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第74話

 当番を終えたひなを加えて、共に帰る。


 私もひなも紫苑の想い人が気になって仕方がないところだが、結構口の堅い紫苑は結局駅につくまで教えてくれなかった。


 その後はそのまま帰って晩ごはんを食べた。


 そして紫苑にメッセージを送った。


『紫苑、今日は結局何が相談したかったんだっけ』


 私は紫苑の想い人を聞き出そうとするあまりに、本題について話してなかった。不覚……。


『そのことですか…』


 紫苑はすぐに既読をつけ、一言返すもその後の返信は待てど暮らせも来ない。しばらく待っているとようやく返信が来た。


『ぶっちゃけるとその…好きな人って翡翠さんなんです』

(顔を真っ赤にした猫のスタンプ)


 なるほど…紫苑の想い人は翡翠さんだったか…。意外と言えば意外だし、それっぽいっちゃそれっぽい。


『そ、それでなんですけど…あやさんって翡翠さんと仲良いですよね?なんで翡翠さんの好きなタイプとか…それとなく聞けませんか?』


 翡翠さんもそうだったけどなんでやたら私を通して『それとなく』聞かせようとするんだろう。


『直接聞けばいいのに…』

『直接でなんて聞けません!』


 私はテキトーに了承してスマホをベッドに投げた。


 私は紫苑の色恋に興味がないわけではないのだが、紫苑のモジモジしている姿を見ると思い切り背中を押したい気分になる。


 ベッドに投げたスマホが鳴り、新たな通知が入る。


 また紫苑かと思いながらスマホを拾い上げると紫苑ではなく、翡翠さんだった。


 一瞬ひなから来たのかもという淡い希望は打ち砕かれ、少しテンションが下がる。


『で?しおたんの想い人は聞けた?』


 私は『お前だよ』と言いたい気持ちを抑えながらもどう返信していいものかと悩みながらも文字を打つ。


『聞けには聞けましたけど、プライバシーなんで』

『聞きたいならご自分で聞いてください』


 少し素っ気なくも感じるが、私は現在モヤモヤというかイライラしているので紫苑のことを気遣えた分、マシだろう。


 そのあとも教えを請う翡翠さんのメッセージが続いたが、既読無視しておいた。


「…ひな成分が足りない…」


 紫苑の恋路に興味がないわけでも、成功してほしくないわけでもないが、私にはこういった恋愛相談には向いていない。


 何事も適材適所だよな…と思いつつ、スマホの通知を切った。

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