第9話
それからしばらくはお話をしつつ課題を進めていった。
時間も遅くなり、寝る時間。ここからが私にとっての勝負というものだ。
「ひな、今日は一緒に寝ない?」
「え?…あやちゃん、気を使ってくれて嬉しいけどもう大丈夫だよ」
どうやらひなは私が痴漢からの恐怖を拭おうとしてくれていると思っているようだった。もちろんその気持がない訳では無いが、そうではなかった。
「ううん。私が一緒に寝たいだけだよ。だめかな?」
自分でもあざといとは思うが、あえてそう聞いてみた。ひなには効果抜群だったようで、顔を赤くしながらだめじゃないよ、と慌てて言った。
一緒に寝て良いと許可をもらったので、いまだベッドに座ってモジモジとしているひなをそっと押し倒した。一瞬目を丸くして一層顔を赤くしたひなを抱えて改めて寝かすと、私もその横に寝転がる。
「もう!あやちゃん!ドキドキしちゃうじゃん…」
あぁ、ひなはなんてかわいいことを言ってくるんだろう。もはや天然などではなく誘っているのではないかとまで思ってしまうほどだ。
ひなはぷいっと逆側を向き、ゴニョゴニョと文句を言っていた。そんなひなの可愛さについひなを思い切り抱きしめてしまった。
ひなの文句は終わったもののひなの体温がみるみると上がっていくのを感じる。
「ひな、かわいい…」
ひなのあまりの可愛さに思わずそうつぶやく。ひなはなにか言い返そうとしているようだがあー、やうー、など言葉にならず、唸っているばかりだった。
そんなひなを無理やりこちらへと向かせる。ひなは目が合うと、顔を真っ赤にして必死に目をそらそうともがく。
「……あ、あやちゃん!もう寝るよ!お、おやすみ!」
ひなは私の胸に思い切り顔を埋め、寝る体制に入る。私に対してときめいてくれたようだ。
「…うん。ひな、おやすみ」
ひなの耳元でそっと囁き、ひなをそっと抱き直した。