その13
中村が立ち読みをしている。ボクはコンビニの前でそれを待つ。近頃はバイト終わりに、中村とコンビニに立ち寄るのが日課となっている。
今日は月曜日。
中村は週刊少年ジャンプを丁寧に最初から最後まで読む。そんなに丁寧にジャンプを読む人間は中村以外に知らない。とにかく買い物を済ませたボクはそれを待つことになる。
ボクは中村とサキのことをずっと考えていた。
セックスフレンド
今日は曇り。
それでも蒸し暑さを感じる。夏が近づいていることを感じる。空を見上げても星は見えない。
灰色の空。
視線を落とす。
オレンジ色の街灯。
汚れた白のエアフォース。
誰かのゴミ。
駐車場の白線。
中村が出てきた。
「今週のジャンプは熱いぜん」
「どうでもいいよ」
「お前はダメだ。漫画の良さがわからないなんてな」
中村はボクの隣に座り、タバコに火をつけた。ボクと中村はしばらくどこかを見つめる。
「なぁ」ボクは中村に切り出した。
「お前はサキとセックスフレンドなのか?」
ボクは自分でも思っていた以上にストレートに質問した。
「はぁ?」
「だからセックスフレンドなのか?」
「だったら何だぜん?」
「別に。サキがそう教えてくれたから、聞いてみただけだよ」
「あいつは本当におしゃべりな奴だ。そうだがまぁセフレって言うのは聞こえが悪い。まぁ体の関係が時折ある友達だ」
「英訳したらセックスフレンドじゃないか」
「英訳とは何でも聞こえが悪いものなんだよ」
「うーん」
「お前、サキのこと好きなのか?」
「好きじゃない。でも気になっていたんだ。だって当たり前だろう?この地で知り合いの女の子はサキしかいない。それでそこそこカワイイんだから、サキに惹かれるのは当たり前だろ?男としてな」
「そらそうだぜん」
「でメシにサキから誘われたんだから、こっちだってそれなりにその気になってたんだ。そこでだ。セックスフレンドって聞かされたんだ。衝撃的という意味でショックだったよ」
「でもサキと俺は付き合ってないぜ。だからお前がサキのことを好きになったっていいんだぜん。」
「うーん。もうそういう問題でもないんだなぁ。別に俺だっていいんだよ。お前とサキがセックスフレンドでだって。ただまぁ何と言うか、それを知ったからには何だか居心地が悪いと言うか。まぁはっきり言ってもらえてよかったよ。お前とサキはセックスフレンド。俺とお前は友達。俺とサキも友達。関係性がはっきりしてよかったよ」
「だからまぁセフレではないんだけどなぁ。そういう関係が時としてあったというか・・・だからサキと付き合えよ」
「いやだからもういいんだよ。別に好きだったわけじゃないし。女として意識しそうだったってだけだから」
「そうか。まぁそれなら機会があれば女を紹介してやるよ。」
「そうか。ありがとう」
「でもな、これだけは言っておくぜん」
「何?」
「サキとセフレの関係になるのはダメだぞ。付き合うのならいいけどな」
「?お、おう」