表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
53/76

第52話・仮面と鳥まみれの煉獄

「あの鎧と仮面、もしかして……」



 ターニャは自然とハンマーを握り出し、タウルス族の力を解放していく。そう、目の前にいる鎧姿の人型モンスターは、邪霊ゴブリンが作らせていたものと同じように見える。

 あのときは日本風の甲冑だったが、目の前にいるモンスターは西洋風の鎧に変化している。仮面についても変化が見られ、以前は和風な鬼の面だったのに対しドクロ面になっている。



 次々と人型モンスターが降り立ち、俺たちと同じく四人編成で隊列を組み始める。手に持っている武器は剣やヤリ、フレイルと多種多様。一人はローブ姿で杖を持っており、おそらく呪文を使うタイプだ。それぞれドクロの仮面も違っており、おそらく武器や役割ごとに違うのだろう。



「……!」



 白い人型ドクロの仮面を被ったモンスターが剣を掲げると、ヤギ仮面を被った魔法使い風のモンスターが呪文を唱える。甲板の上に炎が走り始めるも、クレアがすぐに風の魔法にて鎮火させる。



「ったく! やっぱりこの船は呪われてるんじゃないのか?」



 クレアの魔法で炎が収まった途端、エヴァンが敵陣に突っ込んで陣形を引っ掻き回す。急いでフレイルを持った牛仮面が反撃するも、エヴァンはするりと回避する。フレイルはエヴァンの後ろにいたトリ仮面の顔面にヒットし、仮面が割れると共にヤリを落とす。



「へん! ひと様の猿真似かしらないが、慣れないパーティ戦なんておいそれとやるもんじゃないぜ」



 偉そうにエヴァンがポーズを取る。しかし、仮面の割れたモンスターはただ呻くだけで、身体から瘴気を吹き出しはじめる。みるみるうちに身体から鎧が外れ出し、中から人間が出てくる。



「なんだよ! もしかして、こいつら全員ー」



「そうだ、下手に息の根を止めるなよ!」



 ターニャが意識を失った人間を救出するため、別のモンスターへ攻撃をはじめる。彼女の突撃を防ごうとヤギ仮面が再び呪文を唱え出すも、タカオはフォームチェンジで風の精霊の力をまとう。

 すぐに背中に羽が生え、軽装の鎧に羽毛が生えた姿に変わる。風の力で瞬間移動のような速さでヤギ面に近づき、二刀の短剣に変化した封印剣で仮面を切り崩す。すると、先ほどの鳥面と同じくヤギ面の人型モンスターも人間に戻っていく。



「流石だ、タカオ!」



 ターニャはリーダーらしい人型ドクロ面の間合いに入る。敵もすかさず反撃を加えようとするも、ターニャはハンマーで攻撃を受け、仮面を拳を思い切り叩き込む。衝撃が加えられた部分からパキパキと音を立て、仮面が崩れ去っていく。



 一人取り残された牛仮面のモンスターはオロオロし始める。妙に人間臭い行動をするも、クレアは容赦なく仮面に杖の一撃を加える。きれいに仮面が割れると、そのモンスターも他と変わらず人間に戻っていく。



「やれやれ……。意外とあっさりしたものだな」



「エヴァン、油断するな。あれだけの数を手加減して闘わないといけないんだぞ」



 ターニャが指さす先は魔王城だった。魔王城の周りはおびただしい程のモンスターが飛んでおり、それは空一帯を覆うほどだ。その一部は各地に攻め入ろうとしており、中には新たに人間を連れ去っている鳥型モンスターの姿も見える。



「これじゃ、キリないな」



 ぼやいているとドン、と大きな音を共に船が揺れる。音がした方を見ると火の手が上がっており、どうやら鳥型モンスターが吐いた火球が船にヒットしているようだ。


「俺が行く!」

「私も」



 クレアも翼を展開して俺と共に空に舞い上がり、船に攻撃を加える鳥型モンスターを撃墜していく。顔はプテラノドンのような形になっているも、羽は限りなく鳥そのものだった。

 攻撃を加える俺たちにまるでカラスのようにモンスターが群がるも、何とかクレアが風魔法で数を減らしていく。タカオも魔法で応対し、船に一匹でも近づかないようにモンスターを処理する。



 一方、エヴァンとターニャは船に降りてきた人型モンスターの対応に追われていた。攻撃を避けては仮面を割る作業が続き、次々と船に解放された人間が積み上がっていく。



「お前、拳から血出てるじゃねえか」



 エヴァンとターニャは背中合わせになる。仮面を付けたモンスターが二人を囲み、ジリジリと近づいていく。



「ふん、これぐらい……」



「これ、巻いとけよ」



 エヴァンはそういいながら、ターニャにバンダナを手渡す。エヴァンからの差出に、ついターニャはほくそ笑みながら手に取って拳に巻いていく。



「ちょっと好きになってくれた?」



「どうだろうな。自分より強い人間しか興味ないからな」



「そりゃ当分、彼氏は無理だな」



「……終わったら殴る」



 逃げるようにエヴァンは駆け出し、再びモンスターの隙を狙って仮面をピンポイントに攻撃していく。同時にターニャも攻撃を始め、こちらはまるで解体作業のようにバキバキと小粋な音が立つ。



 クレアとタカオは相変わらず船の様子を見ながら応戦し、一匹でも船にモンスターを近づけないようにする。しかし、すべてを防ぐことはできず、人型モンスターが次々と船に乗り込んでいく。



「まずい! そろそろ戻るしかー」



「待ちなさい、タカオ。いまここで私たちが引けば、被害はもっとひどくなるわ!」



「だったら、クリエイトの力で船を」



「そんなことしたって、この大群の前じゃ焼け石に水よ」



「くそ、ここまで来て……」



 ここはまるで煉獄なのか戦いに終わりが見えない。これはすでに闘いですら無く、目の前にあるプチプチをただ潰していく作業のように感じる。

 仕事でも数に追われると質がどうしても低下するものだが、闘いですら物量戦になってくると、こうも敵を倒すことに躊躇が無くなってしまうものだろうか。



「おーい、エヴァンのダンナ! 援護に来ましたぜ」



 モンスターを切り裂く戦闘マシーンに成り下がりそうになったとき、懐かしい男の声が海に響いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ