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第65話 腐敗竜VSエル



 そして、ほかの皆をほとんど避難させている間に、ついに『それ』は姿を現した。


 鱗はほとんどなく、皮膚は爛れ、肉も所々削げ落ち骨までが見えているドラゴンゾンビにも似た腐食の黒で覆われ、凄まじい悪臭を放つ巨大な竜。


 それこそが復活した混沌の力を手にいれたエルダードラゴン、狂える腐敗竜ルトナである。




『ガァアアアアッ!!シュオール!!シュオールゥウウ!!』




 エルの姿を見て完全に正気を失った腐敗竜は、腐った肉汁やら何やらを噴出させながら、猛烈な勢いで森の中を疾駆してエルへと襲い掛かる。


 そして、もはや狂気に陥った彼に、周囲を警戒する注意力などあるはずもない。


 彼の足がある地点を踏んだと思った瞬間、地面の感覚はなくなる。


 つまり、極めて原初的な罠である「落とし穴」である。


 エルの土魔術で大地を操る事によって大型の落とし穴を作り上げ、それをユリアの幻影魔術で表面を覆うというシンプルなやり方だ。


 巨大な竜を落とすほどの落とし穴を掘るのなど、普通に考えるのなら凄まじいマンパワーが必要になるのだが、エルの土魔術を使えば瞬時に作り上げることができる。


 逆に言えば、短時間でできるのはこの程度の小細工でしかなかったということである。




『グァアアアア!!シ、シュ、シュオールうう!!』




 だが、この短時間では巨大な竜が埋もれるだけの巨大な穴を掘ることはできなかった。せいぜい体が半分だけ埋もれる程度である。




『今だ!!《石壁作成》!《重力魔術》!《重力弾》!!』




 その隙を見計らって、エルは重力魔術で腐敗竜を押しつぶしながら、石壁を作成して重力弾を次々と叩き込んでいく。


 だが、重力弾は確かに腐敗竜の肉体を撃ちぬいていくが、腐敗竜の肉体の巨大さからすれば、まさに豆鉄砲でしかない。重力弾が肉体を貫いていくが、ただ貫いていくだけでダメージをほとんど与えていない。




 それを見ながら、腐敗竜は重力に耐えながら、口から猛烈な腐敗の吐息をエルが作り上げた石壁へと噴出していく。今度は腐敗竜の吐息が石壁にかかった瞬間、凄まじい音を立てながら、石で構築されている壁がみるみる溶け落ちていく。


 これは腐敗竜の腐食の力をブレスとして、そのまま吐き出した腐食の吐息だ。


 その力は無機物である石壁や金属鎧ですらこのように溶かし落とす。


 人間がまともに食らった場合は言うまでもあるまい。




《あああああ!石壁が溶け落ちてるぅううう!?》


《マジかぁ!?あんな食らったら城壁も溶け落ちるやん!?》


《城壁都市もあの怪物の前では紙切れ同然ってコト!?》




 だったら……これならどうじゃい!!


 エルは適当な木々をそのまま根っこごと引き抜くと、それをそのまま打撃武器として腐敗竜の脳天に叩きつける。さらに続いてもう一撃!と叩き込むが、それだけでもう腐敗竜に触れた木は腐れ初めていた。




『ぬおおおお!!』




 ハンマーのように叩き込まれた木によって、腐敗竜の肉は削り落されるが、当然何の魔術的防御を行っていない木は真っ二つに砕け落ちる。エルはその折れた木をブン投げながら、傍にある予め用意していた岩を腐敗竜に投げつけていく。


 ただの岩であっても、竜が投げるだけでそれだけで十分な武器になる。


岩が叩きこまれて、腐敗竜の肉がどんどん剥がされていくが、それにも関わらず、腐敗竜は腐食の吐息をまき散らし、飛んでくる岩すらも腐食させていく。それは周囲の自然も同様である。


 何とか落とし穴から這い出てきた腐敗竜は、再びエルと向き合った。



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