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何でも屋のエルシー

「さて、こんな形ではろくすっぽお話もできませんねぇ」


 そうごちたエルシーは、抵抗をまるで感じていない様子で両手の拘束を引き千切った。続いて下半身の拘束を解きにかかったが鉄枷のようにはいかず、それでも力づくで強引にかかれば、やがてエルシーの体がミリミリと音を立てて上下に別れた。

 地に落ちた上半身は何事もなかったかのように仰向けになった。

 次に起きたのは変化。残された下半身は瞬き一つをする間に姿を変え、エルシーの面影残る裸の少女の姿を取った。

 するりと鎖を抜けた少女がエルシーの上半身の手を取ると、軽々と持ち上げ、放り投げた。こちらも空中で姿を変え、鈴付きの服と黒緋のマントになり、少女に纏わりついた。


「改めまして、エルシーです。

 依頼を聞きましょう」


 少女は、男であった時と変わらない低く落ち着いた声、変わらない笑みでそう告げた。


「トロイ、よろしく。

 俺、ついてけねぇわ」

「…どうも、自分はトロイ。こっちのはラポです。

 今日ここに来たのはこの依頼書を見付けたからです。貴方に依頼があるわけではないのですが、依頼書に書いてあったことついてお話を聞かせていただけませんか?」

「別にそれが依頼でも構わないのですが…。

 ふむん。しかし、キーラに案内されてきたなら、私が面倒を見るべきですねぇ」

「聞きたいことがどんどん増えてくんですが」

「諸々お答えしますとも。

 でもその前に、外が騒がしいようですし、ちょっと移動しましょうか」

「移動?」


 手招きするエルシーに連れられ、トロイとラポは奥へと足を進めた。

 室内に溢れた鎖はエルシーの拘束されていた部屋で打ち止めらしく、エルシーの案内する部屋にまでは届いていなかった。

 飾り気のない独房のような部屋の中央には、それぞれ青白黒の色をした三つの円盤が置かれ、そこにエルシーが近づけば薄っすらと光を放った。


「とりあえずなら青ですかねぇ。用事が一度に済む。

 さぁ、お二人ともこちらへ」


 エルシーに促され、三人が青い円盤の上に乗った。


「うんうん。素直でいいですねぇ。でも、素直すぎるのも問題なので向こうに着いたらなんとかしましょうか。トロイくんなんて、大分深刻そうですし」

「向こうってなんです?これ、もしかしてワープしたりします?」

「おお!よくわかりましたねぇ。正解です。

 一二の三で飛びますよ」

「ワープってなんだそりゃ怖ぇよ!俺は降りるぞ!」

「それはダメ」


 土壇場で怖気づいたラポを、エルシーの細腕が掴む。

 少女の姿からは考えられない力で押さえつけられたラポは困惑し、硬直した。エルシーはその硬直を見逃さず、すぐさま円盤を起動する。

 鈴の音が一度、シャンと鳴った。

 円盤からは青い光が立ち上り、上に乗った三人を下から照らした。

 

「そーれ、一二の三」

「おいふざけんな!俺はこんなわけわかんねぇもん使いたくねぇ!」

「諦めてください、ラポ」


 ラポが叫んだ数秒後には円盤の上から三人の姿は消え、反響した鈴の音と青い光の残滓だけが部屋を漂っていた。

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