第66話 腐敗竜との闘い
腐敗竜と対峙しているエルはこれからの戦略について考えていた。ブレスは最後の最後までとっておきたい。重力弾は豆鉄砲過ぎて効果が薄い。
それを考えたエルはとある戦法を取った。
『それなら……これでどうだ!!』
重力魔術で大型の岩を浮かせたエルは、その岩を浮かせたまま重力魔術で調整しながら岩を周囲にブンブンと振り回す。
ヒュンヒュンヒュンと何十回も自分の周囲で岩を回転させたエルは、そのままの勢いでその岩を腐敗竜へと叩きつける。
猛烈な勢いで大気を引き裂きながら凄まじい勢いで叩きつけられた岩は、その勢いで腐敗竜の肉体を大きく粉砕させる。
要は、重力魔術を使ったハンマー投げの応用である。遠心力を利用して投げるハンマーの代わりに岩を使い、それを腐敗竜にたたきつけたのだ。
『ようし!もういっぱぁああつ!!』
重力カタパルト、もといスイングバイによって生まれた遠心力の岩の威力を砲弾代わりに叩きつける。その辺の大砲より遥かに強力な一撃は、腐敗竜の肉体に再度叩きつけられ、その衝撃と破壊力によって、腐敗竜の左腕がぼとり、と地面に落ちる。
『グガァアアアアア!!』
元々、腐敗竜の肉体は文字通りの意味で腐り果てているために非常に柔らかい。
そんな腐敗竜に対抗するためには、やはり質量兵器こそが王道、とドワーフの長老たちと同じ考えに至ったのである。腐食の吐息は確かに石壁すらも腐食させるが、これほど高速で撃ちだされる岩を瞬時に腐食させるほどの力はない。ただでさえ苦しみにのたうち回る腐敗竜は、連続の攻撃によって左腕が落とされた事に怒りを覚えたらしい。
再び口を開けると、今度は病毒の吐息を噴出していく。みるみるうちに周囲の草木が枯れて腐っていくのを見て、エルは新しく会得した呪文を唱える。
『《浄化の風》!』
腐敗竜がまき散らす病気と毒気の吐息を、エルの浄化の風が正面からブチ当たり、毒気を浄化する……とはいかなかった。
元々大地の化身の子供であるエルと風の魔術は相性が良くない。
何とか毒気の勢いを削ぐのだけで精一杯だった。
「やれやれ……。仕方ありませんね。この師匠である私が見せてあげましょうか。本物って奴を。《浄化の風》!!」
その瞬間、猛烈な風が大気をかき乱し、それはまさに嵐のように吹き荒びあらゆる物を吹き飛ばそうという勢いで吹き荒れる。その文字通りの嵐、豪風は腐敗竜のまき散らした毒素を全て拡散し薄れたところを次々と浄化していく。
その力は文字通りケタが違っていた。それでも彼女にとってはまだまだ本気ではないのだろう。
それを行ったのは翼を広げて空中を飛翔している、純白の女性、空帝ティフォーネだ。彼女も可愛い弟子のピンチならば、多少の手出しはOKでしょうという判断らしい。
飛行しながら手にした杖を上空に向けると、一瞬にして空一面が曇り、瞬時に雷鳴が響き渡る。これはティフォーネの魔力で作り上げた雲の中で凄まじい勢いで電気が発生しそれが増幅されているのだ。つまり、雲は彼女が作り上げた増幅器に過ぎない。
そして、次の瞬間、無数の雷撃の雨が腐敗竜周辺へと襲い掛かる。
(当然、エルやその仲間は避けている)
その雷撃の雨を浴びて、腐敗竜は全身を焼かれ悲鳴を上げる。戦いはまだまだこれからである。
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