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第43話・フォームチェンジ

 目の前に現れたクレアは、背中からは片翼が出して顔は相変わらず真っ黒だった。そして、目と口の赤い部分が異様に目立つのも変わらない。今タカオがいる場所はゲーム世界からは逸脱しているはずだが、どうしてここに……。



「まずいわね、エレノアがこの世界を解析してここを突き止めたのかしら。それとも、魔王が……」



 考察する隙も与えず、クレアはまた大きな魔法を放ってくる。植えられている花々が風によって引き裂かれ、空中に花びらとなって飛び交う。



「くそ、どうすればクレアを元に……。アキ、何か魔法は?」



「今はバリアぐらい。データしか持っていないただのAIなんだから」



「でも、このままじゃ……!」



 攻撃の一手が止まる様子はなく、このままでは防戦一方だ。



「タカオ、精霊の力を借りるのよ」



「この攻撃の中で呪文なんて唱えられるかよ!」



「まったく……。あんたもクリエイトの力が足りないわね」



 アキが俺の前に出る。小さい身体とは思えないほど、その姿は勇ましく見える。



「仕方ないわね。あなたに『フォーム』の奥義を教えましょう!」



「シャアアアアアアアアアアアアアアア!!」



 アキの言葉を遮るようにクレアは近づき、杖で番人の小さい身体を殴打しようとする。しかし、アキはクレアと同じようなバリアを発生させて攻撃を防ぐ。そのバリアは強靭なのか、クレアの攻撃はいとも簡単にはじき返される。



「いい、タカオ。上着を着るイメージで精霊魔法を身体に放って」



「こんなときに何言ってんだよ! 前に精霊の魔法を身体に当てたけど、かなり痛かったんだぞ!」



「今度は攻撃じゃなくて、自分を強化するイメージで! ほら、あんた強化魔法の一つや二つ使えるんでしょ?」



 クレアは一度攻撃を止め、攻撃呪文の準備を始める。アキも何とかバリアを大きくして攻撃に備えようとするも、あの小さな身体ではいつまでも耐えることはできないだろう。



 悩んでいる暇はない。守るための力、なんて生ぬるいことは言わない。闘うための力だ。

 

 闇に支配されないために、誰かを傷付けないために、自分の意思で振るうための剣。

 

 それが今、必要なんだ!



「俺に力を貸しやがれ、精霊!」



 構えていた剣が赤く光り出し、炎が刀身から溢れてくる。その炎からは熱さを感じず、血が肌を沿って流れるよう全身に行き渡っていく。炎はタカオの全身を包み込み、徐々に形を形成していく。



「キシャアアアアアアアアアアア!」



 クレアは鎧に包まれている間に魔法を唱え、リヴァイアサンを攻撃したブラスト・ストームをタカオに放つ。



「これほどの攻撃は、もう……」



 爆風は煙を巻き上げ、ついに地面は丸裸に近い状態になってしまう。アキは自分の身体が吹き飛んだ姿を想像していたが、彼女の目の前には真紅の鎧に包まれていたタカオが盾を構えていた。



「やったわ! 精霊の力を具現化し、自分の姿を変える。それこそがクリエイトスキル『フォーム』の究極奥義『フォームチェンジ』よ」



「はあああああああ!」



 鎧に残っていた残り火がはじけ飛ぶと、辺りを漂っていた砂塵も吹き飛び視界がクリアになる。フォームチェンジによって長剣に変化した封印剣を握り直しはクレアに向かって一歩を踏み込む。彼女はすぐに風のウインドウ・ショットを放つも、それをすべてはじき返す。



 すかさず長剣から龍の形をした炎を放ち、クレアの身体を縛り付ける。その間に再びフォームチェンジを行い、今度は水の精霊の力を身にまとう。

 今度は賢者のようなローブを羽織り、シールはレイピアのように細い剣に変化する。フォームチェンジしている間に、クレアは炎を風の力で吹き飛ばし、炎の力を風に付加させてぶつけようとする。



 しかし、タカオは自分の前に水の壁を作り、それをあっさりと回避する。攻撃を避けている間に新たな呪文を唱えると刀身が水に包まれていく。クレアが次の対応にシドロモドロになっている間に、タカオは彼女に近づきシールの剣を突き刺す。



「!?」



 自分の身体に突き刺さったシールの剣を、クレアはさするように触れる。刺さったところから徐々に水が身体へ浸透していき、彼女を覆っていた黒い文字のようなものを洗い落としていく。

 フォームチェンジして解呪の力が底上げされている上、シールを水に変化させることでよりダイレクトに解呪の力を与えることができたようだ。



 すべての黒い呪文がはがれ落ちると、そこには見覚えのある憎らしい顔があった。剣を抜くと徐々に呼吸が戻り始め、まるでずっと空気を吸っていなかったようにむせ始める。



「……クレア」



 タカオは優しく彼女の名前を呼ぶ。その声に答えるように、クレアはゆっくりと瞼を開いた。

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