その18
ボクの隣に住んでいる人が亡くなったらしい。正直、ほとんど面識はない。引っ越したその日にあいさつをしたきり、一度も見なかった。このアパートに住む人はほとんどが1人暮らしだ。彼もそうだった。年齢は20代後半くらい。少し暗い印象はあったが、だからと言ってうまく社会に適応できないという感じでもなかった。ごく普通の20代後半くらい、という感じだった。
どうして死んでしまったのかはよくわからないが、交通事故だという噂だ。噂というものは本当に怖い。本当にこの噂がどこから来たものかわからないからだ。
親族だと思われる人達が、彼のだった部屋に数日間出入りしていた。ボクは隣が騒がしい数日間考え込んでいた。
隣の人が・偶然・死ぬ。
偶然。
確率。
運。
神の仕業。
神の気紛れ。
選出。
1番。
2番。
3番の彼。
そこで神は手を止める。
彼は選ばれる。
そして偶然死ぬ。
交通事故。
4番にはボク。
もし神が4番で手を止めていたら。
ボクは偶然死ぬ。
ボクは何だか死ぬ順番を待っているみたいな気がした。それが人生なのではないだろかと。
人は100%死ぬ。もし例外で死なない人がいるのなら別だ。しかし、今のところいない。例外なく死ぬ。
行列のできる死。
神の気紛れサラダ。
ボクはサラダ。
そんな思考も隣の騒がしさが薄まるにつれて薄まった。