その12
明日ご飯食べ行こっ
「こんなところで良いの?」
「私マック好きなの」
サキとボクはマクドナルドにいる。ボクはビッグマックセット。ドリンクはコーラー。サキはチーズバーガーのハッピーセットと単品でチーズバーガー。ドリンクはジンジャエール。
サキはセットに付いてきたおもちゃをいじっている。
「チーズバーガー好きなの?」
「そうよ。それとおもちゃもね」
サキはボクにおもちゃを渡した。まるでボクが触りたがっているかのように。
「これは、その、何なのかな?」
「おもちゃよ。」
「何に使うのかな?」
「玩具にシヨウモクテキってあるの?おもちゃはおもちゃよ」
サキはボクからおもちゃをとりあげた。まるでいつまでもおもちゃを手放さない子どもの母親のように。
黙々とサキは食べていた。
「ご飯を食べるときは静かなんだね」
「そうよ。私ご飯を食べてるときはあまり話さないの。ご飯に集中したいのよ。O型だからなのかな。とにかくご飯はご飯を食べる時間。ご飯に集中」
「なるほど」
ボクも黙々と食べた。
ボクよりも早くサキが食べ終わった。
「普段何してるの?」
「え?」
「だって学校に行ってないんでしょ?バイト以外は何してるの?」
「うーん。何もしてないかな。まぁこうやって友達とご飯を食べたりかな」
「楽しい?」
「うーん。楽しい時もあれば空しくなる時もある。例えば友達が大学行っているのに俺は家にいる時とか」
「ふ−ん。何かしないの?」
「何かはしたい。したいけどよくわからない。」
「ふーん。まぁ良いんじゃない?こうやって人と会ってるんだから。人と会うって大事よ。うん。大事。」
「そういうものかな」
「そんなことよりさ、ナカッチの話し方って変よね」
「どういうところが?」
「どういうところって語尾に決まってんじゃん。『だぜん』よ。だぜん。」
「ああ、そういえば『だぜん』って言ってるな、あいつ」
「一回言ってやってよ。さすがに私もそこを突くのは恐い。気にしてたら申し訳ないし。そういうのは男の友達が言ってやりなよ」
「うーん。ボクはそんなに気にしてないからなぁ。そういえばさぁ、サキと中村ってゼミが一緒なんだっけ?」
「語学よ。語学のクラスの飲み会で仲良くなったの。で、今はセフレよ。飲み会終わりでヤっちゃったの」
「ふぇ?」
「セックスフレンドよ」
ぱおーん
「うーん、なるほど」
ボクは何だか今日一日の会話がどうでもよくなった。
店内の雑音が大きくなった。