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絆 


 「あの時は、本当にありがとうございましたっ!」


 俺は感謝の気持ちを最大限に伝えるためにめいいっぱい頭をさげた。


 「ほんと、大げさな奴だな」


 俺は背中越しに手を軽く振って立ち去っていくゴルウィンさんの背中が見えなくなるまで店の外でその姿を見送った。


 ゴルウィンさんが帰った後、俺は店内へと戻る。

 厨房に立ちながら確かにやり遂げた充足感を俺は得ていた。


 「……思えば、いろいろあったなぁ」


 改めて見回すのは俺の城たる「絆」の店内。

 あまり店の名前っぽく無いが、俺はこの場所をそう名付けて呼ぶのが一番いいと思っている。

 漢字一文字で店の名前だ。

 異世界の人には漢字は読めないだろう。一応異世界語でルビは振ってある。それでいい。

 この店は様々な人の協力があって作ることが出来た。

 鍋や包丁を初めとする調理器具を作ってくれたドワーフがいなければ俺は料理すら出来なかった。

 エルフの魔法技師の協力が無ければ火力調節可能なコンロだって作れなかった。

 米や大豆を栽培してくれているヒュームの農家の人だってそうだ。

 生きのいい海の幸を毎日届けてくれるマーメイルの漁師だっている。

 彼らの多くは元いた世界にはいなかった人種だ。

 だけど、俺は冒険者時代に彼らと確かに親交を深めることが出来た。

 俺は様々なこの世界の人々に助けられてこの店を建てることが出来たんだ。

 いや、異世界だけじゃ無い、元いた世界の人々だってそうだ。

 俺に料理を教えてくれた料亭の店主。

 俺を育ててくれただけじゃ無く、味噌や醤油、酒の作り方まで教えてくれた両親。

 

 全てがあって今がある。

 だからこそ漢字で「絆」なんだ。

 

 俺はここで店を開けることに、今感謝の気持ちしかない。

 そんな気持ちをこの店に来てくれた人達に伝えたい。


 そして、願わくばこの場所が人と人の「絆」を深めることの出来る場所になれば良いなと切に思う。


 俺に今出来る事は料理を作ることだけ。

 まずは俺のことを知っている全ての人々にお礼がしたい。

 最高のもてなしがしたい。


 まずは命という一番大事な物を救ってくれたゴルウィンさんをもてなすことが出来た。

 彼はこの店のお客さん第一号。

 もしかしたら異世界の人に俺の料理は口に合わないかもと思っていた。

 でも、喜んでくれて正直ホッとした。褒めてもくれた。

 おかげで少しだけ自信がついた。

 ほんと、ゴルウィンさんには感謝しかない。


 俺は開店前の仕込みをしながら次にもてなす人物を考える。

 

 ……いや、それよりも今日着てくれるお客さんのことを考えないと。 

 

 異世界料理店「絆」本日オープンします!

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