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その19
梅雨。
じめじめ。
むしむし。
ボクは中村とサキを連れて、バッティングセンターで知り合った風岡さんのお好み焼き屋に来た。名刺に描かれていた地図は簡単なものだったが、十分に機能した。
店構えは素晴らしいとはとても言えなかった。プレハブを連想させるものだった。
「まずそうな店構えだな」
「まあまあそう言わずに」
「そうよ。店構えなんてどうでも良いじゃない。それよりその人元プロ野球選手なんでしょ?楽しみ」
「いやでもな、その店の味と言うものは店構えで決まるものなんだ。それに店の名前も大事なんだぜん。この店の名前を見てみろ。『風岡風』だぜん。センスがない。この店絶対まずいぜ」
「でも、私は好きよ。『風岡風』見た目が良いじゃない」
「見た目だけだぜん。これじゃギャグだぜん。ギャグ。そういえばその人関西人らしいな」
「まあとにかく入ろうよ」
「絶対まずいぜ」
ボクタチは店に入った。