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第113話

 今日は期末考査の最終日。華金というやつだ。


 最終日は得意科目ばかりだったので気楽だった。一方でひなは苦手科目ばかりだったので少し疲れているようだ。


 ここは《《彼女》》である私が労ってあげるべきだろう。


「ひな、おつかれ」

「あ…お疲れ様…」


 ひなは珍しいことに眉をひそめて眉間にシワを作っている。人がいなかったらこの愛しい眉間にキスをしていただろう。


「まぁ…これでもう授業も減っていくと思うと気が楽になるね」


 ひなはパッと顔を上げるとため息をついてそう言った。


 期末考査が終われば再来週にはもう終業式。そしてクリスマス。


 今日という金曜日は多くの学生にとっては一つのゴールのようなもの。1年の終わりであり、区切り。


「いっぱいデートできるね?」

「う、うん!」


 ひなの頭を撫でながら周りに聞こえないようにそっと囁く。


 すると、ひなは嬉しそうに大きく頷いて頭を撫でる私の袖を小さく掴んだ。


 とても、とっても良いところだったのだが、ちょうど担任の先生が教室に入ってきてSHRの始まりを告げた。


 少し先生を恨みつつも、自身の席に座ってやたらと長い先生の話に耳を傾けるわけでもなく、そっとひなの後ろ姿を眺めるに徹した。




 SHRが終わると学生たちは完全に自由になる。


 一段と騒がしい教室の隅で下校の準備をしていると、よく鈴木さんと一緒にいる…や…や…やま、もと?さんが声を掛けてきた。


「ねぇ綾華、今日はもう帰るの?この後、一緒にミヌドなんてどう?」

「パス。帰って寝る」


 そういえば気づかないうちに下の名前呼び捨てになっていた。あまり好きではないけど、これぐらいなら別にいいかな。


「寝るぐらいなら遊ぼーよ!」

「疲れる」

「冷たいですねぇ…」


 後ろから絡みに来る鈴木さんを適当にあしらって下校準備を済ませてひなの元へ向かう。


 ひなは聖母のような笑みで私を出迎え、『行こっか』と言い、私の手をちょびっと掴んで歩き出す。


 最近はひなも学校で手を繋いだりすることに抵抗がなくなってきたようで気軽に接触してくれる。


 その分、私が我慢することも多くなったが、癒やしも増えているので問題はない。


「あやちゃん、帰りにクレープでも食べに行かない?」

「うん、いいね」


 私の指先を逃げっている手を一度解き、深くつなぎ直す。


 ひなとならどんなに疲れていても、どんなに眠くてもだるさは感じない。これが愛というやつなんだろう。

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