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日々の出来事  作者: Gerbera


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3/17

窓の外


「もう夏だよね」


 いつか友人に言われた言葉。場所は……どこかの飲食店だったと思う。

 外は夕立がザアザアと降り、ガラス窓を叩いて心地良い音を奏でる。風も吹いていた。


「あ~、暦の上ではってこと?」


 梅雨のこの時期、昼は空を厚い雲が覆い、降っては止んでを繰り返していた。おまけに夜は窓を開けていると寒くてたまらない。そんな時期だった。


 だから、夏とか言われても実感が湧かない。あいにく、梅雨を夏らしさとは考えていない私には、夏を感じる瞬間がなかったのだ。


「ううん。ちゃんと夏だよ」


 少し得意げに笑って、視線を店の外に向ける。

 私もつられて、なんとなく外を見た。


 水の走る大きなガラス窓からは、外はよく見えない。人や車が通っているのは分かっても、その細部までは分からない。輪郭のボヤけたおばけだ。


 そんなつまらないものを見つめながら、やっぱり夏だよ……なんて呟きが聞こえた。


 そんな、思い出なのかどうかも分からない記憶を燻らせていると、セミの声が耳に届く。


「……………………」


 夕方の涼しい、けれど少し湿った風が運んでくる、どこにいるかも分からないセミの声。

 その日一日が楽しかったほどに、どこか寂しく感じる時間だ。


 心地良く、夏を感じた。

 

 あのとき、こんな気持ちで外を眺めていたのだろうか。

 少しだけ惜しいことをしたなと思った。

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