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守護者

「守護者の力、見せてあげる」


 その言葉が発せられる場所を見ようとする瞬間、目の前の机が砕かれた。

 とっさにカナリアとツンツンを掴みながら後ろに飛ぶ(ミスラは蹴ってぶっ飛ばした)

「……いい反応」

 無表情。髪が足首まであり、魔力をあげる力を持つ服装、ツンツン風に言うなら巫女のような服だ。

 砕かれた机には、鎖が上から刺すように床に突き刺さっていた。

 周りのクラスメイトはギャーギャーと巫女少女がいないほうの扉に走っていく。意外とうるさい。

「誰だてめぇ……ッ!」

「……私はフローリア=アルム。水の守護者を務める者」

 どうして!? なんで守護者様は俺につっかかるの!? ワケワカランシ!

「あの魔法……召還魔法で特殊な鎖を召還させていますね。それも自分の思うがままに動かせるように。気をつけてくださいフィン君! 鎖だと思って鞭のような動きだと思ったら痛い目にあいます!」

「カナリア!? 既にバトルパートは突入したのかよ!」

 酷い! 何が酷いって本人に了承を得ないうちにバトられてるからね!

「……覚悟」

 打ち出されるように、鎖の先端が向かってきた。ってうお!!?

「あぶねッ!?」

 間一髪その鎖を避ける。

「……忠告」

 何が? と言うまえに、次の行動があった。

 背中から重たい衝撃が襲ったからだ。

「ご……ふっ」

 一体、何が?

「意のままに操れるんです、それは、ブーメランのように攻撃が戻ってくるようも!」

 実況って、やっぱりカナリアはのんきな気がする。

 足が床から浮かび、咄嗟に受け身をとりながら横へと移動する。というか何本もの鎖がドンドンドン! と今までいたところを上から刺されているのを見ると寒気がした。

「……戦わないの?」

「あいにくと、敵と認識するのに時間がかかっただけだ。こここらは……いくぞ」

 二本の剣を鞘から抜き出す。赤の魔剣と青の魔剣。ともに友人がつくってくれた業物だ。

 構えをとると同時に、鎖が左右から、いや上からも、まるで棒を振るような、そんなイメージを持たせる軌道で飛んで来る。

 それを、俺は二本の剣を逆手に持ち、上かは白羽取りのように挟んで防ぎ、左右両方からは剣を盾がわりにして防いだ。

「……甘い」

 何本かの鎖が槍のように飛んで来る。それを視界の端で捉え、飛んで来ると感じた瞬間に横にステップする。

 俺がいたところは瞬く間に貫かれた。

 ようやく本調子になってきた!

 ステップして避けた俺を追うように、複数の鎖が横に振り回され、時には先端で貫くような軌道で攻めてくる。

 が、それも当たらなければ意味がない。

 テンポ良くその場で軌道を読み、少しずつ少女に近づく。

 遠くにいるツンツンがゾ〇!? とかさけんでいたが、気にしていられない。少しでも集中を解くことが勝敗を分けてしまう。

 そして、その少女へ攻撃するためのルートが現れた。

 体を前屈みにして攻撃を掻い潜りながら、少女の前に現れる。

「っ……」

 直後、ガッキィィィィィンと金属同士がぶつかる音が辺りに響いた。


 唖然としたのは、むしろ俺だった。


 その時、俺はわざと前から攻撃するように見せかけた。だが、それはフェイントで、瞬時に少女の背後に移動、そのまま振り返らずにバックステップして、剣を脇から出していた。振り返る動作をなくした一つの奇襲攻撃だ。

 これを受けたやつなら、大抵なら前から攻撃が来たと思ったのに、後ろから刺された、と勘違いしてもおかしくない。

 微かに俺を視界に捉え、背後からの攻撃に対応しようとしても、振り返る動作を無くしている俺を見えてはしても、その攻撃を見切れるわけがない。

 少女は言った。守護者の力をみせてやる、と。

 ここへきて、ようやくそれが現実味を帯びてきた。


 そして次に危ないのは俺だ。

 もしその攻撃が防がられたものなら、たとえ一瞬でも背中を相手にみせている状態、つまり無防備。

「……決着」

 放たれる鎖での打撃。蛇のようにくねっていた鎖が、一直線で俺の背中に飛んで来る。


 そして、過ぎ去った。


「あめーよ」

 フローリアは驚きに満ちた表情をしているのだろう。

「青の魔剣は水の属性を併せ持ち、幻影と姿を隠す補助効果がある。対して、赤の魔剣は隠すものを浮き彫らせ、何物をも貫く炎剣を表す」

 カランと、青く輝く双剣の一つが落ちると同時に、彼女の背後から姿を現す。


「これが魔法を使えない者の戦いかただ。覚えとけ守護者」


 炎剣を手加減なしに降り下ろす。

 だが、それが彼女に当たることはなかった。

 俺は空中に浮かんだまま動けず、彼女もその攻撃に対応しようと、振り返る動作の途中で止まっていた。

「やめぬか、愚か者」

 長い髭、ネビリム先生より長い。だが、その目に宿る力は計り知れないほど大きなものだ。

 この学校を統べる長。

 校長、そして賢者の一人。

 守護者は止まった時間の中で、呟いた。この中で口だけでも動かすのがどれだけ大変なのかはわかる。


「……ゼリュス様」


 確かにそう呟いた。

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