モチロンやるんでしょ♡
「だからショウ。アンタも一緒に、戦ってくんない?」
夏の放課後。日差し傾く校舎屋上。ぶっきら棒でぶしつけな伊月アキラの言葉から僕の、いや、この現実の世界が大きく変わり始めた。
「おハルが自分で話すって言うからさ、黙って見てたけど……。ややこしくなるから、あれほど最後の話だけは《《ナシ》》って言ったのに……」
――最後の話? 千勢が別世界の人間ってやつか?――
戸惑う僕を横目に、エルも話の矛先を戻す。
「いいんです。おハルさんは、正直で優しい方なんです。そう。だからショウさんも一緒に戦って下さい」
目の前にいる別世界の千勢ハルと僕の知ってる千勢ハル。そして、彼女の死。簡単には受け入れがたい話に釈然としないものを残しつつも、それを聞いてはいけない気がして僕も話を合わせた。
「戦うって、マインド・アバターとかいう奴と? それにドラゴンと? そんなん、どうやって?」
「ここから先はアタシが……」
「だいじょうぶですか? アキラさん……」
「どういう意味かしら? エルちゃん……」
「おハルさんほど、理路整然と話せる気がシナイ……」
「言ってくれるわね。だったら口で説明するより、百聞は一見にしかずよ!」
――百聞は一見に?――
アキラは僕に向かって2、3歩あゆみ出ると、両足を肩幅に開き、やや斜に構えて正対した。|大きな《胸が強調される(*´艸`*)ムフッ♥》深呼吸。瞑想するかに瞼を閉じる。そして、《《しっか》》と瞳を見開く次の瞬間。彼女は叫んだ。
「エル、いくわよ!」
「えええっ!? アキラさん! エルもするのォ!?」
「ありゃっ!」
拍子抜けするアキラ。
「もぉう、エル! せっかく集中してたのにぃ」
「だってだってええェ……」
「何よ? 何か問題でも?」
「だってアキラさん。変身する時ィ……」
――変身? 今、変身って言ったか?――
「全部が見えるわけじゃないでしょ?」
「えええェ、でもォ……」
――見える? 何が? 何の話だ?――
「この先、緊急時にイチイチ気にしてらんないでしょ? 別に、減るもんでもないし」
「そぉだけどォ……」
――減る? 減ったり増えたりするのか?――
「まぁ、アタシはぁ、ショウとは幼馴染だし、小さい時は一緒にお風呂も入ってたし、いまさら……」
「ズルイ~ッ!」
――い、いっ緒にお風呂? そんなハズカシイ昔の話を――
「あっ、それにぃ~。アタシは自信があるから気にしないけどねぇ~。ま、自信ないんだったら、《《アタシ》》、一人でもいいわよぉ?」
「うううううゥ~ム。《《そこまで言われて引き下がるわけにはイカナイ》》」
――自信? 何だ? 何の自信なんだ?――
「じゃ、どうする?」
「わかっタ。エルもやる! エルだって、形とか、アキラさんほどじゃないけど大きさも」
――形に大きさ? アレか? やはりアレの話をしてるのか?――
「こう見えて、結構イケてるって《《評判なんだから》》ァ!」
――イケてるのか? 評判なのか? 俺はどうすればいいんだ?――
「じゃぁ、エルさん。よろしくて?」
「いつでェも、かかってきなさあぁイ!」
今度はエルが僕に向かって歩み出る。
両足を肩幅に開き、やや斜に構えて二人が正対する。
|大きな《強調される胸(*´艸`*)ムフッ♥》深呼吸。
瞑想するかに瞼を閉じる。
そして同時に、《《しっか》》と瞳を見開く次の瞬間。
二人は叫んだ。
『レッツ! リフトオン!!』
――えっ!? Dream Lift?――
瞬間。二人の輪郭が光のシャワーに変わって弾け飛ぶ。
(0.5秒)
突然に辺りを覆い、鳴り響く電子音の非常ベル。
(1秒)
突如。二人の背後に現れる眩い光体。
それは輝きを引き裂いて姿を現した。
(2秒)
――えっ!? アキラとエルちゃん、が二人ずつ――
宙に抜け出し輝くもう一人の伊月アキラと妃旗エル。まるで亜空間から現れたそれは、僕の目の前にいる伊月アキラと妃旗エル、二人に輪郭を重ねるよう舞い降りた。
(3秒)
そして二人は、両手を胸の前で交差させると再び叫んだ。
『装甲天女!!』
瞬間、彼女たちのセーラー服に光の螺旋が走る。
(3.5秒)
突然に風をはらみ、その場に浮上するカラダ。
(4秒)
そして、螺旋の亀裂に破裂する七色の瞬き。
それは二人が
《《身に纏うもの全て》》を《《帯状に引き裂いて》》
――ぃやぁ~ん♥――
姿を現した。
――(*♡o♡*)わ~お♡――
アキラとエル。僕の目の前にいる生まれたままの二人。それぞれの裸体を中心に層を成して双方向回転するリボンリングの瞬き。そこに描かれる光の球体。まるで立体魔法陣のように瞬くモザイク模様は、その露わな肢体を僕の視線から遮るように色を変えていった。
この間、|全6秒《(*´艸`*)ムフッ♥》。
――どや?――
無言ながらも、両手を腰に据え、自信ありげにドヤ顔を浮かべる伊月アキラ。それとは対照的に、同じポーズを取りながらも恥ずかしいのか、僕と目を合わせない妃端エル。
立体球形魔法陣の光モザイクは、ドミノ倒しのように色を黒く変えると、最後に閃光を放って光の渦を収束させた。そして、そのドミノ一枚一枚が、いま新たな二人のコスチュームとなって再生されている。それは確かに、昨日の新宿で見た黒いボディスーツのようだった。
「へ、へん、変身した……」
予想を超える出来事に腰を抜かしたが、僕の冷静な状況分析力は健在だった。
いずれもベルトやバックル盛りだくさんのミリタリー・テイストなのだが、良く見ると微妙に若干デザインが違う。
(1秒)
ざっくり言うと、アキラのはチョーカーにホルターネックの穴あきブラトップ。胸元に空いた大きな穴が、彼女の|胸の谷間《(*´艸`*)ムフッ♥》を強調して止まない。ボトムはブルマー(?)パンツにニーハイブーツ。あの切れ込みは彼女の足の長さを生かした選択と言えよう。
(2秒)
一方、エルちゃんは同じくチョーカーにショルダー無しブラトップ。露わになった華奢な両肩と肩甲骨のハーモニーが、反って艶めかしいイメージを醸し出す。ボトムはプリーツの|超ミニスカート《(*´艸`*)ムフッ♥》とニーハイソックスからのハイカット・ヒールブーツ。全く持って彼女らしい。
――あの中は一体全体どうなっているのか?――
などと思わず考えたくもなる。
(3秒)
そんな二人に見惚れるばかりの僕。その様子を見てか、千勢が呟いた。
「私も、変身しようかな……」
――えっ!? 千勢さんもぉっ!?――
「チョ、チョット、心の準備が……」
見たい気持ちと見てはいけない気持ちがせめぎ合う。
「装甲天女!」
――えっ!? いきなりっ!!――
――ぃやぁ~ん♥――
――(*♡o♡*)わ~お♡――
*自主規制:皆さん御自由に御想像下さい♡
釘付けのまま、暫く放心状態の僕。
「・ ・ ・ ・ … … …… 」
間もなく現実に帰還する僕。
――いかんいかんいかんいかんいかんいかん、イカン!!――
千勢さんはと言うと、チョーカーにオーソドックスなツーショルダーのブラトップ。
――|可愛い♡《(*´艸`*)ムフッ♥》――
やわらかな太腿を強調するように締め付けるホットパンツ。
――|可愛い♡《(*´艸`*)ムフッ♥》――
彼女の膝下の長さを際立たせるニーブーツ。
――|可愛い♡《(*´艸`*)ムフッ♥》――
そして何より、そこかしこに零れる白い肌が、黒いスーツによって効果的に引き立てられている。何はともあれ、この黄金比にバランスのとれた女神は、この世のモノとは思えない。ただただ溜息ばかりが漏れてくる。
「ショウ君、あんまり見ないで……」
そう言って頬を赤くし、また恥じらう所が堪らない(*´艸`*)ポッ♥。
――ゲフンゲフン――
皆、グローブ、エルボー、ウェストベルト、ニーパッドにレガースのプロテクター。大小、長短織り交ぜてだが、かる~く鎧で身を固めたような出で立ちだ。頭の上には大ぶりのゴーグルを載せている。
こうして、アーマー・メイデンとか言う、一様にセクシーで可愛く美しい戦う乙女が出そろったわけだ。
――はぁ〜――
が、あまりの興奮に脱力した僕は、その場に正座し、暫し空を見上げた。
――ああ神よ、なんと貴方はサービス精神、いや、罪深いのか――
♥
――ショウ君?――
――ショウ?――
――ショウさん?――
僕は神に祈りをささげた後。瞼を閉じ、胡座に足を崩して項垂れた。それは、昨日から今日ここまでの出来事。彼女たちの話。それを頭の中で冷静に整理する為でもあった。
「ショウ君……、大丈夫?」
その千勢の声に、ようやく顔を上げ重い瞼を開く僕。すると目の前には、はち切れんばかりの青春を詰め込んだ三人の柔らかな太腿があった。
――(♡ ¡ ♡)わ~お♡――鼻血が伝う感触――
(1秒)
その絶対領域攻撃を躱すように僕は視線を上げる。するとそこにも、はち切れんばかりの青春を詰め込んだ三つの胸の谷間(もはや三大渓谷と言っても過言ではないだろう)があった。
――(♡ ¡ ♡)わ~お♡――更に鼻血が伝う感触――
(2秒)
このままでは体が持たない。そう無意識に判断した僕の視線は更に上がる。しかし、そこには中央に千勢ハル、右に伊月アキラ、左に妃端エルの心配顔が、僕を覗き込むように最接近至近距離で取り囲んでいた。
――(♡ ¡¡ ♡)い、いつの間に?――吹き出すかに鼻血が伝う感触――
(3秒)
僕は5mほど後ずさった。
「チョット、チョットぉ。逃げる事ないじゃない?」
不本意な表情のアキラ。
「いや、近い近い近い!」
「ヤッパ、驚きますよね?」
エルちゃんの正常な言葉。
「ショウ君、大丈夫?」
やはり千勢ハルに限る。
「大丈夫大丈夫。いや、むしろ、疑ってスミマセンでしたっ!」
そして、僕は話を戻した。
「なんていうか、その……。でもアレ? 千勢さん。花薗神社で黒いスーツから私服に戻った時。あんな素敵な、いや、派手なパフォーマンスは無かったよね?」
「あっ、元に戻る時は、そのまま、ふつうに、なの……」
「そ、そうなんだ……」
――そこまで神も甘くは無いのか(悪い顔)――
そんなどうでもイイ事を訪ねた僕にアキラが突っ込む。
「ナニ期待してたのよ?」
「えっ!? いや、別に……、そう! それより、一緒に戦うってことは、僕も同じように変身するってこと?」
三人が顔を見合わせる。代表するアキラ。
「まあ、そう言うことに、なるわね……」
「そう、ですか……」
「まさかアンタ。アタシたち三人の見といて、恥ずかしいとか言うんじゃないでしょうね?」
「えっ!? いやいやいやいや……、男の子ですよ、僕わぁ、ハハハ……」
――こんなことなら、もっと体を鍛え上げておけばよかった――
「そうじゃなくて、さっき――リフトオン――って、ことは【Dream Lift】?」
「そうよ」
――なんだ? その当然のような言い方は(不服顔)?――
「ハハ……、【Dream Lift】って、そんなことまで出来るんだ?」
そんな問らしい問にもなっていない質問にエルが答えてくれた。
「はい、その通りです! じゃ、ここからはワタクシが! 実はこれ、私たちの思念はDVRG【Dream Lift】から、おハルさんの世界の【MVRルーター基地】を経由、ブーストした上で分身体として現実世界にフィードバックされているのです!」
「例の、マインド・アバターか……」
「はい。先刻、おハルさんが言っていたようにDVRG【Dream Lift】には、分身体を他の次元世界へ送るまでの性能はありません。
ただ、この世界のDVRG【Dream Lift】と平行世界のMVRG【Mind Lift】。二種類のガジェットを通して膨大な夢や思念が互いの世界に干渉している今、また別世界の【MVRルーター基地】ともリンクが可能となっています」
「別世界とリンク……」
「はい。普通に生活している分には気づきませんが、私たちの暮らすこの世界も、既に平行世界の【Mind Lift】に侵食され、次元と次元との間に回線が引かれてしまったと思っていただければわかりやすいかと」
「で、その回線を通して、【Mind Lift】だったり、【MVRルーター基地】から増幅された思念、つまりはドラゴンが送られてきたり、空を飛ぶだとか変身だとか、魔法みたいなことが具現化されているわけか?」
「その通り! ショウさん呑み込みが早い!」
――変身か……。MVR、恐るべし♡――
「そして、ワタクシとアキラさんの場合。その分身体をマインド・アーマー、つまり鎧として身に纏う事で不可能を可能にしています。実際、こちらの世界で分身体が物理的実体を持つのに、自身の体の方が都合良かったというのもありますが」
「もう一つ。【Dream Lift】で――LiftOn――した時。寝てたわけじゃないよな? アレって夢を見てる時に使うモンだろ?」
「それもエルちゃんが、お答えしましょう! 私たちの夢のトリガーは、脳のドーパミン神経系にあると言われています。だから、ドーパミンニューロンを刺激さえすれば、睡眠時の夢見状態と酷似した脳の状況を作り出すことが出来ます。それを【Dream Lift】が感知し、私たちの夢である望みを叶えてくれるのです」
「ドーパミンなんとかを、刺激ねぇ……?」
「色々と方法はあるんですけどォ、一番手っ取り早いのはァ、好きな人の事を思う事ですっ(言っちゃった)♡」
「えっ!? 好きな、ひと?」
一瞬。千勢が気になる。
「はい。ショウさんも、好きな人の為に何かをしてあげたいって思うでしょ?」
「ま、まあ……」
一瞬。千勢に視線がゆく。
「そしたら、その人が幸せになってェ、ショウさんも幸せな気持ちになる。でしょ?」
「そ、そう、ね……」
「そう! その状態こそが夢見状態と酷似した脳の状況を作り出すのですっ! だから、ある程度集中力というか、精神統一が必要ですけど……。
コツとしては、――レッツ!――って叫んだ後。心の底から、その人のこと、為を思って考えるの。で、上手くいけば――リフトオン――ですよ♪」
――なるほどぉ。二人が変身する直前、目を閉じていたのはそれか――
「あ、あと、もうひとつ」
そう言った所で、突然アキラが切れた。
「あああ~、もぉ~めんどくさいっ! ショウ! アンタさっきからグチャグチャ言ってるけど、一緒に戦うの? 戦わないの? アタしゃ、それが聞きたいのよっ!」
「い、いや、戦うにしても、色々と……」
「ンなもん、実際に戦ってみれば分かるわよ! 百聞は一見に如かずよ! 実践あるのみっ!!」
――ンな、乱暴な――
「それにっ! アンタ、我が校きっての美少女ユニット、三大天女の全裸姿見たんだから、イヤだなんて言ったらアタシが殺すっ!!」
――全裸とは言っても全てではナイ、肝心な所は――
「何黙ってんのよ? やるの? やらないの? いえ、モチロン《《やるんでしょっ》》!?」
「は、はい、戦います……」
こうしてアキラに無理やり、いや、千勢の為に僕は一緒に戦うことを決めた。あの千勢が流した涙。あの彼女の泣き顔が頭から離れなかった。僕は彼女を笑顔にしたい。この時の僕の頭には、それしか無かった。
つづく
次回「期待しちゃうぞ♡」お楽しみに♪(*´艸`*)ムフッ♥