10.父との特訓
祝祭が終わり、王宮学園への入学が2日後に決まった。
ヒュペリオンは、休みをもらい俺に特訓してくれるそうだ。
「ヘリオスは学園への入学準備をしないといけない」
「準備するものは何があるの?」
「魔法使い見習いは入学時に準備するものはない。」
王宮学園では、制服はないそうだ。貧乏な国の学園なので支給はなく各々が自分にあった装備を用意するそうだ。
「けれど、魔法防御壁のアメットをはれるようにならないとチームでの模擬戦で足手まといになるし訓練にならない」
ヒュペリオンの話では、座学の他に騎士団候補生と魔法使い見習いでチームを組んだ模擬戦があるそうだが、入ったばかりの新入生でもいきなり上級生と戦わされるらしい。
「ふつう、最低限のアメットは自然と使えるから入学直後に上級生と当たっても何の問題もない。上級生の力を感じて目標を定めることもできるが・・・」
魔法防御壁が張れないままだと俺は死ぬ可能性もあるらしい。
「魔導士の息子連中が気を使うとは思えないしな」
死ぬ可能性もある訓練なんて止めればいいのにと思う。しかし、魔導士より立場が下のヒュペリオンでは、今まで問題がなかったことを息子のために特別に変更するなんて、とても出来ないらしい。
「俺が覚えたらいいんでしょ。頑張ればいいだけだから心配しなくても大丈夫だよ」
「やる気があるな。自然とアメットを使えないなら入学後に勉強するはずのアメットの強化訓練をやってみよう」
ヒュペリオンはいい笑顔だった。
俺はまず教えてもらった通りに意識して水属性の魔力を出す。
「出た!」
俺は魔力の塊を初めて放出することが出来ておもいっきり喜んだ。
「植物を成長させられるくらいなんだから、ヘリオスは魔力の放出くらい簡単なはずなんだ。問題は、魔力を吸収しても穴から漏れ出るから足りなくなるだろう。まあ、アメットを意識して張ってみよう」
ヒュペリオンはその後も、長々とアメットについて教えてくれたが、何となくわかったのは、魔力を体全体から出すようにしつつ、膜をはるイメージで魔力を保つってことだ。相手の攻撃属性にあわせアメットの属性も変えることで少ない魔力で防ぐことができるらしい。
俺は、水属性でアメットを試してみたが、あっけないほど簡単にできた。けれど、すぐにアメットが消滅したのがわかる。
「やはり魔力が足りないか。器の穴を塞ぐか、穴からも魔力を取り込む必要がある」
結局、俺は2日頑張ってもアメットを持続させられるようにならなかった。
あせったヒュペリオンは、身体強化を俺の自衛のために教えてくれた。
そんなに危険なら早期入学なのだし入学時期を遅らせてもと思ったけれどアキレア王女との植物研究のためには、入学しておかないと都合が悪いらしい。
そして、出来る限り早く食糧増産の目途をつけないと今年も冬越し出来ない人々が国には大勢いるらしい。
救えるかもしれない人を見殺しになんてしたくない。俺は頑張るしかない。
入学を明日にひかえ、緊張してなかなか寝付けなかった。目を閉じたままアメットのイメージトレーニングを繰り返した。




