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第70話 大宴会と蠢く影



 さて、一方、腐敗竜ルトナとの戦いに巻き込むには余りに危険すぎると人間たち、アヴリルやユリア、レイアたちは開拓村ガリアへと避難していた。


 あんなに危険な戦場は流石に大魔術師であるアヴリルですら干渉が難しいのだ。


 ユリアやレイアたち、他にもドワーフたちなどでは被害が拡大するだけである。


 魔導カメラの映像によって腐敗竜ルトナとの闘いを固唾をのんで見守っていた開拓村の皆。


 都市部ならばともかく、この辺境の地にそんな魔道具など持っている者たちは少ない。そのためそれを巡って暴動やら殴り合いが起こりそうになってしまったため、アヴリルが幻影魔術を使って、回線を引いて空中に大規模な画面を投影してエルたちの戦いを映し出していたのだ。


 映像が見える上空の大画面の幻影魔術によるエルたちの戦いを、戦前の街頭TVに群がる観衆以上に我も我も、と群がっていたのだ。


 だが、それもティフォーネの援護を受けてエルが腐敗竜ルトナを殲滅したことによって大歓声が上がる。




「うぉおおおおおおお!!やったあああああ!!」




「すげぇえええ!!あんな力を出せるとは!!流石竜様!!」




「うおおお!!宴会じゃああ!!酒樽を開けろぉおお!!宴会じゃああ!!」




街の中ではエルが腐敗竜を倒したのを見て、大盛り上がりになり、飲めや歌えやの大宴会へと変貌していく。食事処や酒屋でもここがチャンスと言わんばかりに酒や食料を大安売りしていく形にしていく。それにより、もう人間もドワーフも亜人もないどんちゃん騒ぎへと街全体がなりつつある。


これを止められるものは誰もいない。村長ですら真っ先に騒ぎに参加しているのだ。


これは人間やドワーフたちのわだかまりをある程度解くいい機会になるだろう。


……だが、その中でも陰に隠れて蠢いている奴らも存在していたのだ。




「……今こそ絶好のチャンスですな。」




街の大騒ぎを他所に街角に隠れていたフードを被った二人の男は密やかに会話を行っていた。それは、冒険者に紛れ込んだ人類至上派のスパイである。




「然り。あの娘を攫い、時空の門へと放り込み首都へと搬送する。大至急瞬間転移の魔術を行うように『千の顔を持つ月、ヒュドラ』に命じよ。


 あのエルダー級ならば時空転移も瞬間移動も容易い。後は場所とタイミングだけだ。それだけはきちんと行なわなければならぬ。」




「然り。あの女の血さえあれば『神弓ミストルティン』は起動できる。


 そうすれば、一気にこの地への大規模侵攻が行えるだろう。全ては人類という種族の存続のために。」




 あのエルと腐敗竜との戦いを見て、人類至上派の彼らはさらに危機感を高めていた。


 あんなに強大な存在が世界を支配しないのも、人類を支配のもただの気まぐれでしかない。もし彼らが人類を滅ぼすために侵攻を開始したら?


 その時は我々はただ滅ぼされるだけの存在でしかない。絶対にそんなことをさせるわけにはいかない。全ては人類存続のために!!


 そのためにはいかなる外道非道な手段を取ることも厭わない。


 人類存続のため、人類がこの地上を支配するための必要な犠牲である。




「我々の全ては人類のために。」




「応。全ては人類のために。」




それだけを小声で確認すると、フードを目深にかぶった二人は、作戦を実行するために動き出した。あの女、レイアと呼ばれる女を誘拐するために。

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