触覚
身体が固定されていて、それがまず怖かった。感触的に、僕は学生服を着たままで、なじみのある学校の固い椅子に座っていた。服の上から、ガムテープか何かでぐるぐる巻きにされていたんだと思う。手は背後で組まれていたし、口には布きれのようなものを詰め込まれていた。猿ぐつわの代わりだろうか。これでは大声は出せない。
その圧迫感といったら! 僕は発狂してしまいそうだった。首は動かせたけど、大して気は紛れなかった。
それに、なんて暑さだったろう。暖房を付けていたのかもしれない。二月で、確か朝から雪が降っていたような気がするけど。身体は汗でぐっしょり濡れていた。そのせいだろうか、とても気分が悪い。
どうして拘束されて、そしておそらく室内で放置されているのか。全く心当たりはなかったけど、突然誰かに頭を殴られたのは覚えていた。さっきから頭がひどく痛む。
目を覚ましてすぐに、誰かの気配を感じた。背後に誰かいる。空気の振動が、かすかに伝わってくる。僕は恐慌状態になった。誰、誰? 助けに来てくれたの? それとも……。あなたが僕を監禁したの?
そうだ、そうに違いない。僕をこれから痛めつけるんだ。やめて、痛いのは嫌だ。男か? 女か? 何人いるんだ? 僕はリンチされるのか? ああ。頭痛がひどい。そんなに強く殴られたっけ。
疑問に感じる暇も無く、首筋に冷たい感触。刃物? 刃物!? やめて、助けて、殺さないで……。口の布が外されても、それらは怖くて言葉にはならなかった。突然口に何かを注ぎ込まれ、あつぅい! 熱い! なんなんだよ、もう……。
いよいよ僕はダメになった。気持ち悪い。吐いてしまいそうだ。でも、首筋には冷たい鋭利な刃物。僕は無理やりそれを飲み込んだ。しばらくしたら、さっきまでのが嘘みたいに、凄く落ち着いた気持ちになったよ。死ぬって、あんな感じなんだね。
え? 明日の朝刊? 知らないよ、そんなこと……。もうあんなおもいはいやだ。しんでもいやだ。