その3
ボクが生きるためにはまず
仕事をしなければならない。
うん、当たり前だ。
でもボクはできるだけ楽をしたい。
汗水なんか垂らしたくはない。
できれば仕事もしたくない。
もちろん、汗水垂らして働く人を
バカにしているのではない。
とにかくボクは楽をしたいのだ。
時給が良くて楽そうなバイトを探す。
ボクは部屋で1人、
バイトの情報誌をめくる。
なかなか見つからない。
この世界にはたくさんの仕事がある。
トイレをすれば水で流す。
その水は誰かが流している。
そのトイレは誰かが作っている。
この工程から誰かが離脱をすれば、
そこに穴が空く。
その穴をまた誰かが埋めなければならない。
誰も埋めなければ自分で埋めなければならない。
自分で穴を埋めるのは楽じゃない。
つまり、
誰かが世の中の穴を埋めるから楽をできるのだ。
誰かがいるから楽をできるのだ。
ボクも世の中の穴を
埋めるかもしれないし、
埋めないかもしれない。
穴を埋める仕事。
埋めない仕事。
穴を新たに作る仕事。
空けた穴を埋める仕事。
穴を埋めているようにみえる仕事。
これだけ細分化された世の中で何が正しいということはない。
ボクは小さな古本屋のバイトに決まった。
今はまだ、ボクを必要としてくれるところにしか仕事は無い。