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第29話 巨大コウモリとの戦い



 何だかんだあったが、辺境伯と同盟を結んだエルはバット・クアノが存在する次の階層へと足を運んでいた。バット・クアノのある階層は脱出魔術の応用で時空間を歪めて”回廊”を作り出して、まずは冒険者たちを送り込んで階層を鎮圧、安全を確保してから採掘部隊を送り出すとのことである。


 無数の蝙蝠たちは他の階層に逃げ去ったり、回廊を通して外に逃げたり、そのままその階層に残ったりと様々だが、元々大量の蝙蝠など人間が制御できるものではない。


 理想的には、他の階層に閉じ込めてまたバット・クアノを作り出すように仕組みを作り出すのが人類的にはいいのだろうが、そんなことをしている手間暇はない。


 ともあれ、ここから掘り出されるクアノを使用して、大量の火薬が作り出されて辺境伯の元に送り込まれる予定である。


 次の階層に足を踏み入れたエルたちは、その漆黒の闇ともいえるほど暗さに思わず驚いた。普段は照明代わりのヒカリゴケが天井に生えて十分光量が存在しているのだが、ここの階層はそれがなく真っ暗闇なのである。


 


『うわぁ、真っ暗で何も見えない……。ヒカリゴケが生えていないのか?何か光の呪文を頼む。』


 


「!?いえ、竜様!気をつけて下さい!これはただの闇ではありません!恐らくは魔術によって作り出された闇です!」


 


 


 ユリアの光の魔術である程度は見通しはできるが、ヒカリゴケによる光源もなく、不安定な光では周囲を完全に見通す事はできない。


 そして、それに対応するように、周囲からキイキイという音と羽音が聞こえてくる。


 恐らくはコウモリ。しかも、人間大の巨大コウモリに違いない。


 そのコウモリは、自然に魔術を発生させ、自分たちの周囲を暗闇で覆っているのだ。


 しかも、そのコウモリたちは完全に眼球が退化しているため、ユリアの発生させた光でも激痛が走り、狂ったように明かりを持っているユリアたちに襲いかかってくる。


 


《な、なにが起きてるんや!》


《画像が乱れてさっぱりわからん!》


 


 そんな事言ってる場合か!と思いつつもエルは、ユリアに対して指示を出す。


 


『ユリア!!棒をこっちに渡すんだ!』


 


 そのエルの言葉に従い、ユリアはエルに対して魔術で光が灯った6フィート棒を投げ渡す。エルはそれを床に突き立てて、光によって怒り狂った大型コウモリは襲い掛かってくる。確かコウモリは多数の病原体を持っていると聞く。(ちらりとネットで聞いた話では、狂犬病や様々な新型ウィルス、アフリカ諸国で発生したエボラ出血熱も元々はコウモリという話があるらしい。)そんな奴らをユリアたちに近づけるわけにはいかない。


 


『野郎!!コウモリどもが舐めるんじゃねえ!!』


 


 コウモリは、超音波を用いた反響定位エコーロケーション、つまり、自ら発した超音波音声(パルス)に対する反響音(エコー)を聴取・分析することで、周囲環境を把握し飛行していると聞いている。


 これによって、コウモリは光のない闇の中でも平然と飛行することができるのだ。


 ならば、それを逆に利用するだけだ。エルはすう、と息を吸い込むと、一気に竜の咆哮を彼らへと叩き込んでいく。


 


『ガァアアアアアッ!!!』


 


 猛烈な咆哮は、人間の士気や魂を打ち砕く効果を持つが、それだけではなく強力な魔力により、空気や超音波も平気で搔き乱す能力を所有している。


 自らの超音波を用いた反響定位エコーロケーションは完全に混乱に乱され、襲い掛かってくる巨大コウモリたちは右往左往しているのが音からでもわかる。


 あちこちに逃げてしまったり、壁やあちこちにぶつかっていくのが音でわかる。


 


『続いて手に入れた新しい力の試験運用や!重力魔術発動!!』


 


 ユリアたちを巻き添えにしないように、杖の前に出て、その前方にある漆黒の空間にエルはシュオールの鱗を手に入れてさらに身に着けた新しい魔術を使用する。


 ズン!と重力魔術を発動させた瞬間、前方の空間全ての重力が増し、基本的に滑空で空を飛行している巨大コウモリたちは耐え切れず、地面にベシャ!と落ちてくるのが音で感じられる。ベキベキという音と共に、巨大コウモリの柔らかい体は次々と押しつぶされて体液と内臓をまき散らしながら死亡する。


 それと同時に魔術の闇が消え去って、杖から放たれてくる光も周囲を見通せるほどになっていった。


 


《くそっ、今回は画像が乱れてよく分らんかった》


《ワイらは面白ドラゴンの面白い事をするために来てるんだ!面白い事しろ!!》


《おい!ユリアちゃん忘れるなよボケ!!》


 


 ええい貴様ら好き勝手いうんじゃない、我は芸人じゃないぞこら、と言いそうになったがエルは思わず我慢した。

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