二人の出逢い2
空から落ちてくる少女に出会った。彼女は、上手く奇跡的に巨大な木の枝にひっかかったおかげで落下での勢いが削がれ、俺の前でずっこけている。
この街は、冒険者やどこぞの魔法使いが必ずここで色々学び、そして世界にはばたいていく。ベルセルクという有名な街だ。
別名『始まりの街』。
まあ、そんな説明はどうでもいいよな、うん。
確かに、この世界に『異世界』と呼ばれる世界があるのを、証明しようという団体があるのは知っていた。
俺はその一人でもないのだが、てか逆にそんな世界ありわきゃねぇだろオイ、みたいな感じで反対していたんだ。
結果的に、目の前にその『異世界』の人が現れた。というか、あの黒の色に更に黒を塗ったような髪が、非常に俺が好きなタイプなんです。
む? 口調が変わったような?
そして腰まである髪、顔は問題なし、あと……この世界じゃ見れないよう服。
なんだろ? スカートはわかる。なんか、中身が見えそうなくらい短いのが……けしからんけど。
俺は、今日を生きるために、魔法学校に通いながら仕事をしているわけで、街の近くにある森でトレーニングをしていた。
そして、目の前になんの魔法つかったのか知らないが、上から何かが落ちてきて、そこに異世界からきた少女に出逢った。
うん、ワケワカランシ。
「って助けなさいよ!」
「……? ここ異世界じゃないの?」
「第一声がそれ!?」
驚きっ!
少女はスカートについたほこりをほろってこちらを向いた。
「家に返して」
俺に言葉のキャッチボールは無理のようだ。
「と、とりあえず話の順序をつけようか」
「なに? アンタ私の言うこと聞けないの?」
さすがの俺もブチッていい音なりましたよええ、ハハ。
「うっせツンツン、テメェの話をなんで俺がきかにゃならんのだ」
「ハァ? 普通異世界で出会った人は親切に教えてくれるもんじゃないの?」
ねぇコレ殺していい?
しかもこれ、自分で理解して言うっておかしいんじゃないか? え、なに? もしかして慣れてるのか? 日常茶飯事なのか?
「まあいいわ、で? アンタは何が聞きたいの?」
「そうだな……、まずどうやってここに来たのか、テメェは本当に異世界人なのか、これからどうするのか……今はこんくらいだな」
こういう珍しい人を城にでも渡せばお金貰えるかな。
「そうね……、とりあえずどうやって来たのかは知らないわ(マンホールにはまって落ちたなんて言えない)、そして私は異世界人よ、これからはまあ……あ、アンタから色々教えてもらってから決めるわ」
「(なんで落ち込んだんだ今?)まあいいや、とりあえず俺も帰る途中だし、ベルセルクっつぅ街に行ってからにするか」
「あ、ありがと……」
なんかやっと可愛いと思った。まぁ、最低限の手伝いはしてみようか。
そして同時に、話の順序がおかしいのはあまりの出来事に二人ともパニック状態だからなので、テンションがハイになっているのを、二人は知らない(気付かない)。
「へぇ……ここがアンタの家?」
「そうだが……まあ俺のことはウィンてよんでくれ、お前は?」
「神坂美琴よ、年は十七歳、バストは――」
「スト―――――ップ!!」
危ない! この子色んな意味で危ない!
とりあえず荷物を置いて、暖かい飲み物を渡す。
「……、とりあえずこの世界はどんな世界なのかしら?」
飲み物への返事ではないんすか。
そしてなんでこの子こんなに神経図太いんだろ……
「………まあいいや、とりあえずこの世界について、だな?
この世界の名前はオールドセプト。んでこの街はベルセルクって名前で、やがては大魔術師とか名をはせる騎士とかも、最初はこの街から始まってんだ。簡単に言えば、戦いを身に付けるためだがな、カミサカの世界じゃ魔法っつうのはみられねぇよな?」
「うん、ない」
………あの団体も、たまには役に立つな。
「……、魔法つぅのは、簡単に言えば手のひらから炎をだすとか、風を生み出すとか、この世界に漂ってる『魔力』(マナ)を操ることでだす力だな」
「マナ?」
「そっ、んで魔法や職業にも色々種類はある。
魔法なら多種多様、覚えきれないほどあるし発動条件も違ってくるから、教科書にのってるような基本だけじゃ戦いにはならない。あ、ちなみに教科書つってもこの世界だからな?」
「わかってるわよそのくらい!」
「ならいいや、まあ魔法つっても、だれでも炎を生み出したりできるわけじゃなく、一人一人に属性があんだよ、火の属性があんなら火しか使えないし、水と雷ならそれしか使えない」
俺の説明が大体終わると、カミサカは顎に手をやって、今の話を整理していた。というか、萌える。
「…………、わかったわ、属性っていうのは何種類あるの?」
「基本的には、火、水、雷、地、風、闇、光かな? そこから色々とマナを合わせて………、例えば水と風で氷を生み出すことができる」
「ふぅーん………、んで武器とかは?」
なんか凄い理解力あるんだけど………え、なにこれ?
「ま、まぁ……武器なら、剣とか単純に魔力を上げる杖、ナックルっていう拳につける武器で戦うやつとか、鞭やら弓やら槍やら、『銃』とか」
「銃?」
「アンタらの世界から来たやつを研究して造られた武器だよ。まあ研究者の中には太古の武器だとか言うやつがいるけど、一番妥当なのは異世界からきたっていうやつだな」
なんかカミサカは急にそこで黙りこんだ。なんかあんのかな?
「………まあいいわ、とりあえず魔法というのは私にも使えるのかしら?」
「調べてみなきゃわからんな……調べるか?」
そんな色んなことを話したあと、俺たちは自分の属性を調べる『神殿』にきていた。
神殿は、光と闇のマナを使えるやつしかいない。
光と闇は未だに不明な部分があり、この神殿にいる人のなかで、自分の属性を調べる魔法、探索魔法の応用らしい。俺はそっち方面ではあまり詳しくないから、そこまでしか言えないが……。
「なんだかドラ〇エみたいね」
「そんな世界観ぶち壊しの発言は良いからさっさと行け」
そして俺たちは、属性を調べる部屋にきた。
周りに柱があり、中央には神聖な水が溜まった池にきていた。
「この……プールかしら? 結構深くない?」
「プール? まあどうでもいいが、これは神聖な水なわけで、入ったところで『濡れることもないし、息が出来ないわけでもない』不思議な水だ」
「ふぅーん………で? このあとはどうすればいいの?」
「水の中に入れば精霊がいるからそいつと話しをすればいい、そしたら精霊が勝手にお前の属性を調べてくれて、自然と告げてくれるはずだ」
「かなり違和感あるけど……この世界じゃ普通なのよね?」
「まあ……普通っちゃ普通だが、お前にとっては普通じゃないんだろ? ほれ、わざわざ金払ったんださっさと見てもらえ」
自腹ですよ、あの糞忌々しい神官め。
すると、ツンツン(カミサカ)は右足を入れて、濡れないことを確認すると、思いっきり水に飛び込んだ――――あ。
俺が反応する前に、水底でゴツンッ! という痛々しい音が聞こえた。なんかすみません。
水の中から床に続く階段からツンツンは歩いてくる。
「ちょっと! 見た目は水だけど水じゃないじゃない!!」
「わ、悪い悪い………、教えんのが遅れた、まあそんなわけで元気だせ」
彼女が言いたいのはこうだ。
潜ろうとしたらすり抜けた、と。
キィー!! と目が若干危ないツンツンの頭にあるたんこぶを俺はさすりながら笑った。ご機嫌とりだが、まあ気にしない。顔が少し紅かった気がしたが気にしない。
ツンツンは再度挑戦とでも言うかのように、階段を降りる。どうやら今回は問題がないようだ。
「…………ふぅ、骨が折れるなこりゃ」
数時間後、ツンツンはなぜかイライラしたような感じで戻ってきた。いやな予感しかこないのは多分、俺の直感だな。絶対まだ根に持ってるよ。
そして、こういう主人公っぽい人に限って――。
「セブンマスターらしいわ、七属性全てを使えるし、魔力量も常人ではありえないほどもってるって」
セブンマスター。基本となる属性全てを扱うことができ、それを扱うものはほとんどいない。属性自体、努力とかでは補えるものではなく、それは才能とかそういうものに関するため、その数はかなり少ない。
「それじゃあ、早速魔法の使い方からご教授お願いしましょうか」
「残念ながら、俺はその全ての属性にあてはまらないからな、魔法を教えんのは無理だ」
「じゃあこれからどうしろってんのよ」
ハァ……今日は怒鳴られることが多いな………。
「大丈夫だ、考えはある」
「なによ?」
なんか凄い目で睨まれた。なんでこんなに不機嫌なんすか?
まあ、いっか。
「俺の魔法学園に来んのはどうだ?」