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無理はしないでね♡

      挿絵(By みてみん)




「ショウさん、スゴ~イっ♡」


 月を背負い夜空に浮かぶ三人の姿に見惚れていた僕。駆け寄る三人の中から、エルは僕に抱き付くとそう言った。(この場合、駆け寄ると言っていいのかw)。


「えっ!? あ、ああ……」

「見直したよぉ、ショウ」


 と、アキラ。


「いや、もう無我夢中で……」

「さっきは有難う。本当に助かったわ、ショウ君」


 と、千勢も。僕らはTOHOシネマズの屋上へと降下した(あのゴジラの頭があるビルだ)。


「いや、それほどでもぉ……。それよりミンナの方が凄いよ。あの状況で変身し直すなんて……」

「えっ、そ、そぉ……」


 と、アキラが目線を僕から逸らした。


「いやぁ、あんな……。ホント、みんな凄かった!」

「……」


 何故かエルちゃんも無言に宙を見る。


「あれ? みなさん、どうかしました?」

「えっ、うん……」


 と、頬を赤く染める千勢。


「そのね。あんまり、凄い凄いって言われると……。なんていうか、ちょっとだけ、恥ずかしいかな……」 

「えっ……?」


 会話になっておらず、ふと考える僕。そして、重大な勘違いに気付く僕。


「あっ! いや、そう言う意味じゃなくて! 違う違う。みんなの《《変身》》攻撃が凄かったんであって……。いや? この言い方も違うな。 その、みんなの裸《(*´艸`*)ムフッ♥》とか、変な意味じゃなくて、ほら……」


――もう、ええっちゅうねん!――


 と言うツッコミを受けそうな中。残酷にも一斉に赤い明滅を始める僕たちのゴーグル・ディスプレイ。まだ距離があるのか非常警報アラートは鳴らない。


――えっ!!!――


 まさかと言う表情を突き合わせる三人。


「じょ、冗談でしょ……」


 辟易とするアキラ。するとゴーグルを掛け直し、ディスプレイに映る映像を望遠に切り替えたエル。


「南南西上空5000m……。えっ、四体も……。しかも音速飛行タイプのドラゴン、です……」


――音速って、ジェット戦闘機かよ――


「面倒なのが出て来たわね……」


とアキラ。


「そうなのか、千勢さん?」

「音速飛行もエネルギーの消耗戦になるわ」

「エネルギーの消耗戦?」

「ショウ君。ゴーグルのディスプレイを見てみて」

「あ、ああ……」

「右上に電池残量表示バッテリー・バーがあるでしょ?」

「緑のヤツね。パーティ・モードで、みんなのも表示されてる……」

「何か気付かない?」

「何か? って……、あっ!」

「そう、アキラとエルのゲージが30%以下になっているでしょ?」

「もしかして、思念崩壊雷電サンダー・ボルトってやつのせい?」

「ええ。そしてバッテリー残量がイコール、私たちのライフ残量なの」

「ということは、技を使えば使うほど変身していられる時間が短くなる?」

「そういう事。この後、もし消耗戦になると二人はもたない」

「そりゃ、マズイ……」


 その時。純粋に一つの疑問が沸いた。


「あのぉ、素朴な疑問なんですけどぉ。もし、あそこに俺たちが出て行かず戦わなかったら?」

「たぶん街がメチャクチャになるでしょうね。私たちを炙り出すために」

「どのみち、戦いは避けられないってことか……」


 すると、アキラとエルが不安気にぼやいた。


「アタシ、予備のバッテリー持ってきてないよぉ」

「エルもですぅ。一晩でドラゴン八体の相手は想定外です」


 そんな二人に千勢が優しく頷いた。


「大丈夫。ここは私とショウ君、二人でやるわ」


――えっ!?――


「その間にアキラとエルは、なんとか充電を」

「「それはいいけど……」」


 千勢の言葉にハモるアキラとエル。また不安げに僕を見る二人。


「「大丈夫かな?」」


「えっ、ああ、大丈夫、大丈夫。任せてください……」


 多少の不安もあったが、言い切ってみた僕。


「でも、俺は90%近く残ってるからイイけど、千勢さんは? 君も50%切ってるじゃないか……」

「私は……」


 彼女は苦笑いを浮かべると、躊躇いを捨てて言った。


「私の本当の体は別の平行世界にある。私の【DreamLift】もね。そして、向こうの世界で充電しながらリフトオンしてるの。その分、みんなよりはエネルギーの復活は早いから……」


 やはり昼間の話通り、この目の前にいる千勢ハルは俺の知っている彼女ではないらしい。だが今は、そんな事を考えている場合でもないと自分に言い聞かせた。


「そ、そうか……。分かった、|二人でやろう《(*´艸`*)ムフッ♥》」


 千勢は僕にも頷くと、音速戦闘での作戦を提案した。


「二対四じゃ、まともに遣り合ったら向こうが有利。だから、私が先に出て四体を引き付けるわ。ショウ君は後ろを取ってドラゴンを撃ち落として」

「いや、ダメだ……」

「えっ!?」


 驚く千勢だったが、僕は続けた。


「ダメだ。囮には俺がなる」


 今度はアキラとエルが、驚きに僕を諫める。


「ショウ、初めての音速戦闘なのに無理だよ」

「いや、さっきの戦闘で感じは掴めた。それに、撃ち落とす方が重要だろ? 俺のベレッタじゃ、一撃というわけにはいかないし」

「あっ、でも、ショウさん。音速飛行タイプは、さっきの金属属性タイプよりも装甲は脆弱ゼイジャクですから」

「いやぁ、俺は逃げる方が気が楽だし、性に合っている。ケツ持ちは千勢さんに任せるよ」

「ショウ君。本当に大丈夫?」

「大丈夫、大丈夫。いざとなったら徹底して逃げるから宜しく。で、その間にアキラとエルは充電して助けに来てくれよ。ハハハ……」


 そう言って、僕は笑って見せた。ただ本音では、千勢を囮にするようなマネが出来なかった。それに、音速戦闘下でバッテリーの消耗戦となった時。残量に余裕がある僕の方が、逃げ役には適任と思えた。そして、まだ僕も試したいモノがあった。


「分かったわ。でもショウ君。絶対に無理はしないでね」

「ああ、分かってるって♡」

「で、千勢さん。街中の上空は下のビルとかが気になる。ここから、そうだな……。お台場方面に抜けて、海上にヤツらを引っ張り出す。海の上なら万が一落ちても、だし?」

「いいわ」

「ショウさん、お台場方面ですね。必ず助けに行きますから!」

「ああ、期待して待ってるよ、エルちゃん♡」


 そうして、僕は三人を屋上に残すと、再び真夜中の新宿上空へと飛んだ。







「アレか……」


 新宿の駅ビル向こうの更に上空、銀色のドラゴンの姿が確認できた。まだ四体は回遊しているようだった。おそらく、僕たちが出てくるのを、様子を伺って見ているのだろう。


「千勢さん、聞こえる?」


――ええ、聞こえているわ――


「これから威嚇して海上まで誘き出す。食いついたのを確認したら後を追ってくれ」


――分かった――


「レインボー・ブリッジを越えたら、戦闘開始だ!」


――ショウ君、気を付けてね――


「ああ♡」


 僕は、先ず垂直に上昇しドラゴンの群れよりも高い位置を目指した。


「やってみるか」


 奴等に気取られぬよう回り込んで上空約8000m。

 その高高度に達した時。僕は呟いた。


思念崩壊火器ファイヤーアームズ


 そして、拳銃《ベレッタM9A5》を両手に握りしめると、威嚇射撃をする為に高高度から急降下を開始した。


 引力による自由落下。

 思念飛行を上乗せる。

 風を切り上がるスピード。

 空気抵抗が半端ない筈だが、全身を包むアーマーで気にならない。

 精神集中をして更に加速。

 会敵まで30秒も無かった。

 あっという間に目前に迫るドラゴンの群れ。

 僕はベレッタを振り下ろすと撃ちまくった。

 そして、ヒット&アウェイの定石通り。

 急旋回を掛けると一気に東へと離脱。


「どうだ!?」


 不意の銃撃。被弾したドラゴンの群れが混乱する。

 僕はロールして背面となった。

 上体を僅かに起こすと更に追い打ちで撃ちまくる。

 すると思惑通り。

 いきり立つ奴等が逃げる僕に気付き追撃に入る。


「よしっ、食いついた! 千勢さん!」


――了解っ!――


 僕は再びロールし水平飛行に姿勢を戻すとスピードを上げた。

 目指すはお台場。直線にして10km程度。

 ディスプレイの速度計は300m/sオーバーを示している。

 だが、ドラゴンも早い。


――ショウ君! もっと早く!!――


 千勢の叫び声。

 振り返る僕の視界に飛び込む銀翼。

 瞬く間にドラゴンたちは僕との差を詰めてくる。

 直線に編隊を組んだ四体の先頭が僕の後方に付いた。


「ナニっ!? もう追いつくのか!」


 ドラゴンが僕を狙って火球を吐き出した。


――ショウ君! 躱してっ!!――


 僕はバレル・ロールで速度を落とさず左右に回転。

 回避運動で攻撃をしのぐ。

 が、キリがない。


「早いけど、試してみるか!?」


 繰り返し軸線をずらす僕に、ドラゴンは正確に食らいつく。

 そのタイミングを見計らって僕は叫んだ。


思念崩壊火器ファイヤーアームズ!!」


 すると、僕の腰に巻かれたトンレットBOXがフレアの如く後方に飛び散った。

 それは仕掛け花火が火球を撒き散らすように幾筋もの煙とを棚引かせた。


――えっ!? 二つ目の武器?――


「お返しだっ!」


 その火球煙幕ナパームの直撃を浴び炎に呑まれるドラゴン。

 先頭が脱落。


「上手くいった! まずは一つ!」


 レインボー・ブリッジ手前。

 入れ替わる様に二体目が僕の後方に食らいつく。

 振り切るため旋回急上昇ブレイクを仕掛ける。

 僕を追ってドラゴンの編隊も急旋回した。


「維持旋回能力勝負だ!」


 猛烈なスピードはそのままに急上昇。

 強烈な遠心力が体を押さえつける。

 本来ならG-LOCで意識喪失する程だ。

 が、僕は更に速度を保ち仰角を上げる。

 身に纏うアーマーがそれを可能にした。

 瞬間、奴等の旋回角度が僕を下回った。

 それを見逃さない。


「もらった!!」


 僕が僅かに速度を落とすと奴等が前に出た。

 すかさず上から被せて編隊の後尾に張り付く。


――ショウ君、上手い――


思念崩壊火器ファイヤーアームズ!!」


 僕は拳銃《ベレッタM9A5》でロックオン。

 そして最後尾のドラゴンに銃弾を浴びせかける。

 オートで炸裂する9mmパラベラムの思念崩壊弾コラプス・バレット

 確実に奴を捉える合計20発もの弾丸が銀色の鱗を撃ち抜く。

 被弾に無数の光の煙を上げて失速するドラゴン。

 それは大きく炎を上げると爆発に墜落した。


「ふたつ!!」


 瞬間。前を飛ぶ二体のドラゴンが左右に割れてループ。

 大きく弧を描いて降下する。

 僕は左の奴を追った。

 と、同時にループ頂点目前で急制動を掛ける。

 思念飛行を完全停止。

 胴体面を進行方向に向けて風の抵抗を受ける。

 そして急減速と同時に叫んだ。


思念崩壊火器ファイヤーアームズ!!」


 三度、新たに僕の両手へと飛び込むベレッタ。


 失速した僕は横滑りするように、体を翻すと旋回急降下に移行した。

 それは旋回半径を大幅に縮め、ループする奴の頭上を直撃する。

 捻り込みから乱れ撃ち降ろすコラプス・バレットの弾幕。

 翼を撃ち抜かれスパイラルダイブに墜落するドラゴン。

 それも炎に包まれると爆発した。


「みっつ!!!」


 しかし、ループを終えた四体目のドラゴンが側面から迫る。

 態勢を引き起こし、水平方向にベレッタを振り上げ引き金を引く。


――弾切れ!? しまった!――


 その時だった。


「フェイバリット・チェンジ! 風神天女ウインディ・メイデン!!」


――えっ!?――


 響く伸びやかな美しい叫び声。

 瞬間、彼女のボディスーツに光の螺旋が走る。

(0.5秒)

 突然に風をはらみ、天に跳ね上がり舞う彼女のカラダ。

(1秒)

 そして、螺旋の亀裂に破裂する七色の瞬き。

 それは彼女が

 《《身に纏うもの全て》》を《《帯状に引き裂いて》》

――ぃやぁ~ん♥――

 姿を現した。

――(*♡o♡*)わ~お♡――

(2秒)

 僕の頭上を放物線を描いて交錯する生まれたままの姿。その裸体を中心に層を成して双方向回転するリボンリングの瞬き。そこに描かれた光の球体。立体魔法陣のように瞬くモザイク模様は、その露わな肢体を僕の視線から遮るよう黒とシルバーに色を変えていった。この間、全3秒。


 残る一体のドラゴンが、僕に襲い掛かる。


思念崩壊火器ファイヤーアームズ!」


 慌てて新たなベレッタを召喚。と、同時。


思念崩壊旋嵐ホイール・ストーム!!」


 斜め上空から渦を巻いて放たれた旋風の嵐。

 それは集束すると鎌鼬かまいたちの刃となってドラゴンを薙ぎ払った。


 見上げる空には、|風神の如き《何度見ても美しい(*´艸`*)美白肌の♥》天女。白銀線シルバー・ラインで彩られる|黒いバトルスーツに身を包んだ《心なしか露出多めの(*´艸`*)ムフッ♥な》千勢ハルの姿があった。






つづく






次回「絶対死なせない♡」お楽しみに♪(*´艸`*)ムフッ♥

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