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11.入学

 結局、まともに防御壁魔法のアメットも使えないまま王宮学園へ早期入学した。


「今日から楽しみだね。ヘリオス、お兄ちゃん。私、色々魔法を使えるように頑張るね」

 セレネが嬉しそうだ。


「魔法を覚えるだけじゃなくて、歴史や他国を含んだこの国の情勢とかも覚えないとだめだぞ。セレネもヘリオスも卒業したら隣国に侵攻されたときに防衛戦に駆り出されることになるだろうから、各国の戦い方とか特徴を覚えておかないと」


 リアンサスの話でこのジセロ国が置かれている状況を思い出した。この国は3国に囲まれていて、北の部族から国境付近の住民が食料を強奪されたり、西の国から奴隷狩りによって国民がさらわれたりするそうだ。

 リアンサスとセレネの父さんも西の国の侵攻によって命を落としている。奴隷狩りでは高く売れる魔力持ちが狙われやすいと聞いているので俺もセレネも気をつけないといけない。


 学園の入り口で立ち止まっていた俺たちの元にアキレア王女が一人でやってきた。

「今日からよろしくお願いいたします」


「こちらこそよろしくお願いいたします」

 俺たちが挨拶をしているとリアンサスよりも5歳くらいは年上だろうローブを着た男たちが俺たちに近づいてきた。宮廷魔導士の息子達らしい。


「銀髪の割れ器!魔法もまともに使えないくせに学園に早期入学しやがって」

 一番年長だろう赤髪の男から言われた。


「魔法師団の息子のくせに俺たちが来たらちゃんと道を開けろ」

 他の宮廷魔導士の息子が言う。


 そんなに宮廷魔導士が偉いのか?それにただの息子だろ。同じ学園の生徒の。

 俺が黙っていると他の男が口を出した。


「リアンサスもこいつにちゃんと言い聞かせろ。使えないな。所詮、使えない元騎士団長の息子だ」


 セレネは、ぐっと唇をかみしめている。

 リアンサスは、怒りの表情を隠しきれていない。

「申し訳ありませんでした」と悔しそうに口に出す。


 王女がいるのにこいつらは何を言っているのだろうと俺は思ったが、アキレア王女の様子を見ると俺たちの後ろに隠れるようにして顔がうつむいている。


 最初に口を出した男が王女を向いて皮肉な言い方をする。

「アキレア王女、同級生になるこいつらを助けてあげないのですか?」


 他の男たちも囃し立てる。

「研究室とは名ばかりの小さな部屋にこもって魔導士を避ける王女ですから無理ですよ」

「聖女といっても回復魔法だけで攻撃魔法も使えず国が守れるんですかね」


 嘲笑する魔導士の息子たち。馬鹿にして見下している態度が露骨だ。


 ひどい言い草に俺はローブの男たちを止めるために近づいた。


「何だ割れ器。かばう気か?所詮、魔力も持たない母を持ちレックスマジアも使えない王女。王がいなくなりレックスマジアも使えず、どれだけ国を守るのに俺たちの父親の宮廷魔導士たちが苦労しているか。王女の見た目はいいから、後、数年したら俺がもらってやる。俺の子を産んで王族魔法を教えればいいだろう」


 俺は、手をいっぱいに伸ばして胸倉をつかもうとした。けれど動き出した瞬間にはもうリアンサスが男を床に突き倒して剣を抜いていた。


「アキレア王女になんてことを。それが臣下の言うことか」


 リアンサスは、目が血走っている。本気を感じたのか男たちは動けずに固まっている。

 アメットでは、剣を防げないので首筋に剣を突き立てられた魔法使い見習いではどうしようもない。


「ありがとうリアンサス。でも、やめてください」


「王女が言うならば」


 リアンサスは警戒しながら剣を男の首筋から離した。

 俺も王女とセレネを背にかばうように男たちとの間を維持する。


「お前らチーム戦を覚えてろよ。叩きのめしてやるから。割れ器なんかは、アメットも使えなかったら死ぬかもな」


 誰がこんな奴らに殺されるか。俺は挑発されてもいいけれど、王女やヒュペリオンの魔法師団のこと、リアンサスの父さんたちのことが馬鹿にされるのは悔しい。


 魔導士の息子たちが先に行った。


 あいつらに負けないように特訓しないといけない。ヒュペリオンの言った通りだった。


「負けないように特訓をしよう!」

 俺の言葉にリアンサスもセレネもうなずく。


 アキレア王女は、うつむいたままだ。


「どうしたのですか?」


「幻滅したでしょう?」


「何がですか?」


「国民を守らないといけないのにあなた達を守ることすら出来ずに守られて」


「王女を守るのは臣下の務めです」

 リアンサスが跪く。


 俺も王女とかは関係なく女の子が理不尽に悪意にさらされるのは我慢できない。

「俺も王女を守ります。学園でも悪意から守ります」


「私も魔法を使えるようになって守りますから」


 リアンサスと俺とセレネの言葉にアキレア王女は微笑む。


「ありがとうございます」




 俺たちは入学時の説明を聞いてチーム戦が4日後と知った。

 座学時間もあるので、チーム戦のための特訓時間はあまりとれないだろう。

 すぐに取り組まないといけないと座学を聞きながらもあせっていた。終わると皆に声をかけようと思ったが、王女から声をかけられた。


 王女の研究室で話したいことがあると。

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