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第79話 視聴者からの支持。



「うぉおおお!!食らえぇえええ!!」




 それからしばらく後、再び大迷宮に戻り探索を行っているエルたちの姿があった。


 だが、大迷宮の最下層を目指す目的であった今までとは異なる。


 これは大迷宮に眠る「魔晶石」を採取するための行動である。


 魔晶石は強力な魔力の結晶であり、特に地脈の要、心臓ともいえるこの大迷宮からは極めて品質の高い魔晶石が発見される。


 これをかき集めて、周囲の中立派に分け与えることによってこちらの味方に引き入れようというのである。エルが大迷宮の探索を行うことで、それなりの魔晶石は大迷宮から集めることはできた……がそれでも辺境伯ルーシアの顔は芳しくはなかった。


これだけでは、貴族……特に大貴族と呼ばれる貴族たちは到底こちらへと引き入れられないだろうというのが彼女たちの考えである。




「元より、諸侯の権力は強いし、彼らの兵士は自分たちの領民だ。負け戦に自分の領民たちの命をかけるわけにはいかない。様子見する中立派が多いのは当然だが、これを引き込むためには一工夫必要になる。これを何とかしなければな……。」




 かなりの量の魔晶石が溜まってきたし、たった一個で都市一つを覆える大型結界を展開できるほど大型は見つかっていないが、それでも複数個使用すれば十分結界を作り上げることは可能だし、それだけの量は十分に発掘されている。


 だが、これだけではやはり弱いし、強かな貴族たちにとっては渡りに船とばかりに奪い取られるだけで軍を動かさないという事もありうる。


 そのためエルは彼女たちと相談して、新たな作戦に出る事にした。




 『え~。どうも。皆さん元気にしてるか?我やで。』




 ピクシーの持っている魔導カメラに写されながら、レイアに抱きかかえられたエルは挨拶を行う。やはり、ここは配信という武器を生かすべき、まずは視聴者の皆の力を借りようということになったのだ。




《お、お久しぶりやん。あの戦い凄かったで~。》


《あんなに凄かったのか……。いや今まで生意気言ってすみません。(丁寧語)》


《ふん!あんなので認めたわけじゃないんだからね!勘違いしないでね!!》


《あれ?ところでユリアちゃんは?》




『それなんだけど……。悲報です。ユリアはあのクソったれな人類至上派に攫われてしまいました……。いや本当にすまん。』




 エルがそれを口にした瞬間、コメント欄は大荒れになる。それはそうだろう。エルにとってもこれは予想外の出来事だし、視聴者にとってもまさに青天の霹靂である。




《は、はぁああああああ!!!?》


《どういうことだよ!!マジふざけんなよ!!!》


《おいこら!今こんなことしてる場合か!!さっさと救いにいけコラ!!!》




 彼らから阿鼻叫喚の叫びが木霊する。さっさと救いに行けというのも至極当然だ。


 だが、彼だけで助けにいけるのならとっくの昔に行っているというものだ。




「皆さん落ち着いてください。今回はそのため、ユリア姉さんを救うために力を貸してもらうために皆さんの力を借りたいと思いまして配信しています。」




『うむ、というわけで、我はこれからユリアを助けにいく。だがそのためにはお前たちの力を借りたい。……一応聞くけど、お前たちよくわからん偉そうな奴らと配信してくれる美少女どっちがいいよ?』




《美少女!!(即時に)》


《女ァ!!(秒速)》


《大層なお題目掲げてるお偉いさんと美少女ならそりゃ決まってるでしょ!!》


《お偉いさんが配信で胸の谷間を見せてくれるか!?否!断じて否!!》


《悪いことしてない美少女が生贄に捧げるのを見過ごすのはめっちゃ許せんよなぁ!!》




 大盛り上がりのコメントを見ながらうーんこいつらホンマにアレだなぁ!!と思いつつも、でもそういう奴らは嫌いじゃないぜ!!とエルは言葉を続ける。




『うーん端的に言ってクズ!!ろくでなしども!!でもそんなお前らは嫌いじゃないぜ!!というわけで我はあの子救出に向かうぜ!!何か竜が美少女を救出するとかテンプレと逆だけどこまけぇことはいいんだよ!!』




《力を貸すぜ爬虫類!!》


《このままレイアちゃんを好き勝手させるかよ!!》


《うぉおおおおお!!レジスタンスや!!》


《持ち上がって参りましたァ!!》


《祭りや祭りや!!》




こうして、視聴者たちもエルたちに力を貸してくれることになったのである。

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