、魔力も増やしやすいことが分かった。俺たちのためを思ってくれている。
「どんな魔法を教えてくれるの?」
俺は早く魔法を知りたくて聞いた。
「魔法のことを質問したらおじさんの話が止まらなくなるよ。ただでさえ、今日はヘリオスが元気になって嬉しくて興奮しているみたいだから」
リアンサスが苦笑いしながら言った。
「私は魔法の話を聞くの楽しいよ」
セレネは目を輝かせている。
求められて嬉しそうにヒュペリオンが興奮気味に早口でしゃべる長い話は、この世界の常識を全く知らない俺からするとほとんど理解出来なかった。
けれど、少しだけ分かった。近くに漂う魔力を集めて空間に干渉して魔法を行使させるらしい。
体内にある魔力の器の大きさに応じて集められる魔力に差が出て、使える魔法の威力も変わるそうだ。
なので、小さなころから魔力を高めて体内の器を大きくするほうが強くなれるようだ。
早く自分で魔法を使ってみたい。セレネも同じ気持ちのようだ。
「そんなに二人とも魔法を使えるようになりたいなら早速今から練習しよう!」
あれ?セレネの魔法学習の話はどうなったんだろう?と思った。けれど、すぐに魔法の練習を出来ることが俺には嬉しくて、すぐに家の外に出た。
「じゃあ、ヘリオスからだ。今から父さんが魔力弾をうつから、それを跳ね返すんだぞ。それ!」
いきなりで意味が分からずに俺は後ろに吹き飛ばされた。