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激突

 エルシーは鎖に引かれ、高速で地上へと向かっていた。

 体に巻き付いている鎖を解こうとも、地面との衝突は免れない。

 地上の近づく頃、天へ伸びる鎖の群れが少女の体を擦り、抉る。

 しかし、何度繰り返されようとも傷すら残さず修復していく。その速度は凄まじく、肉を貫く鎖が体外へと飛び出るその刹那、取り込むようにして再生し、異物である鎖は体外に押し出される。そうして、勢いを失った鎖は重力に従って落下する。

 何度目だったか、そうして無力化された鎖が地に落ちるよりも早く、人間に致命傷を与えるには十分過ぎる速度でもって、エルシーは地面へと衝突した。

 土砂が巻き上げられ、辺りに衝撃と爆音を轟かせた。

 少女が見た目通りならばそのの体はバラバラになり、地中深くに埋まったままだろう。しかし、そうでないことを知っている鎖の主は攻勢を緩めない。地中を浚うように鎖を走らせた。

 ひび割れた大地を、鎖がのたうつ。

 そうして、二百年前そうしたように、再びエルシーを縛り上げた。


「何故、ここに来た。

 お前の気色は喧しくて敵わぬ」


 質問を投げたのは、頭から赤茶けた鎖を生やし、失った四肢の代わりにその鎖で歩く少女であった。


「んふふ、仲直りですよぉ」


 愛らしい笑みで、男の声で、エルシーが答えると、縒り合わさった鎖が苛立ったように地面を叩いた。


「ふざけるな」


 強い怒りのこもった声だった。

 言葉を返そうとエルシーが口を開けば、太い鎖がしなり、顔を打った。


「お前は、誰のせいでわたくしがこう成り果てたと思っている」


 一呼吸の間には、十の鎖がエルシーを打ち、穿ち、エルシーはひたすらに鎖に曝された。


「話を…」

「聞かぬ。

 どうしてもと言うならしばしの憂さ晴らしに付き合え」


 少女はエルシーを拘束していた鎖をやや緩めると、追加の鎖を差し込み、球状になるように雁字搦めにした。

 やがて鎖の玉は直径五メートルを優に超え、少女はそれでも飽き足らず、仕上げとばかりに縒り合わせた極太の鎖で縛りあげた。

 そして出来上がったその玉を、数多の鎖でもって放り捨てた。

 無造作に投げられた玉は空き地を転がり、その内に和服の少女から見えなくなった。


「そう言えば、今日だったか」


 少女は大げさに嘆息すると、己が伸ばした鎖を伝い空から降る者達を待つべく、その場を後にした。

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