表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
69/76

第68話・無言の信頼

 四人の願いがロンサムに通じ、甲羅が高速スピンを始めると共にゴゴゴゴゴゴッと大きな音を立てる。すると、次第に自分の視点が上昇していき、海から島が離れていく。



「すごい、本当に空に浮かんでいる……。私たち、本当に伝説を再現しているんですね!」



 ターニャが感激しながら感想を述べ、エヴァンも同じように自分に起きた状況を把握しようとしている。同時に、彼はタカオに質問を投げかけてくる。



「おい、タカオ。さっき亀はお前に『神と同じ力を持つ人』と言っていたな。それってクリエイトの力のことだろ? 今までは何となくお前の力に頼ってたけど、神と同じってどういうことだ?」



 彼の質問はもっともだろう。神と同じ力を持つ人間がパーティなどにいれば、その事情を聞かずにいられないのが人間というものだ。しかし、どこからどう説明していいのかわからなかった。考え込んで下を向いていると説明するわ、とクレアが名乗り出てくる。


 彼女は神が外の世界から来たこと、タカオも同じ世界からやってきた人間であることを話した。そして、外の世界の人間は「クリエイト」の力や魔王の呪いの力を使えることを説明する。



 いくつか神のことについて伝承が伝えられているものの、やはり仲間の1人が神と同等の力を持っているという事実に、二人は狼狽を隠せない様子だ。



「おいおいおい、いきなりウチのリーダーが神さまと同じ力を持ってたなんて言われても……。なんのドッキリだって話だよ」



「タカオさん、クレアさんはこのことを以前から知っていたのですか?」



 ターニャは珍しく声のトーンを落として話しかけてくる。確かに、神様のことや魔王のことはゲーム上の事実に関することだ。

 しかし、アクアやデニスのこと、そしてタカオを含めこの三人は本物の人間であることはゲームのシナリオにはない。もっといえば邪霊のことを含めデニスの呪いや現実世界の浸食のことも……。こんなイレギュラーなこと、やはりゲーム内の人間にどう説明すればいいのかわからなかった。



「ごめん!」



 だがそれは、自分がターニャもエヴァンも信じ切れていないからだ。疑われるのが怖かったからだ。自分のことばかり考えていたから話さなかったんだ。俺は二人に対して腰を折り、深々と頭を下げる。



「俺、お前らのこと信用し切れなくて、ちゃんと話してなかった……。最悪だよな」



「タカオだけのせいじゃないわ」



 タカオに続いてクレアまで頭を下げ、二人に対して謝意を示す。



「ごめんなさい。私だって色々と知ってたけど、ターニャとエヴァンには話さないほうが混乱を招かないと思ってた。でもそれは、結局は私の保身だったわ……。本当にごめん!」



「……別に、攻めるつもりはないです」



 クレアはいつもと同じような口調に戻り、二人に顔を上げるように促してくる。



「話さなかったのは、事情があったからでしょ? タカオさんにすれば、この世界で生活すること自体に慣れないことでしょうし」



「俺だってまあ、気になったぐらいだしよ。それによ、神様や魔王とタカオの力が同じだったとしても、タカオはタカオだしな」



 ふふっと、エヴァンの言葉についターニャが笑みをこぼす。



「そうですね。タカオさんはいつも余計なこと言って、クリエイトの力が使えても半端なところがありますし」



「おい、ターニャ」



「でも、バカみたいに仲間思いです」



 そう言いながらターニャも俺たちに手を差し出してくる。呆気に取られていると、へへっといつものようにエヴァンも笑顔を見せてくる。



 タカオは彼女たちの態度に迷いが生じる。話が通じなくても話すことが誠意のように感じ、どうすべきかクレアの方を見る。しかし、彼女も迷っているのか動揺しているようだった。

 ターニャとエヴァンに見つめられ、ついに我慢することができず話そうとしたときだった。いきなりターニャが手を握ってくる。



「タカオさん、私はあなた達を信じています。どんなことがあっても」



 エヴァンもクレアの肩に腕を回し、顔を真っ赤にした彼女に返り討ちにあう。タカオには、ターニャもエヴァンもゲームキャラとはすでに思えなくなっていた。

 二人は人の手によって作られ、人と会話し、人の血が通った「人間」と変わらない。だからだろうか、自分が話せないことを汲んだ上で身を引き、気遣う姿を見るだけで、自然と涙が頬を伝っていた。



「タカオさん……?」



 ふいに出た涙を慌てて拭き取り、三人を見渡す。乙女タウルス、人魚に慕われた元海賊、そして天才プログラマーが転生した貧乳神官……。タカオが知る限りの最強パーティだ。それはゲーム的な意味だけではない。今までの人生上で最も背中を預けられる仲間たちだ!




「シャアアアアアアアアア!」



 後ろを振り返ると、すでに魔王の城前に近づいていた。俺たちが近づくのを待っていたかのようにモンスターが威嚇をはじめ、奇声を上げている。



「行くぜ、みんな!」



 タカオの声に合わせ、メンバー全員が武器に手を掛けた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ