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第39話 レッドギャップ2





「さーて、まあ適当にふらふらとさ迷ってみますか!」




 アヴリルは魔術師の杖を手に町の外に出てふらふらと街の外を彷徨う。


 危険極まりない街の外を一人で彷徨うなど自殺行為もいいところだ。彼女の感覚でも、たちまち血走った瞳がこちらを見ているのを感じられる。


 血に飢えたレッドギャップは、たちまち彼女の存在を嗅ぎ取ったらしい。


 妖精に近い彼らは、普通の人間より、膨大な魔力を持っている魔術師の血を求めるのは必然的といえる。


 エルも彼女一人だけで任せるのはさすがに不安を覚えたらしく、念のためスカウトの技術を持っているレイアを護衛につけている。


 さて、ここらへんでいいですか、と彼女は森の中の開けた場所で立ち止まる。


 彼女は、小型のナイフを取り出すと、自分の手のひらを切ってそこから溢れる血を近くの石へと滴り落させる。




「ガァアアアッ!!」




 目の前に滴った極上の血を見て、我慢できなくなったのか、隠れていたレッドギャップたちはたちまち隠れていた森の中から飛び出してくる。


 文字通り、餓えたケダモノの前に極上の餌をぶらさけたのだ。これで我慢できるような彼らではない。




「《集団誘眠》ッ!!」




 その飛び出してきたレッドギャップたちに対して、アヴリルは誘眠の魔術をかけてレッドギャップを眠らせるが、それでも範囲外のレッドギャップたちは唸り声を上げながら古びた武器を振り回しながら襲い掛かってくる。


 それに対して、アヴリルはさらなる呪文を繰り出した。




「《脱水》ッ!!《凍傷》ッ!!」




 それはグレンデルにも用いた肉体の水分を吸い取る《脱水》、そして相手の肉体の温度を極端に下げて相手に皮膚や皮下組織の傷害を与える《凍傷》である。


 だが、それで傷を負っても目の前の極上の獲物に対して必死になっているレッドギャップたちは止まらない。


 脱水症状や凍傷になっても、死に物狂いでこちらに向けて武器を振り回して襲い掛かってくるのだ。


 それに対して、木々からクロスボウの矢が襲い掛かり、次々とレッドギャップたちに襲い掛かっていく。それは、陰ながら見守っているスカウトのレイアに違いない。


 心の中で感謝しながら、アヴリルは次の呪文を唱える。




「《氷面》!《氷面滑走》ッ!!」




 その瞬間、たちまち彼女の周囲の地面がビキビキと凍り付いて、厚さ一ミリ程度のつるつるとした氷面となっていく。スケートリンクなどと異なり、普通の地面を凍り付かせただけなので、それでもそれなりにデコボコしている部分はあるが、それでもいきなりの変化に、レッドキャップたちはついてこれず、思わずツルツルとした地面に耐え切れずに転んでしまう。


 そして、それに対して、アヴリルはまるでスケートリンクでスケートをするように、優雅に氷面を滑っていく。じたばたとあがくレッドキャップと、優雅に氷面を滑っていくアヴリルでは機動性が全く異なる。


彼女は魔術の杖に魔力を集中させて、魔力刃を魔法の杖に展開して、まごまごしているレッドギャップに対して襲い掛かっていく。歩くのにも苦戦しているレッドキャップたちを、滑りながらアヴリルは魔力刃で次々と切り裂いていく。


情けなど無用である。ここで情けをかけてしまっては、自分が孕み袋になってしまう危険性を彼女は十分に知っているからである。




眠っていたレッドキャップたちも殲滅し、ほとんどのレッドキャップを片付けた彼女の前に、クロスボウを放って支援を行ったレイアが姿を現す。




「いやぁ助かりました~!!ありがとうございます!!」




そう言いながら、アヴリルは一匹のレッドキャップの腕や頭を魔力光でザクザクと切り裂きながら、それを近くの川で体液などを洗い流して回収していく。


それを見ながら、レイアは恐る恐る彼女に問いかける。




「あ、あの……。それどうする気なんですか?」




「え?そりゃ実験に使いますよ?当たり前じゃないですかー。」




平然とレッドキャップの頭を切り取って洗いながら、あはは、と明るく笑うアヴリルに対して、そういったことに免疫のあるレイアも思わず多少引いてしまう。




「まあ、真面目に答えますと……何かちょっと変な感じがするんですよねぇ。いくらなんでも、同じ妖精族とはいえ、ゴブリンからの進化が急激すぎると思いますし……。まあちょっと肉体を調べてみますか。何か見つかるかもしれません。」

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