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第9話・対決!邪霊ゴブリン

 タカオたちは助けた町人たちの手を借りながら、道中で見つけた牢屋や作業現場に立ち入っては救出作業を続けた。その度にターニャは今回の件のうっぷんでも晴らすように、ハンマーを握っては破壊活動に勤しんだ。その姿に自分だけでなく、町人の中にも驚く人がいるのをタカオを見逃さなかった。



「さあタカオさん、行きましょう」



 町人を解放するというよりは牢屋や作業場所の破壊を楽しんでいないか。思わず聞きたくなるが、何とか我慢して山頂を目指した。



 道なりに進むと山中にある洞窟を抜け、山頂までの一本道に出た。俺たちは一気に駆け上がると、開けた場所にたどり着いた。そこは本来の精霊を奉るための祭壇が見え、おそらくここが山頂とにらんだ。その祭壇には玉座が作られており、そこには西洋風の甲冑姿に身を包んだ大男が堂々と腰かけていた。



「ゴブリン、ついにあなたを懲らしめる日が来ました!」



 ターニャはハンマーで甲冑の大男を指す。

 やはり、あいつがゴブリンだ!



「ほう、ターニャか。まさか、自分では何も決められないお前がここまで来るとは……。思いもしなかったぞ」



「あなたは私の弱みに付け込み、私だけでなくお父様や町人を巻き込んだ。その罪の重さ、お前にわかるか!」



「ほう、そうか……。では、お前に町人を傷つけられるかな」



 ゴブリンはそう言いながらパチン、と指を鳴らす。すると、タカオたちを囲むように地面が隆起し、そこから鎧に身を包んだ人間が出現する。鎧を着た人間の顔には鬼の面が付けられており、目の部分がぼんやりと赤く発光している。



「まさか……。これは」



「ゴブリン、あんた町人に妙な術を!」



「ひゃははははは! 俺を簡単に信じ込む人間を操るのは容易かったぜ。俺を本当の神と信じ、崇め、その身さえ簡単に差し出す。特に、お前を逆恨みしているテッシンとかいう人間を操るのは簡単だったなぁ。お陰で町の人間を引き込み、こして鎧武者軍団も簡単に用意できたぜ」



「まさか、この鎧武者はすべてドワゾンの住人なのか!」



「ああ、そうだぜ! これもすべて魔王さまの計画の1つ。この鎧の生産が順調にまま進めば、侵略作戦も簡単だろうさ」



 くそ、これでは下手に手を出せない。それに、魔王の作戦とは一体何のことだ……。劣悪な状況だとタカオは感じ、二人の名前を叫ぶ。しかし、どちらからも返答がない。



 再度クレアにおい、と言いながら肩をゆすりかけてみるも、彼女の目は泳いでいた。それはゴブリンに畏怖しているのではない。彼女の視線はターニャに釘つけだった。



「……ゆるせねぇ」



 ターニャの目は完全に座っていた。自らの怒りによって血がたぎり体温が上がっているのだろう。身体からは湯気が立ち込め、皮膚が紅潮しているのが見て取れる。



「おんどりゃ、自分がどげぇにゲスな野郎かわかっちゅーか!」



 ターニャは咆哮と共にハンマーを地面に叩きつける。大きな地震が発生したように地面が揺れ、ゴブリンもイスから転げ落ち、鎧武者たちも腰を抜かして尻もちを付いている。



「おい、これどういうことだよクレア」



「やばいわ、ターニャが本気で切れた」



「はい?」



「やばいのよ、この子が切れると! 本当に手が付けられなくなるのよ」



 クレアが状況を説明する間にも、ターニャの息遣いは荒くなる一方だ。息に合わせるように身体も膨張し始め、腕の筋肉は二回りほど大きくなっている。さらに、頭に付いているツノも伸び、その姿は闘牛そのものだ。



「こうなりゃ仕方ない! タカオ、あんた強化魔法をターニャに使いなさい」



「強化魔法? そりゃ、ゲームならお約束だけど俺にそんなものー」



「あんたの封印した元素は何? 力の象徴そのものでしょ? それぐらい考えてクリエイトしなさい」



 そんな簡単にできるのか、とぼやきながらも大まかなイメージは頭の中に浮かびあがってくる。それに、キャンプ地で炎は簡単に扱うことができた。



 -封印した力なら使える。



 タカオは自分に言い聞かせながら封印剣を取り出し、強化呪文を想像しながら唱えてみる。



「わが剣に封印されし炎の元素よ、汝に命ず。血のたぎる者の潜在能力をさらに高めよ、デフェール!」



 想像した魔法詠唱すると、剣の紋章が赤く光り始める。すると、ターニャの身体が赤く光り出した。



「やった、成功よ!」



 呪文の掛かったターニャは脚部に力を入れ、思い切りジャンプする。



「タカオ、早くこっちに!」



 クレアの声に反応し、俺は彼女の側に向かう。近づくと同時にクレアが「バリア」と短く言い放つと、青い球体が俺たちをすっぽり取り囲んだ。呪文を唱え終えると同時に、ターニャは自身のパワーに落下エネルギーを上乗せし、地面にハンマーを存分に打ち付けた。



 まるで噴火でも起きたような音と共に地面が砕け、鎧を着た町人たちは次々と地割れに挟まれていった。その被害は俺とクレアに及びそうになるも、クレアの防御呪文によって何とか避けることに成功した。



「お、おそろしいな……」



「ええ、想像上ね」



 地割れに巻き込まれることで町人たちは身動きが取れないばかりか、ほとんどが気絶していた。



「タカオ、さっきの攻撃で町の人はほとんど気絶しているわ。封印するなら今よ!」



 タカオは剣を持ち、ゴブリンに近づいて封印を試みる。しかし、剣は一向に反応せず、ゴブリンを封印できる様子はなかった。



「ひゃははははは! この甲冑で守られた俺が、簡単に封印されますかい!」



「ならば!」



 ゴブリンが体勢を立て直そうとしたき、ターニャが即座に敵の懐に飛び込む。そして、ハンマーを思い切り振りかぶり、ゴブリンの甲冑を思い切り叩く。

 ハンマーで叩かれた部分から甲冑はひび割れていき、いとも簡単に崩れさっていく。中からどんな大男が出てくるかと思ったが、甲冑から出てきたのは子どもサイズの小さい邪霊だった。



「タカオ、これならいけるだろ!」



 ターニャ―の声に俺はよし、と短く返事をし、俺は再び剣を構える。すると、ドラゴンの時と同じく頭に封印の詠唱呪文が浮かび上がり、魔法陣が出現する。



「ゴブリン、我が剣の元に戻れ!」



 呪文を唱えるとゴブリンは断末魔と共に粒子となり、シールの剣に吸い込まてれていった。

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