第一話 冒険者登録する
〈賢者〉、それは聖女、聖者の中から突出した実力を持ち、魔導の道を究めた者に与えられる称号的なジョブである。
〈聖女〉、それは数多の回復系魔法などの神聖魔法を操り人類を守護する役目を持った女性。魔法に関しては神聖魔法だけでなく、攻撃魔法、支援魔法も操る。
ただし、神聖魔法を扱えるのは生娘、つまり処女でなければならない。神聖魔法を操る為の聖気が処女でなければ失われてしまうのだ。
〈聖者〉、それは同じく数多の神聖魔法を操り人類を守護する役目を持つ男性。
その力を維持する為には女性同様に童貞でなければならない。
だが世間一般的にはその事は知られておらず、聖者の素養の1つとして隠し要素のようなものになっていた。
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この俺、ヴァイス・シュナイダーは顔面偏差値的に上の中くらいのレベルの18歳。背は174センチメートルと大きくもなければ小さくもないが充分にイケメンと言われているだけのことはあると自負している。
そんな俺は神聖法魔教会付属高等学校にて歴代最高点となる全教科100点を叩き出して卒業したエリートだ。教科の中には神聖魔法の知識、技術だけでなく、攻撃魔法、支援魔法のほか、剣術や体術などの武闘系科目も含まれる。
聖者、聖女を輩出する学校でありながらもその武闘系科目の技術レベルはBランク冒険者でも満点を取る事が難しいとされており、その教科で100点を叩き出した時点でBランク冒険者に並ぶ実力者と言うことになる。
そんな俺は聖者を超えて賢者となり、Sランク冒険者として名声を獲るために卒業式当日に冒険者ギルドに足を運んだ訳だが。
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「…ダーさん、ヴァイス・シュナイダーさん!聞いてますか?」
あぁ、そうだ。俺は今まさに冒険者登録の真っ最中だった。
「ですから、どんな実力者であろうと冒険者登録の最初のランクはGランクと決まっているんです。飛び級とかありませんから。」
小柄でありながら胸の主張が激しい受付嬢がさっきから俺に冒険者登録についての説明をしてくれてはいるのだが。
「だから俺は神聖法魔教会付属高等学校で全教科100点で卒業してきたんだぞ?って事はBランク冒険者に、引けを取らないって事だろ?」
「ですから!どんな実力者であろうと最初はGランクで登録なんです!何度言ったら分かってくれるんですか。」
遂には怒り始めた受付嬢。
そこに体格の良い髭面スキンヘッドのおっさんが近付いてきた。
「さっきから何を騒いでる?」
「あ、ギルドマスター。この方が冒険者登録に来られたんですが、飛び級させろってうるさいんです。」
受付嬢はギルマスと呼ぶ相手に文句を垂れてきた。
「飛び級だ?冒険者登録の最初のランクは必ずGランクって決まりがある。飛び級はさせないぞ?」
「おっさん、ギルドマスターかよ?ならマスター権限でどうにかしてくれよ。俺は神聖法魔教会付属高等学校で全教科100点で卒業してきたんだ。Bランク相当の実力はあるんだよ。」
「授業の成績と実戦では話が違う。神聖法魔教会付属高等学校で全教科100点ってのはかなりのものだが、冒険者登録はGランクからだ。これは絶対の決まりだからな。曲げられないぞ。」
「ギルマス権限でもダメなのかよ。なら早くランクアップさせてくれよ。俺が実戦でも相応の実力を発揮したらいいんだろ?」
「んー。それなら可能だな。よし。1週間以内にGランクの依頼を10件こなして来い。そしたらFランクに上げてやってもいい。」
「本当か?分かった。じゃあ、最初の登録はGランクでもいいや。その代わり最速でSランクまで上げてくれよな。」
俺が言うとギルドマスターと呼ばれる髭面スキンヘッドは大笑いしだした。
「はっはっはっはっはっ。Sランクときたか。知っているか?今世間でSランクと呼ばれる冒険者の数はたった6組だ。冒険者数十万の中でたった6組。それだけSランクってのは厳しく難しいランクなんだ。今から冒険者にならようなヒヨッコが簡単に口にしていいものではないぞ?」
「知ってるよ!厳しい道程だってことはな。でも俺はSランク冒険者になるんだ。そして賢者として名声を獲る。」
「ほうほぅ。Sランクときて次は賢者か。知ってるかも知らんが賢者として冒険者登録された者は過去にも十数人しかおらんぞ。」
「知ってるって。だから賢者になれば名声を手にできる。だろ?」
「間違ってはいないな。だが賢者となると聖者の中でも突出した実力者である必要があるぞ。」
「あぁ。俺は賢者になってSランク冒険者として活動するんだ。」
「面白いガキだな。じゃあ1週間以内にGランクの依頼を10件だ。頑張ってこいよ。」
「あぁ。やってやるよ。」
ギルマスとの話が纏まった。ギルマスは背を見せて去って行った。
よし、やってやるぜ!
早速Gランクの依頼を探しに行こうとすると受付嬢に止められた。
「ちょっとヴァイスさん!冒険者登録のご説明がまだ途中です。ちゃんと聞いて下さい。」
「説明?最初のランクはGランクから、なんだろ?」
「だからそのランクのご説明の途中だったじゃないですか。いいですか。冒険者にはSからGまでのランクがあって、本来はランクアップ試験を合格する事でランクアップしていきます。で、各ランクのご説明ですがGランクは一般人でもなんとか倒せるレベル、同ランクの魔物はビックマウス、ジャイアントマウスなどです。Fランクは戦闘の心得のある者として、同ランクの魔物はゴブリン、スライム、ホーンラビットなど。Eランクは多少腕に自信がある者。同ランクの魔物はオーク、ゴブリンソルジャー、ジャイアントボアなど。Dランクは腕に自信がある者。同ランクの魔物はハイオーク、ホブゴブリン、レッドボアなど。Cランクは村を護る者。同ランクの魔物はゴブリンキング、ジャイアントベア、ジャイアントスネークなど。Bランクは町を護る者。同ランクの魔物はオーガ、ワイバーン、レッドベアなど。Aランクは街を護る者。同ランクの魔物はトロール、サイクロプス、ミノタウロスなど。最後のSランクは国を護る者。同ランクの魔物はドラゴン、オーガキング、フェンリルなどです。ここまではいいですか?」
「あぁ。大丈夫だ。」
「依頼は現ランクより下のものであればどれでも自由に受注できます。現ランクより上は絶対に受け付けません。ボードに貼り出された依頼書をこちらにお持ち頂いて受領されてからでないと達成とはなりませんのでご注意を。で、ランクアップ試験は現ランクの依頼を複数成功させた実績を元に、ギルドからランクアップ試験の打診をさせていただきます。現ランクに居残る事も可能ですが大抵の方はランクアップ試験を受けられます。ランクアップ試験についての詳細は、その時になってからご説明します。いいですか?」
「あぁ。問題ない。」
そう言うと受付嬢は1つのドッグタグを差し出してきた。
「ではこれがGランクの証、鉄製の冒険者証明書になります。必ず依頼を受ける際には身に着けておいて下さい。それと依頼達成の証である討伐証明部位や採取依頼の採取物はこの受付カウンターの隣にある受領カウンターに持ってきて下さい。討伐証明部位を持ってこないと依頼達成とはならないのでご注意下さいね。」
「あぁ。分かった。」
「ではご説明は以上です。くれぐれも身の丈に合った依頼を受注してくださいね。」
そう言って手を振られた。
説明は終わりと言うことらしい。
とにかくまずはGランクの依頼を受注するか。
俺は依頼書が張り出されたボードの前に移動するのだった。




