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炎の洞窟

「ふっ……暑いぜ」

「……なんであたしまで巻き込まれなきゃいけないわけ?」

 現在課題の『魔人のなみだ』を提出するため『試練の洞窟』探索中。

「そんなのきまってんだろ」

「なによ?」

「ハァ……これだから素人は」

「だからなんなのよ」

 おぉっと、下級魔法でもあなたの魔力は桁違いに多いのですから。

 加減無しのファイアボール(普通はサッカーボールくらいの大きさ)が現在メラゾー〇(ド〇クエ参照)並みの巨大さを誇ってる。

 ……ちなみに何度も言うが、こういう言葉を知っているのは、“俺から見ての異世界”を、ツンツンから教えてもらってるからだ。

 ふっ、もう今の流行語が『~ッス』なのは常識だ! ……身近にそんな語尾のやつがいた気がしたが、気にしない。

「しゃーねぇな、じゃあヒント。『フィンは意外と寂しがり屋』」

「わかった、もうわかったから

 刑を執行してもいいわよね?」

「まぁ待て、冗談はギリギリのラインを越えないから冗談なんだ」

 おっ、今日の格言だ。


 ~冗談はギリギリのラインを越えないから冗談なんだ~


 byフィンラル=ダルバロス

「ふざけてんの」

 ボムッ

「ウグゥ……ッ!? スンマセンッした! 自分調子こいてました!」

 ボムッていいましたよ。死ぬ、普通の音じゃないね、コレ。

 だが、ツンツン(カミサカ)が次の一歩を踏んだ瞬間にカチッと音がなり、目の前の暗闇から一本の矢がツンツンを狙って飛来する。

 俺はそれを、あたかも普通のように肩を引っ張って避けさせる。

 ツンツンの頭があったところを切り裂くように、矢は過ぎていった。

「なにあたしの肩引っ張ってんのよ!」

 ドゴムッ

「ウグゥ!? ってちょっとまって! 今のは不可抗力でしょ!?」

 俺は殴られた部分、脇腹を押さえながら抗議する!

「あんな矢あたしの随時放ってるエアシャフトの前には当たらないわ」

 エアシャフト、中級魔法の一種で風の属性をもつ。効果は自分の体に風の鎧を纏ってると考えてもらって構わない。

 攻撃が当たらないって良いよね……。


 ちなみに、俺はツンツンの魔力(マナ)で編み出された札を剣の柄に付けている。この札は味方識別(マーキング)といって、持っている人を対象外にしたりすることができる必需品だ。

 例としてあげるなら、戦争中にツンツンが戦場丸々焼き尽くす火の玉を放つとしよう。するとツンツンの味方識別(マーキング)を持つ者だけが当たらない。持っていないやつだけが丸焦げになるのだ。

 しかも、札を持つやつはその元々の所有者、ツンツンには居場所もわかり、遠くでもその相手に魔法を放つことが出来る。

 ……逆に言えば恐ろしいことこの上ないシステムだが気にしない。

 剣の柄に付ける理由としては、そこに貼るように作られているからだ。だから他にもカナリア、ミスラ、その他何人かとフロア。

 何故か渡された。……剥がしていいかな?

「……でもさ、それって敵に奪われたら危なくない?」

 俺の視線を追って、ツンツンは質問する。つか思考を読まんでくれ。

 つまり、その札さえ持っていればその魔法使いを楽に倒せるということ。例え相手が魔法使いで一番強い相手でもそれさえ持っとけば魔法は効かんし、逆に当てようとすれば一般人を巻き込むこともできる。なんとも悪魔みてぇな戦法だ。

 だが、俺はそれを普通に答える。

「まあな、その札を渡すってことは、絶対の信頼を交わすって感じだし、今でも求婚の際に用いられんだ」

 俺のとなりで求婚という言葉に恥ずかしがる人一名。

「なに、それが習慣だ。まあこれからも友達っていう友情の現れだし貰っておいて(多分)損はないぞ。それにいまじゃ細工してあって所有者がきちんと札を作れば、俺以外の人にわたっても自動的に効果無くすから大丈夫だ」

「そうなの?」

「当たり前だろ、そんなんで魔術師を無効化できんなら誰も困らん」

 若干まだ赤い顔でそう聞いてくる。思春期真っ盛りの男子諸君! ここに萌えの権化が誕生だぁ!


 スンマセン、ほんと、調子こきました。後悔はしません。可愛いのは事実ですから。

「それはそうと、教科書通りのトラップてんこ盛りだなこれ」

「当たり前でしょ。一応『魔人のなみだ』は卒業の課題にされるんだから、今までの知識フルで働かせないといけないわけだし」

 ちなみに卒業以外では立ち入り禁止です。何故かは知らん。

 次々と飛んでくるトラップに対して、俺は冷や汗をかきながら避ける。

 ツンツンは普通に歩いて真っ向からぶつかりにいくんだが、エアシャフトの前ではどれも効果ナシ、……チッ。

 よくよく思い返せば、めちゃくちゃ高いところから落ちたのに骨一つ折れないコイツは常識外だよな。

 いや、多分コイツの力じゃない。


 魔女、あるいは賢者が手助けした可能性が高そうだ。


 ……まぁ、俺には関係ないな。

「それより、この洞窟どこまで続くの?」

「それは俺もわかんね、つかさっきから行き止まりが多い気がする」

 目の前には行き止まりと誇っているかのように壁が存在する。まあ壁といってもモグラが作ったような洞窟なので、まっ平らな壁ではない。


 ……ん?


「ツンツンちょい待ち」

「? なんかあったの?」

 俺はたち止まり、考えをまとめる。土の壁を触って気付くが、どう見ても真新しい感じだ。

 待て、そもそもなぜこの洞窟は卒業以外立ち入り禁止なんだ? 

 嫌な予感が頭をよぎる――。


「ッ!! ツンツン! さっさとさっきの別れ道まで戻んぞ!!」

「わっ! ち、ちょっと! なんなのよ!!」

 俺は強引にツンツンをお姫様だっこで走る! 魔法発動中なので女の子の感触がないことに悲しさを覚えるが今は気にしない! 本当は心で風の鎧に舌打ちするが。


 ってか……なんか後ろからゴゴゴゴォォォォ! という擬音語がぴったりとあてはまる音が聞こえてくる。

「ツンツン! 後ろになんか――、あれ、ツンツン? カミサカ? カミサカミコトさーん?」

 「あ、あれ…………」

 足は全力、その状態のまま、俺は顔を後ろに向ける。


 うん、なんか、想像通り☆


「「サンドウォームだァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」」


 サンドウォーム

 簡単に言えば、人を食べてしまうミミズです。


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