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第50話・Where is the Satan?

 苗木は癒しの風の影響を受け、人の身長の倍程度まで成長していく。そして、風が吹いた大地に緑が戻っていく。

 シルフェニア大陸全土に緑を行き渡らせることはできなかったが、タカオがみている範囲は青々としているのがわかる。



「本当に、皆さんにはどうお礼を言っていいのか」



 グリフィスは深々と頭を下げてくる。ここまで人から感謝などされたことがなく、ついオドオドした態度で対応してしまう。その姿を見かねたのかクレアはすぐにフン、と言いながらしゃしゃり出る。



「まったく、これだけすごい力があるってのに……。引きこもりはこれだから困るわ」



「うっせえな! どうしてお前はそういつもいつも一言二言と!」



「事実だから仕方ないでしょ! ここに来るまでロクに力を使えなかったんだからー」



 二人がやんや言い出す姿を見て、グリフィスはポカンとクチバシを開けてしまう。その姿を見てエヴァンとターニャがいつものことです、とフォローを入れる。だが、心なしかいつものクレアが戻って来たことに、二人も自然とこの状況を楽しんでいるように見える。



「ったく……。なにはしゃいでんだよ、タカオ」



「バッ! 別に、俺は。はしゃいでなんてないぞ」



「クレアさんも、もういいでしょ」



「ターニャ、あんたはそうやって私を子供扱いしてー」



 隙の無い会話にグリフィスは申し訳なさそうにあのう、と声を掛けてくる。途端に恥ずかしくなり、タカオは咳払いをしてから彼に向き直す。



「グリフィスさん、これからどうするんですか?」



「私はこの大陸に残っているかもしれない生き残りを探します。あと、別の町にいる仲間にも声を掛けようと思います。あなたとクレアさんが作ってくれた希望があれば、何とでもなります」



 グリフィスは俺の手を両手でグッとつかみ、何度も強く頷く。彼の姿を見ていると、たぶん大丈夫だろうと思えた。決して投げやりな意味ではなく、彼の目から溢れる生きる意思が俺にそう思わせるのだ。



「クレアさん、今回の邪霊でタカオさんの剣にすべての元素が封印できましたね! ついに魔王との決戦ですか?」



 グリフィスの未来を確認した後、ターニャは血の気の多い質問を投げ飛ばしてくる。たしかに四つの邪霊を封印し終えた。はじめに会ったクレはこれで魔王にも対抗できるはずだと言っていたが、この剣自体に何か変化は起こらないのだろうか。



「なあクレア、今回にて無事四つの元素を封印した訳だが、何かこの剣に変化とか起こるのか?」



「いいえ。その剣自体に変化とかは起こらないわよ」



 すぐに変化は起こらなかったし、人の手によって生まれた剣。この剣自体が伝説の武器という位置づけでもなければ、何か奇跡が起こると過度な期待をする自分が悪いのだろう。では、今後について何か知っていると信じ、さらに質問していく。



「う~ん。たしかに私は封印剣のところまでは考えていたけれど、魔王の居場所までは知らないわ」



 水原アキとエレノアの記憶を取り戻したとはいえ、この貧乳神官に期待した自分が悪いんだ。タカオは自分に言い聞かし、冷静を装って質問を変えてみる。



「たしか、魔王って元々はこの世界の神様なんだよな?」



「そうよ、この世界の神様。その神が住む場所に魔王もいると思うんだけれど……」



「エヴァン、トレジャーハンター時代に何か神様について聞いたことないのか?」



 エヴァンはタカオの言葉に、ただ首を横に振った。


「空に住んでいる、みたいな伝承を聞くだけだ。だからって空に浮かぶ城だの宮殿なんて誰も見たことないし、そもそも空に行く手段がない。

 たしかにこの世界は神様が作ったものだが、その彼自体が住む場所は判明していないミステリー。そんな雲のような存在、探してるだけで人生使い終わっちまうぜ」



 エヴァンの言葉は大げさながら、あながち間違ってはいない。これだけヒントが無い状態だと、魔王の居場所を探すことは砂漠でビーズを探すようなものだ。だが、昔のRPGは現代ゲームと違い、フラグなんて立っていないことがザラである。



 この世界はレトロゲームの世界観が色濃く出ている。その点を考慮すれば、ボス間際になって次のフラグ探しを強要する可能性だってある……。心の準備が万全というわけでもないが、フラグ探しの旅というのもめげる。



「……もしかすれば、私の知る伝承が役に立つかもしれません」



 四人が今後について話し込んでいると、後ろからグリフィスが声を掛けてくる。



「なにか知っているんですか?」



「ええ。我々のような翼を持つ有翼族に伝わる伝承ですが……。神が地上世界をお造りになった後、天上へ向かうために方舟を用意したと言われております」



 方舟ですか、とターニャが興味津々に聞き返す。



「はい。天上界に向かった神の伝説が、私たちの民族には伝えられております」



「空飛ぶ方舟ねぇ……。元海賊でトレジャーハンターの俺でも、そんな船なんて聞いたこともないぜ」



「……すみません、余計に皆さんを混乱させたでしょうか」



 グリフィスはただでさえ低い腰を下げ、ペコペコと頭を下げる。



「いえ、何もないよりもいいですよ。ありがとうございます」



 タカオはグリフィスの言葉を頼りに、魔王のいる城へ行ける方法を模索する必要が出てきた。彼にお礼を告げた後、ターニャの船がある場所まで戻ることにした。

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