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第23話・宿敵との決闘(裏2)

 ボニーは悪魔の仮面が皮膚と同化してしまい、そのまま笑ったような表情を見せる。エヴァンが呆気に取られているも、彼女はそのまま話を続けていく。



「オリビアは私たちが人魚を乱獲していることにいち早く気付いてね。いつも抗議運動をしたり、先回りして人魚を助けたりしていたのさ。うっとおしくなってねえ、少し芝居させてもらったのさ。

 エレノアと私でウソの情報を流し、あいつを人気のない海に呼び出した。あとは簡単さ、さっきあんたがみたヘビ女たちを使い、事故に見せかけて処分させたのさ」



 オリビアが、こんな女に……。手に持った刃で止めを刺す前に蹴りを食らってしまう。彼女はすぐに立ち上がってエヴァンから剣を取り上げる。



「お嬢様育ちは困るよ。話せばなんでも解決すると思ってやがる。だから私のところにも、何度も足を運んでくれたよ。

 色々と理想論を語ってくれたねえ、そのたびに反吐が出そうになったけど。人魚と意思疎通? そんなものができたからって何になるっていうんだい!」



 ボニーは思い切りエヴァンの腹に蹴りを入れてくる。尖った靴先がキリキリと内臓まで刺さるようで、俺は思わずうめき声を上げてしまう。



「エヴァン、あんたも昔はいい海賊だった。私はあんたほど、傭兵まがいの海賊を知らなかった。なのに、あの女と会ってからすっかり変わっちまった。そんなにあの女が良かったのかい?」



「……あいつはな」



「あん?」



「オリビアはな、俺がやりたかったことを思い出させてくれたんだよ。生活が苦しくなって海賊家業に走っていた俺に、世界中の財宝を守るトレジャーハンターになりたかった夢を。

 あいつの純情な思いが、俺を動かしたんだよ! あいつが恐れを知らず俺に会話を続けてくれたから、俺は……」



 吠えるエヴァンの手の甲を、ボニー足で踏みつけていく。かかとで踏まれた手の甲は嫌な音を立てると共に、彼の口から絶叫を引き出した。



「そんな夢物語はいらないね。海賊になっても、リューベックで商会を作っても、それでも私が自由に生きるには、まだ力が足りないんだよ。

 私に絶対的な力があることを世界中に示さないといけない。この海を支配する力を手に入れて、世界中の人間を服従させる。私みたいな人間には、これぐらいしか生き残る道がないからね」



 ボニーがオリビアを全否定する中、さきほど玉を放り投げたことで発生した光は収まっていた。その代わりに波が徐々に高くなっており、まるで彼女の感情の高ぶりに合せているようだった。



「……お前、ホントは怖かっただけじゃねえのか」



 ぎろり、とボニーは睨んでくる。まるで般若の化身となっているも、エヴァンは不思議と恐怖を感じなかった。



「あいつはずっと人魚との対話を求めていた。どれだけ町の人から奇異の目で見られても、その意思を曲げようとはしなかった。あいつの真っ直ぐさは、近くにいるだけで肌がチリチリしてしまいそうだもんなあ。

 だからお前は、あいつと対話して自分のほうが弱いと感じるのが怖かったんだろ。そんなお前は、どれだけ力を持っていたとしても、俺からすればただ寂しい人間だぜ! 誰とも話せないお前は、ただ暴力に逃げている魔物とかわらない!」



 ボニーはエヴァンの言葉には答えず、さよらなと言ってから刃を振り上げる。


 その瞬間、海中から女性の断末魔がポコポコと浮かび上がってくる。ボニーが海の様子を見ると、青い海に血が浮かび上がっていた。ボニーがその様子に気を取られていると、海中から突如として海洋生物が飛び出し、彼女目掛けて飛び付いた。



 海洋生物はボニーを飲み込むとそのまま船に激突する。その自重により船は転覆し、エヴァンも海へ放り出されてしまった。急いで船付近に戻ろうとするも、リヴァイアサンの首が鞭のようにうねりながらもエヴァンたちに向かってくる。



 ーちくしょう、今度は俺が約束を破っちまうみたいだ。



 もうだめだと思った瞬間。再び身体がシャボン玉に包まれ、すぐさまリヴァイアサンから距離が離れていく。後方をみると、オリビアが転生した人魚が猛スピードで泳いでいた。

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