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第71話 対特殊工作妨害。



 戦勝ムードで大騒ぎになっている中、アヴリルは一人その雑踏を離れ、とある場所に来ていた。


 そこは、ガリアに建てられた冒険者ギルドである。


 彼女はそこにいるであろう冒険者ギルドの長、アヤへと会いに来たのだ。


 色々な仕事を行っている彼女はげっそりと痩せこけているが、まあそれも仕方ない。


 ともあれ、アヴリルは彼女に対して頼んでいた情報を聞き出すためにやってきた。




「それで、怪しいメンバーを洗い出すのはどうなりましたか?」




「いや、冒険者なんて怪しいといえば皆怪しいんですが……ともあれ、現在は対冒険者たち用の防諜組織も一応は作り上げました。」




 以前のエルの居住地に入り込んでいるところを見て、冒険者たちの中にこちらと対立する立場のスパイ、破壊工作員が潜り込んでいるのは事実である。その対策のために、怪しげな冒険者たちを徹底的に洗い出し、彼らを取り締まる活動を頼んでいたのである。


(一から冒険者たちの経歴を洗い出さなければいけない彼女たちは悲鳴を上げていたが)


 ともあれ、アヴリルはアヤから怪しげな冒険者たちの情報を入手する。


 それは「経歴が奇麗すぎて返って怪しい」冒険者たちである。田舎から出てきたばかりの冒険者たちでもない限り、わざわざ冒険者なんて危険でヤクザ仕事につくのはそれなりの理由がある。とってつけたような理由だけで後はまっさらな綺麗な経歴(しかも田舎ではない都市出身)など怪しすぎるというのがアヤの考えだ。




 アヤから情報を入手しつつ、彼らがこの街に潜り込んでいて次に何をするのかとアヴリルは考える。


 となると、次は恐らく竜にもっとも近いあの双子を拉致するのだろう。


 あの配信を見ていれば、竜があの二人を大事にしているのはよく分かる。人質にしていうことを聞けと言ってくるのは基本中の基本である。




「後これはいうか迷ったのですが……。彼女たちはとある高貴な血を引いている末裔のようです。恐らく人類至上派は彼女たちを攫って、「神弓ミストルティン」を起動させるのではないかと……。」




 それを聞いて、アヴリルは思わず頭を抱えた。なるほど、竜の弱点であり奴らにとって貴重な存在ならば攫わない方がどうかしている。


 だが、それこそが竜の逆鱗に触れる行為であることは明らかである。戦争では相手の嫌がることを徹底的に行うのが基本中の基本。そうでなければ戦いには勝てない。


 確かにその道理には従っている。しかし奴らは「人類存続」を謳っていながらやっている事はその真逆、人類自体を危機に陥れているにすぎない。


 今、エンシェントドラゴンロードの息子のエルと人類はそれなりに仲良くやっている。このままいけば竜と人類の融和政策も上手くいくかもしれない。


 そうでなくとも、住み分け政策ぐらいは上手くいくだろう。


 だが、人類至上派のやっていることは、それらを全て破壊し、人類全体を危機に陥れていると気づいていないのだ。




「とはいうものの、人間の魔術師で瞬間転移なんて大魔術を使える魔術師はそんなに存在しません。というかそんな魔術師がいれば、真っ先に私が魔力量で探知できますしね。とあれば、攫って拉致するのにも馬車か馬か移動手段が必要になるはず。」




 いかに魔術師である彼女でも、いや、魔術師であるからこそ「大魔術師でなければ転移魔術は使えない」という概念に囚われてしまっているのだ。


 人類至上派がエルダー級の脳を使って、超遠距離からでも瞬間転移できるなどとは、彼女は知るよしもなかった。




「ともあれ、これからこちらもあの双子のガードに回ります。そちらや村長にも街から出さないように馬や馬車などを抑えて、門の警護を厳重にするように伝えてください。このガリアは竜様が作られた石壁に囲まれています。注意さえしておけば、双子を外に連れ去ることはできないでしょう。それさえさせなければこちらの勝利です。」




その彼女の言葉に、アヤはこくりと頷いた。だが、それが一歩遅いことを彼女たちは気づかなかったのである。

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