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第55話

 ひなの頬にキスをしているプリクラを眺めながら、電車に揺られる。


 昨日はとても楽しかった。ひなとの水族館に食事、プリクラを撮ってショッピングをして……。


 きっとこれは生涯の宝物になることだろう。


 しかし、そんな幸せも長くは続かない。


 今日はあのアイラさんとの撮影がある。正直記憶から抹消していた存在だったのだが、純恋さんにお願いされては断りづらい。


 アイラさんはなんというか…本能が嫌ってる感じがする。あの目つきとかやたら甘いあの匂いとか大嫌いだ。


 そんなことを考えているうちに電車は目的の駅に着いた。今日は駅まで純恋さんが迎えに来てくれているのでそのままターミナルへと向かう。


「よっす〜!さ、乗って乗って!」


 白いミニバンから顔を出した純恋さんが相変わらず元気な様子でこちらに手を振った。


「いや〜、ごめんね?綾城がアイラのこと苦手に思ってんのは知ってるんだけど、今回は相手が是非!って言うもんで」


 今日の撮影はアイラさんが所属する事務所とのコラボみたいなもんだ。


 もちろんアイラさん以外とも撮影するのだが、相手はアイラさんと私の組み合わせは絶対に入れてほしいみたいだ。

 それに、意外と私とアイラさんの組み合わせは人気がある。こないだ撮ったときもフォロワーさんたちが歓喜しており、こちらは何とも喜びづらいものだ。


「…ま、いいですけど。控室は別にしてくださいね」

「おうとも!今回はこっちのモデルとあっちのモデルでわけてるから」


 こっちのモデル…となると翡翠さんか萌歌さんかな?


「あぁ、そうだ。紫苑は先に控室にいるぞ。なんとな、今回は…紫苑もモデルをやるんだ!」


 純恋さんは話したくて仕方がないという様子で話し出す。


「実は今回、翡翠と萌歌両方出そうと思っていたのだが、翡翠がパスとか言ってきて向こうとこっちで3人ずつの予定が狂ってしまってな。そこで紫苑に頭下げて頼んでみたんだが、なんと了承してくれてな!紫苑は可愛いし、向こうも『いいじゃないか!』って言ってくれて。そりゃ、うちの妹の可愛さは世界一だからな!というわけで今日は紫苑のモデルデビューの日なんだ!紫苑はきっと緊張してるだろうから綾城も気にかけてやってくれ!あ、メイクは変わらず紫苑がやってくれるらしいから心配はするな。紫苑はメイクもモデルもできる素晴らしい自慢の妹だからな」


 純恋さんのシスコン話を半分以上聞き流しながらも、事情を把握した。


 紫苑が一緒に現場にいるなら心強い。申し訳ないが、紫苑を盾にしてアイラさんとは距離を置こう。


「あぁ、ちょうどいいし紫苑がどんな服を着てくれるか話しておこう!紫苑が今回着るのは……」


 私は目的地に着くまで寝ることにした。

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