第4話
目の前にはひなよりも少し小さな女の子が立っていた。その人はクラスメイトで名前は覚えていないが見覚えはあった。
「は、はじめまして!私、西口紫苑にしぐちしおんと言います!」
「ん、同じクラスの子だよね?とりま座りなよ」
立ちっぱなしで話し始める西口さんを隣りに誘う。
「あ、あのですね、…実は田代さんにお願いがありまして…」
西口さんは恥ずかしそうに話す。顔を赤くしていたものだからまた告白かと思っていたが、違うようだ。
「…あの!モデルになってくれませんか?!
少しモジモジしていた西口さんだが、何かを決心したように私と目を合わせ、そう言った。
「モデル?デッサンモデルってこと?」
「あ!いえ…あの……ひ、被写体になってくれないかなぁって…」
話を聞くと、彼女の姉は有名なファッションデザイナーのようでクラスの集合写真を見て、専属モデルになって欲しいと頼むように言われたようだ。
正直に言うとあまり写真を撮られる好きではない。それに私は無愛想なほうでモデルには向いていないのではないかと思う。
「あの…服は用意しますし、化粧とかもこちらでさせていただきます…。それに!気に入った服などは差し上げます!」
「ん〜…そこまで言うなら…してみようかな」
しかし、ちょうどひなと少し距離を置きたいと思っていた。それにお金と服も貰えるなら良いかなと思えた。
西口さんはありがとうございます!と何度も頭を下げていた。連絡先だけ交換するとそのまま去っていった。
「…モデルかぁ…」
良い機会、とはいったもののやはり不安はあった。ただのバイトだ、と自分に言い聞かせ、頬を叩く。
「…ひな、まだかなぁ…」