表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
102/141

第89話

 美味しいディナーを頂き、ほどよく満腹になったところで店を出る。


 ひなは会計の際、店員に笑顔で『ごちそうさまでした』と言っており、そういう所がまた大好きなのだが、無闇矢鱈と笑顔を振りまくとひなの魅力に気づいた人によって狙われる可能性があるので控えてほしいとも思う。


「そ、それじゃああやちゃん!」


 これからどうするのだろうと思っているとひなは改まった様子で私を正面から見据える。


 デートも終盤で付き合って1ヶ月も経つカップルが残りすることなんてアレしかない。つまりはこれからひなにお持ち帰りされるということなのではないか?


「うん、ひな…大丈夫、心の準備はできてるよ」


 今日、念の為に勝負下着を着てきていて良かった。


 そういえば今日はひながリードするのだと張り切っていた。初めては私が上がいいのだが、ひなが望むのならそれもまた良いだろう。


「心の準備?そ、それよりあやちゃんは他に寄りたいところとかある?」


「いや、ないよ」


 ひなとこれから大人の階段を登るというのに、無駄足は踏みたくはない。


「そっか。なら帰ろっか!」


 ひなは元気よく駅に向かって歩いていく。ひなが今日やたらとリードすることにこだわっていたのもなんだか理解できた。楽しみだもんね。


「あやちゃん…今日はちゃんと…その、リードできてたかな?」


 ひなは私を不安げに見上げる。


 今日は映画を見ておそろいのイヤリングを購入して、素敵なディナーまで用意して。ひなは十分すぎるぐらいに私を喜ばせただろう。


「うん、もちろんだよ。映画もディナーもひなが用意してくれたし、楽しかった」


 私はひなを安心させるために繋いだ手に少し力を込めて気持ちを伝える。


「そ、そっか!なら、良かったよ」


 ひなはカァッと顔を赤くさせてそっぽを向く。


 未だにこうして恥ずかしがっては目をそらしてくる。少しの寂しさはあるが、未だに初々しく私に頬を染めてくれるのはとても嬉しいものだ。


 私たちは電車に乗って家に帰ることにした。











「それじゃあ、またね!」


 ひなは私を家の前まで送ると笑顔で手を振り、別れを告げた。


 どうやら私が望むような結果にはならなかったようだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ