21.魔獣狩り2
「王女は、俺の後方へ、セレネはさっきのように魔法を放て!リアンサス、ディアントスは、ルプスを1頭ずつ仕留めろ!ヘリオスは2頭!残りは俺が仕留める」
ヒュペリオンの指示で、すぐさまセレネが半円状の魔力の塊を放つが、ルプスはそれを飛び越えかわそうとする。そこをリアンサスが剣で仕留め、次に迫るルプスを俺とディアントスがそれぞれ1頭ずつ剣で薙ぎ払う。
後方から迫りくる残りのルプスは、仲間の惨状を見てなのか、足を止め警戒を始める。
俺は、そのまま突進し、もう1体のルプスに剣で挑みかかろうとするが、目標のルプスは後方へ下がり、横から別のルプスが襲ってくる。
俺に飛び掛かってくるルプスをディアントスが剣で払う。
リアンサスが俺たちの背中を守るように剣をかまえる。
ルプスが広がり半包囲状態になり、俺達とにらみあう。
セレネが魔法を放ち、アキレア王女が弓を放つが当たらない。
「よし、見てろ」
そういってヒュペリオンは、種火のような小さな炎魔法を手から出したと思ったら、轟音とともに大きな火柱が何本も立ってルプスたちが炎に飲まれていく。
火柱から逃れたルプスに向かってヒュペリオンは一瞬で距離を詰め、剣で首を落としていく。
気づけば、生きているルプスはいなかった。
「すごいおじさん!」
セレネが興奮している様子で飛び跳ね歓喜している。
ディアントスは目を輝かせ、尊敬のまなざしでヒュペリオンを見ている。
アキレア王女もリアンサスも珍しく高揚している様子だ。
「これくらい簡単だ!参考になったかな?」
自信にあふれた様子でヒュペリオンが言う。
けれど、俺は周りの木々の様子が気になり、疑問を口にした。
「周りの木が火柱で燃えて黒く焦げているのも多いんだけど、森の中で父さんの特異な水魔法じゃなくて火魔法使ったのは、ルプスが火魔法に弱いの?森の中なら火事にもなりそうだし」
「アクアラヴァ!」
ヒュペリオンは、焦げて火がくすぶっている木々を水でつつみ消化した。
「火魔法のほうが見た目、かっこいいからだ。ルプスは別に火魔法に弱いわけじゃない」
「木々が覆い茂る森で火魔法を使った理由がそれ?」
「ちゃんと消火しただろ?それにセレネ達も喜んでいるじゃないか?かっこ良かっただろ?」
「うん!普段、特訓でおじさんから水魔法を教えてもらって見てるけど、今日の火柱の魔法は初めて見た。すごくてかっこよかった!自分でかっこいいって言うおじさんはどうかと思うけどね」
セレネの言葉に最初、喜んでいたヒュペリオンは、苦笑する。
「さすがです。ヒュペリオンおじさん」
アキレア王女が言う。
「剣であれだけ素早くルプスを狩れるなんて」
リアンサスが感嘆する。
ディアントスもうなずく。
「ヘリオスもセレネもこれくらいの威力の魔法は余裕にならないとな」
「うん!」
セレネがうなずく。
確かに、あんな威力の魔法はかっこよかった。俺も使うために器の穴から魔力を取り込んで魔法を安定して使えるようにならないと。
俺たちは、ルプスの解体を皆で行った。
「よし!これくらいのルプスなら自分たちだけで倒せるように頑張ってみよう」
ヒュペリオンにうながされ、さらに森の奥へ進む。
俺が先頭で進んでいると横たわるルプスの死骸に根を張り直立する木があった。
「魔木だ」
リアンサスが言った。
黒く異様な樹肌の見たこともない木だった。