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=2話=

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 神楽は俺を軽々と引き起こすと、制服の雪――ならぬ埃をパタパタとはらい始めた。

 俺が立ち上がっても、なおも俺を見下ろす形となる長身の神楽。20センチの差はでかく、なかなかに俺の劣等感を刺激する。俺も17になったらこうなれるかな?

 はっ。

 自分の父親の身長を思い出したら鼻で笑えた。

 王子様のごとく――幼児のごとくではないことを間違えてはいけない。そこは、王子様のごとく、ただ手を上げて神楽に制服をはたいてもらっていた時、少し離れた窓際で交わされていた2人の女子の会話が耳に入った。

「……からかな、ミチルちゃん、最近女の子らしくなったよね」

 ふーん。おんなじ名前でも女らしくなれるのもいるんだな。ドンマイ、山猿。

「わかるうー。香坂さん、急に綺麗になったよね。なんか輝いている?」

「ちょっと前まで性別超越しちゃってたのにねえ」

 二人の会話は神楽にも聞こえているらしく、俺たちはなんとなく顔を見合わせる形となった。

 香坂ミチルったら、……あの山猿のことだよな?

「おいおい、女らしくなったっていったか、あいつら、今。そんならさっきそこで蹴り倒されてた俺の立場は?」

 神楽は俺の悲痛な声に思案する表情を浮かべる。

「いや、実は俺もさっき、香坂さんおしとやかになったなって思った」

「はあああ?」

 神楽は俺のスクールバッグを拾いあげながら、軽く頷く。

(つどい)を足蹴にする瞬間を遠くから目撃したけど、ちゃんとスカート押さえてた。そもそも少し前の香坂さんなら、蹴り倒した後でその上を踏みつけていったと思うよ」

「……確かに」

 ミチルと知り合って間もない神楽の鑑識眼を賛美したいところだが、要は誰が見ても野蛮な奴ということだ。

「やっぱ天下(あまもと)くん?」

 本人たちは声を潜めて話しているつもりらしいけど、ここの廊下の音の伝導率がいいのか、彼女らの地声がでかいのか、それとも俺自身の名前があげられたせいか、二人の内緒話らしいものが耳に届く。

「ううん。かなちゃんの話だと背高い年上っぽい?」

「じゃあ、神楽くん!?」

「いやいや、神楽くんは集ちゃん一筋だからダメっしょ」

 言って笑いあう二人。

 ……いやいや。

 自分たちの名が出てきたので、これ幸いと何の話か聞こうと二人の方へ体を向けたその時――。

「おまえら!もう予鈴なってるぞ!さっさと教室へ入って先生様をお迎えする用意をしとかんかい!」

 背後から地響きのような野太い声が聞こえた。

 振り返ると隣のクラス担任の山本が、レスリングで鍛えたという俺の2倍以上はある丸太のような太い腕にプリントを抱えて立っていた。

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