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第17話・決死の脱出

 タカオとターニャは船員たちと闘うも、どいつもこいつも本気でない様子だった。タカオの力量に合わせてゲーム難易度が変わったのかとも思っていたが、突如船が大きく揺れ動き始める。その揺れを合図に、船員たちは俺たちの前からすたこら逃げ去り、ターニャの船に乗り込んでいく。



「残念だったね!」



 空からボニーの声が聞こえてくる。彼女はエヴァンが使ったロープを使い、自分の船からターニャの船へ渡っていく。彼女と一緒に布で顔を隠した人間もおり、視線を奪われているとあっという間にボニーによって船が奪われてしまう。



「お前ら、私のお父様の船に土足で!」



「私たちの秘密を知って生かしてはおけないね。お前たちはその船と共に沈むがいい」



 ボニーはどんどん元自分たち船から離れていき、お互いの乗っていた船がきれいに入れ替わってしまう。ターニャはそれでも追いかけようとするので、なけなしの力で彼女を止める。



「タカオ、離せ!」



「まだクレアとエヴァンも来てないだろ! それよりも、脱出できるボートを探そう。こういう事態に備えて載せてあるのが普通だと思うし」



 タカオの提案に合理性を感じてくれたのか、ターニャはツノをひっこめる。とりあえずクレア達を迎えに行こうとすると、ちょうど階段から二人が甲板に出てくる。しかし、エヴァンが背負っているものを見て、俺はまた声を上げてしまう。



「エヴァン! お前がボニーから盗みたかったのってー」



「説明は後だ! この船、そんな時間を待たずに沈没するぜ」



「あんたの細工のせいでしょ!」



「こんな予定じゃなかったんだぜ、ホントは」



 四人が慌てふためく中、エヴァンが背負っている人魚がプルプルと振るわせながら船首の方向を指さす。エヴァンが迷わず指示された方向に走っていくと、そこには数匹の人魚たちが海から上半身を出していた。



「……おい、飛び降りろだとさ」



「はあ、何言ってんの?」



「この人魚が、後は私たちの仲間が助けてくれるだとさ」



「でも、人魚が人を助けるなんて」



「クレアちゃん、船と一緒に膿の藻屑になりたいのか?」



 一瞬だけためらいながらも、クレアは仕方ないわねと言いながら了承する。



「これで死んだら、私はあんたを恨むからね!」



「それじゃ、仲良くみんなで飛び込むぜ」



 エヴァンの声に合わせ、沈没していく船から飛び降りる。想像以上に高さがあり、水面と身体がぶつかるまで恐怖が一層大きくなる。映画やアニメで主人公のように勇気を振り絞るも、海に触れた途端にドポーンと爆発音が耳に届いてくる。



                  ***



 海と身体が思い切りぶつかった瞬間、全身に痛みが走り気絶する。数秒前までそんな想像をしていたが、痛みはないし意識ははっきりしている。目を開けてみるとシャボン玉が身体を包んでおり、海の中でふわふわと漂っているようだった。



 シャボン玉越しに周りを見るとクレアやターニャ、エヴァンも俺と同じような状態で、ターニャに関しては乙女のように目をキラキラさせてシャボン玉に触っていた。いくら触っても割れる様子は無く、おそらく魔法の類だろうと思った。



「すごいな、これ……。こんなこと、誰が」



「それは目の前にいる人魚さんに聞けば?」



 クレアがまるで納得いかないような顔をしているも、言われた通り人魚の方を向いてみる。そこにはエヴァンが助けた人魚を含め、六匹が水中でひらひらと尾っぽを動かしていた。



「あんたらが、俺たちを?」



「ええ。今回は助けていただいて、本当にありがとうございます」



「とにかくありがとう。あんた達がいなかったら、俺たち本当に危なかったよ」



「ねえ、それよりも私から聞いていいかしら?」



 不機嫌なクレアは我慢できないのか、お礼を述べている最中に関わらずズカズカと割って入って来た。



「私の記憶が正しければ、人魚は人の言葉を話せないはずなんですけど。今こうして意思疎通できているということは、もしかして私たち揃って死後の世界で漂っているのかしら?」



「そんなことありません! これは現実で、あなた達は生きています。それに……」



 人魚の視線を追っていくと、彼女はエヴァンの方を見つめていた。彼は極力人魚を見ないようしているも、気になって仕方ないという様子だった。



「色々とあなた方にはお話しないといけないことがあります。海底に安全な場所がありますので、そちらにご案内します。そこならば、あいつらも手を出せないでしょう」



 四人の同意を得ることなく、人魚は海底に向かって泳ぎだしていく。彼女たちに引かれるように、シャボン玉は海底へ潜っいった。

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