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ゆるさないんだから♡

      挿絵(By みてみん)




「にしても、随分とデザイン変えたわね……」


 変身した僕のコスチュームを見て、多少呆れ顔のアキラ。ま、それもその筈。僕のコスチューム・デザインは、アキラが用意してくれたモノから大分変更されていた。と言うより、全くの別物。


 それは僕がPCで描いたオリジナル・デザイン。何を隠そう、中学生の頃からDVRGを使い始め、しばしば僕はハイファンタジー世界が舞台の夢を見ていた。これは長年、その夢仮想現実の中で使用していたものだ。


 ファンタジー要素満載のそれは、中世騎士の前開きスカート(トンレット)付き甲冑がベースだった。とは言え、皆と統一感を出すために色は真っ黒。断腸の思いで装甲も薄く軽装にした。


 手足の装備も鉄靴ソルレットをレガースとニーパッド一体型のロングブーツに、小手ガントレットやヴァンブレイスもエルボーパッド一体のグローブ・タイプに。そして、ジェット・ヘルメット調のヘルムもヘッドセット・ゴーグルに。


 まあ、全体的にミリタリー要素も取り入れてと言った具合だが、それでも首周りのゴルゲットや肩当てのスポールダーで、結局は鎧みたいだが。


「ショウさん、カッコイイっ!」


――おっ! エルちゃん、このセンスが分かるかね(喜)――


「ったく、ファンタジー・ゲームおたくが……」


――アキラ君、むしろ褒め言葉にしか聞こえんよ(失笑)――


「あっ、背中に盾まであるっ!」


――エルちゃん、目ざといねぇ(喜)――


「でも、ショウさん。騎士なのに、腰の剣が短いというか……?」


――エルちゃん、よくぞ聞いてくれました(喜)――


「どうせライト・サーベルとか言うんでしょ……」


――アキラ君、少し黙っていてくれないか(怒)――


「あっ、コレ? これは後のお楽しみで……」


 トンレットが巻かれた僕の腰には、その両サイドにガンホルダーぐらいのBOXが装着されているだけだった。ま、当然として武器に変わるのだが、実際使う時に皆をびっくりさせようと説明はしなかった。


「ところでショウ君、飛べる?」


 冷静な千勢さんだった(素敵)。


「えっ、ああ、やってみる……」


――Fly(フライ)―― 僕は呟いた。すると、カラダが宙に浮く。そして、僕がイメージするとその通り。上下左右移動、とんぼ返りまでして宙に静止した。


「ショウさん、初めてなのにスゴイっ!」


――エルちゃん、君はイイ子だねぇ(御満悦)――


 これには、さすがのアキラも驚いていた。


「問題、ないみたいね……」

「ああ、DVRGの夢の中にいるみたいだ」


――アキラ君、僕はDVRGのヘビーユーザーだよ(したり顔)――


 そんな僕を見て、千勢が心配そうな顔を見せる。


「でもショウ君、気を付けてね。これは夢の中でも、仮想現実でもないの……」

「ああ、分かってる、つもりかな……」


――下手をすれば命を落とす――


 そう言いかけて僕は止めた。ふと千勢とアキラの涙顔が浮かんだからだ。空気を察したのか、アキラが場の雰囲気を変えるように笑いながら僕の肩を叩いた。


「にしても召喚って、アニメの見過ぎじゃない?」

「えっ、そうかな? その方が雰囲気、出るだろ?」

「しかもナイトとか、笑えるんですけど」

「やっぱ乙女を救うのは騎士でしょ」


 その言葉を聞いて僕の両手を握りしめるエル。


「ショウさん、超カッコイイですっ!」

「そう言ってくれるのは、エルちゃんだけだよ(泣)」


 そんな遣り取りに表情を和らげる千勢。彼女はアキラと目を合わせると小さく頷いた。エルちゃんも含め、どこか三人には、僕の知らない信頼関係があるのだと感じた。


 新宿での偶然が発端ではあったが、僕を仲間に引き入れる事をアキラも望んだのかもしれない。そして、皆が多少は僕を頼ってくれているのだと思えた。


「じゃ、行きますか?」


 エルの一声に皆が顔を見合わせた。瞬間、三人の姿が消える。


「おっ、光学迷彩だな!? じゃ、僕も……」


 そして、ヘッドセット・ゴーグルから千勢の声。


「ショウ君、思念通話だけど、聞こえてる?」

「ああ、感度良好」


――赤外線スコープの感度《皆さんのボディライン》も良好♡――


「ショウ君、何か言った?」

「えっ!?」

「思念通話は、相手を意識しないと聞えづらいの」

「いやいや、別に、独り言です……」


――おっとアブナイ、アブナイ。逆に思った事が漏れ伝わるのか――


「あと、ゴーグルのディスプレイに」

「赤外線スコープのことかな?」

「説明は要らないみたいね?」

「えっ、いや、そんなことないです……」

「とりあえず、人目に付かない上空まで光学迷彩で上がるわね」

「了解!」


 そして、僕らは夜空へと飛び立った。風が気持ち良かった。DVRGで経験した仮想現実の風と違って感じたのは、夢ではない彼女たちと一緒にいたからだろうか? ただ、この後に訪れる現実は、僕の想像を遥かに超えて過酷なものだった。







「とりあえず、ショウ君は見てて」


 千勢はそう言うと、アキラやエルと共に僕の頭上前方へと位置を変えた。月明かりに澄み渡る綺麗な夜空が三人のシルエットを浮かばせる。


 僕から7、80mほど離れると、彼女たちは背中合わせに小さなトライアングルの布陣を組んだ。きっと、どこから現れるか分からない思念体ドラゴンを警戒してのものだろう。


 そして数分と経たないうちに、思念通話を経たアキラの呟きが聞える。


――来る!――


 同時に赤く明滅するゴーグルのディスプレイ。

 けたたましく鳴り響く非常警報アラート


――こっち!!――


 千勢が叫んだ。

 アキラとエルが翻り態勢を整える。

 三人の前方空間が歪む。

 その歪みを切り裂いて頭を現すドラゴン。

 彼女たちは更に上空へと飛び距離を取った。

 そして、亜空間から抜け出そうとするドラゴン目掛けて攻撃を開始する。


――いくわよっ! みんなっ!――




思念崩壊光線コラプス・レイ!!!』




 白く眩い閃光を放つ三人の両手。

 その翳す光がドラゴンの頭部を捕らえる。


――出させない!――


 千勢は亜空間から出切る前にドラゴンを潰す気だ。


 太く低いいななきを上げて抵抗し、その全貌を現そうとする巨体。

 それは新宿で見たものを遥かに越えていた。

 三方から浴びせ続ける白い閃光がそれを追う。


――お、抑えきれないっ!――エルが戦慄わななく。

――諦めちゃダメっ!――アキラが堪える。


 すると、千勢の放つ光線の輝度が唸るように増した。

 急激に上がる熱量。

 それは一気にドラゴンを燃え上がらせると火達磨にした。

 そして、亜空間から抜け出す巨体を轟音と共に爆発させた。

 バラバラに砕け散り煙を上げて落下する炎の塊。


「やった!」


 目の前を落ちてゆくその炎を嫌って、僕も高度を取る。


――いや、まだよ――


 上空で見下ろす千勢が呟いた。


 すると、僕らの後方下へ燃えながら落ちてゆく塊が青白い光を放った。

 それは三つに再集結すると、新たな思念体ドラゴンへと姿を変えてゆく。


「えっ!?」


 分裂したとはいえ、一体の大きさは十数メートルを超えている。


「「「やはり!」」」


 それを千勢たちは予想していたかのようだった。


 にび色の煌めき。

 それらは左旋回すると斜線に編隊を組んだ。

 そして上昇を始めると、その速度を急激に早めた。

 大きくループしてゆくそれは、僕らの頭上上空を回る。

 間違いなく奴等は三人を狙っていた。


――先頭、ワタシいきますっ!――


 エルの声に、三人は横一線に並んで迎撃態勢を取った。

 斜め上空から真っすぐ突進してくるドラゴンの編隊。

 右下がりに斜列を組む先頭が第一波だ。

 瞬く間にそれは、エルとの交戦地点エンゲージ・ポイントに突入した。


 エルが仕掛ける。


思念壊光線コラプス・レイ!!」


 至近距離で放たれる閃光。

 が、ドラゴンを直撃した白光は、鏡で反射するように退けられた。


「は、跳ね返した!?」


 僕が驚く以上に三人が動揺する。


――そんなっ!――

――属性変換!――

――金属メタル属性!――


 猛進するドラゴン。

 それを紙一重で躱すエル。

 襲い掛かる第二、第三波を千勢とアキラも躱す。


――手慣れてるっ!――

――どうするっ!?――

――このままだとマズイですっ!――


 高速で駆け抜け次々と急旋回するドラゴン。

 瞬く間に制空権を抑える彼らは、上空から火炎球を吐き出し落とす。


――上からっ!――

――何っ!?――

――来たっ!――


 それを躱すしか手立ての無い三人。

 三体のドラゴンはループ間隔を均等にすると、絶え間ない攻撃を繰り返した。


――早いっ!――

――ヤバいヤバいヤバいっ!――

――躱し切れないっ!――


 追い詰められてゆく三人。


――また来るっ!――

――どこっ!?――

――危ないっ!――


 思念通話がひび割れる。


――早く――ないと――

――でも――時間を――

――なんとか――がなきゃ――


 正直、僕はパニックに陥った。

 それでも、どうにかしなければと彼女たちに呼び掛ける。


「時間!? 時間が何だ!? どうすればいいっ!?」


 そして、焦る千勢の言葉が無常に響き渡る。


「ハルっ、時間を稼いでっ!」


―― !? ――


 思わず口にした今は亡き仲間の名前。

 一瞬、全員の動きが止まる。

 そして千勢が狙われた。

 彼女はドラゴンに弾き飛ばされ力なく宙を舞った。

 そして、真っ逆さまに新宿の街明かりへと呑まれてゆく。


「千勢っっっ!!」


 僕は無我夢中で彼女を追って受け止めた。


「千勢っ!?」


 全身に浴びた衝撃に強張りながら彼女は唇を噛んだ。

 無事なようだが悔恨の念をありありと滲ませる。


――千勢――


 そんな彼女が痛々しく思えた。

 しかし、見上げる上空では、未だアキラとエルが攻撃を凌いでいる。


「千勢さん、立てる?」

「え、ええ……」


 彼女が頷く。

 僕はそれを確認すると彼女を残し、すぐさま地を蹴るように飛んだ。


「時間を稼げばいいんだなっ!」

「えっ!?」


 僕は加速した。

 一直線にアキラとエルを目指す。


――アキラっ! どのぐらい稼げばいいっ!?――

――えっ!? ナニ!?――

――何か奥の手があるんだろっ!? エルちゃん!?―― 

――ショウさん5秒、5秒っ!――


 エルの叫びが聞こえた時には、僕は二人の間を飛び抜けた。

 ドラゴンは再び編隊を整え頭上から急降下している。

 無数の火炎球が降り注ぎ飛び交う。

 僕は更にスピードを上げ躱す。

 と同時に僕は唱えた。

 呪文の如き言葉を。


思念崩壊火器ファイヤーアームズ!」


 瞬間、僕の腰に据えられたBOXが拳銃《ベレッタM9A5》へと変形する。

 それは体側で開いた僕の両手に吸い込まれた。

 直ぐ目の前に迫るドラゴンの編隊。

 その斜線は横一列となり三体同時に襲い来る。

 僕は両手のベレッタを振り上げると撃ちまくった。

 オートで炸裂する9mmパラベラムの思念崩壊弾コラプス・バレット。 

 中央のドラゴンから左右へ。

 ロールで背面に身を返す。

 軸線をずらし擦れ違いざまに全弾叩き込む。

 被弾するドラゴンから白い光の煙があがった。 

 それは回避する三人の間を高速ハイスピードで落下する。

 が、消滅はしない。――弾数が少ないか!?――

 しかし、ドラゴンが崩れた編隊を持ちなおそうと《《大きく》》旋回した時。

 千勢とアキラ、エルの声が聞えた。


――今よっ!――

――OK!!――




「「「フェイバリット・チェンジ! 雷神天女サンダー・メイデン!!!」」」




 瞬間、彼女たちのボディスーツに光の螺旋が走る。

(0.5秒)

 突然に風をはらみ、天に跳ね上がり舞う三人のカラダ。

(1秒)

 そして、螺旋の亀裂に破裂する七色の瞬き。

 それは彼女たちが

 《《身に纏うもの全て》》を《《帯状に引き裂いて》》

――ぃやぁ~ん♥――

 姿を現した。

――(*♡o♡*)わ~お♡――

(2秒)

 僕の頭上を放物線を描いて交錯する生まれたままの三人の姿。それぞれの裸体を中心に層を成して双方向回転するリボンリングの瞬き。そこに描かれた光の球体。立体魔法陣のように瞬くモザイク模様は、その露わな肢体を僕の視線から遮るよう黒とゴールドに色を変えていった。この間、全3秒。


 ムーンサルトで宙に降り立つ彼女たち。

 黄金線ゴールド・ラインのある黒いバトルスーツ。

 態勢を持ち直し、尚も執拗に迫りくるドラゴンの三機編隊。

――《《ゆるさ》》ないんだからっ!――

 三人は、指先に怒りを込めると必殺の呪文を振り下ろした。




「「「思念崩壊雷電サンダーボルト!!!」」」




 轟に夜空を走る数多の稲光。

 天より下るいかづちが三体の獣を撃ち抜く。

 まさにそれは、怒れる雷神が撃ち放つ神の一撃だった。

 眩い光の中、その存在を奪われるように蒸発するドラゴン

 ゴーグルのディスプレイが白一面の輝きに染まる。


「す、スゲぇ……」


 やがて、空気を焼き焦がした熱風の残り香が、そのなごりに僕を包むと擦り抜けてゆく。次にディスプレイがリアル映像を捉えた時。ゆっくりとかすみは晴れて、静寂の色を取り戻しつつあった。そこにドラゴンの姿は無く、月の夜空に佇む|雷神の如き天女たち三人の姿《いつ見ても素敵なボディライン(*´艸`*)ムフッ♥》があるだけだった。


 しかし、これがほんの始まりに過ぎないことを、僕はまだ気付いてはいなかった。






つづく






次回「無理はしないでね♡」お楽しみに♪(*´艸`*)ムフッ♥

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