表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
51/141

第42話

 走り去ってしまったひなを追い、人波をかいくぐっていく。ひなを追いかけているうちに人数も減っていき、近所の公園にたどり着いた。


「はぁ…はぁ……ひな?どうしちゃったの?突然走り出すなんて」

「……」


 ひなは立ち尽くしたまま息をあげていた。せっかくの浴衣も崩れており、足を震わせているのでなれない下駄によって足もつらい状態なのだろう。


「ひな?とりあえず、落ち着いて話そ?」


 ひなを落ち着かせるためにもベンチに座らせて、ひなの顔を覗き込んだ。ひなは暗い顔をしていて唇を固く結んでいる。


「ひな…どうして走って行っちゃったの?」

「…だって、あやちゃんたちが…」

「私たちが?」


 おそらく先ほどの杏子と私の会話を聞いていたのだろう。ただどこまで聞いていたのだろう?『ひなを私のものに…』とか聞かれていたら大分まずい…。


「あ、あやちゃんは杏ちゃんと付き合っちゃったんでしょ?」

「え?」


 私と杏が?付き合っている?


「ど、どうしてそう思ったの?」

「だ、だって…『杏子は私に必要だ~』とか、『好きだ~』とか…言ってたじゃん」


 ひなはどうやら重大な勘違いをしているようだ。私たちの会話を部分的に聞いていたのだろう。ただ、一番聞かれたくないところは聞かれていなかったので不幸中の幸いだろう。


「ひな、私と杏は付き合ってないよ」

「え?で、でも…隠さなくっていいんだよ?」

「いや、本当に違うの」


 ひなは私と杏が付き合ったと思って逃げてしまったのか。なんて可愛らしいんだろう。これはもう私のことを好きということで間違いはないだろう。ならばもう恐れることはない。


「あのね、ひな」

「う、うん…」

「私はねひなの事が好きなの。愛してるの」

「え?」


 本当はひなの誕生日にプレゼント付きで言うつもりだったが、ここで言ってしまおう。


 ひなは目を大きく見開いて驚いているようだ。


「え?でも…」

「杏は私の気持ちを知ってるの。だから協力してもらったり、相談してた」


 ひなはまだ混乱しているようだが私の真剣な瞳を見て、段々と顔が赤くなっている。ひなのそんな可愛らしい表情に思わず笑みがこぼれる。


 ひなの左手を両方の手で包み込み、深呼吸してからひなを改めて見つめなおす。


「ひな、愛してる。好きだよ。私の恋人になってほしい。だから私と付き合ってください」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ