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16.騎士団見習い

「なぜ私も早朝の特訓に誘ってくれなかったのですか」


 自分だけ朝特訓に加われなかったアキレア王女がすねていた。

 さすがに王宮に朝起こしに行くわけにいかない。俺は苦笑した。


 それに、王女を危ない目にあわせたくないし、回復魔法しか使えないからどうやって戦うのだろうと思ったが、身体強化して遊撃しつつ、ケガした味方を回復して戦線復帰させる役目をおうそうだ。それなら、確かに戦力差があり、先にやられる可能性が高いこちらの仲間を復帰させられるのはありがたい。


「今日の夕方いっしょに特訓しましょう」

 機嫌をなおしてもらって、今日の特訓とヒュペリオンと話したことを伝えた。


 俺たちのチームに誘うために座学が始まる前に他の生徒に声をかけていったが、全て断られた。新入生の俺たちと組むのにメリットがなかったり、魔導士の息子たちに睨まれている俺たちと距離をとったり、誰もいい返事をくれなかった。



 その後、始まった座学では、国の魔防壁について習った。敵兵を防ぐことは出来ないが、敵兵の侵入や強い魔獣を感知したり、敵の魔法を防いだりすることが出来るそうだ。今のジセロ国には必須だけれど魔力が足りずに国境近くの村々は範囲に入っていないそうだ。


「だから、食糧を略奪されて冬越し出来ない人々がいるんだ」

 セレネが言った。


「それだけじゃない。北の部族が統一されつつあるらしい。部族同士の争いが終結しつつあるから、こちらまで略奪に来るのが増えているらしい」

 リアンサスが入学前に勉強したことだけれどと教えてくれる。


「王族の力が足りないせいで苦しませているのが悔しいです」


「食糧増産の研究も続けるとして防衛も考えないといけないのですね」


 アキレア王女の言葉を聞いて俺も言うが、どうすればいいのだろうか?

 国の上層部は対策をどうしているのだろう?学園の今後の座学でも詳しく知れるだろうか?


 アキレア王女達の続く会話を聞きながら考えていると金の短髪で背の低い男の子から声をかけられた。


「ディアントスと言います。俺をチームに入れてくれないか?」


 丈が足りていない継ぎはぎの服を着ていた。騎士団見習いと言うが、革鎧も着けていない。


 背は低いがリアンサスと同い年で昨年入学したそうだ。


「なぜ俺達とチームを組もうと?」


 俺が聞くとディアントスが答えた。


「稼ぎたいから」


「稼ぐって?」


「俺がチーム戦で役に立ったらいっしょに魔獣狩りに行ってほしい。家にお金を入れないといけない。だから、魔獣狩りで採れた素材の分け前を俺にもくれ」


「魔獣狩りで採れた素材はもちろん分配するさ。でもいいの俺らで?」

 リアンサスが聞く。


 ディアントスは、一度、王女を見て俺たちを見て答える。


「イレックス達から睨まれているのは知っている。王女の立場もわかっています。俺は騎士団に入りたいだけなんだ」


 ディアントスの父は、行商人で他国に行き来していたが、行方不明らしい。

 弟たちもまだ小さく、早く家にお金を入れたくて学園に入り騎士団を希望したそうだ。


「騎士団だと警戒の時に倒した魔獣の素材は自分の収入になるし、卒業前でも魔獣狩りに行けると思ったんだ」


「一人じゃ倒せない魔物が出るかもしれないからチームでの魔獣狩りは基本だしね」

 リアンサスが答える。


「でも、こんな見た目だからチームを組んでくれるやつがいないんだ。このままじゃ、騎士団に入るための装備を準備することも出来ない」


 継ぎはぎだろうが見た目は強さに関係ないのに。背が低くても身体強化と剣の技術があり強ければ問題ない。


 皆と目をあわせ、うなずく。


「よし一緒にチーム戦の特訓をしよう」


 俺の言葉にリアンサスが続けた。

「弱くて足を引っ張るようなら断るから」


「役立つとこを見せてやる」

 ディアントスが笑顔でうなずいた。

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