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第28話 辺境伯と銃について



『ふむふむ。なるほど……。これが銃か……。』




 ついうっかり「この世界の銃」と言いかけて何とか自制する。


 そんなこと口走ってしまった際には、どんな目で見られるか分かったものではない。


 ともあれ、銃的には火縄銃、つまり、黒色火薬を使用し、前装式で滑腔銃身のマスケット銃という日本の戦国時代でよく使用されていた銃だ。


 火縄銃は、現代日本の銃に比べると口径が大きく、弾丸も重く、さらに鉛の丸玉はソフトポイント弾に似た効果を発揮するので十分人間に対する殺傷能力は高い。


 ……まあ、竜の鱗を貫けるかは不明だが、流石に自分の体で試す気にはならない。


 銃の構造自体には専門家ではないため手を加えられないが、使用方法の改善ならば彼でも行うことはできる。




『これは前に火薬を詰めて撃ち出す方式だな?それならば、問題は連射性だろう。


 弾薬を詰めて撃ち出すのはどうしても時間がかかってしまう。その間に間合いを詰められたらどうしようもない。弓矢やクロスボウ、攻撃魔術などもあるしな。この速射性を高めるための手段を取る必要がある。』




 そういいながら、エルはがりがりと床に爪で図を描いて説明する。




『まず第一の簡単な手段、それは銃の数を増やして、戦列にして交互にして撃ったら下がって弾薬を込める、そして前に出た奴らがそれをカバーするために射撃する。


 これで三段の戦列を作って交互に撃てばそれなりの速度は上がるはずだ。


 さらにそれをカバーするために、左右に弓矢隊や魔術師隊などを置いて\_/の形……翼包囲だっけ?の形にすればより攻撃力も増すし、銃の速射性もカバーできるだろ。」




 簡単に陣形を図にしてみると、弓矢隊→\_/←弓矢隊 という陣形である。


                 銃部隊(三列)


 こうすれば、真正面から突っ込んでくる敵に対して、中央部はまさに弓矢、銃撃の集中部である『死地』へと変貌する。


 だが、これも左右に回り込まれて横から攻撃を受けて一網打尽にされてしまう可能性もある。日本の三段撃ちにエルなりのアレンジを加えてみたものだが、やはり机上の空論であることは否めないため、これは試験運用してアレンジしてもらうしかない。




『もう一つは、1人の射撃手に数丁の火縄銃と数人の助手がついて、射撃手が射撃している間に助手が火縄銃の装填を行えば、素早い連射が可能になるはずだ。


 そして、最後の一つは、早合……いや、「ペーパーカートリッジ」だな。


 これが実用化できれば速射性は増すことができる……はずだ。』




 ペーパーカートリッジは、火薬と弾を紙でソーセージ状に包んだもので、弾の入っていないほうを歯で噛み破って、中身の火薬を銃口に入れて、弾と残りの紙を槊杖で押し込める方式である。


 これを大量にポーチに入れれば比較的速射性は向上するはずである。


 西欧では火縄銃時代においては、木製の早合を2本の細紐で印籠繋ぎにしたものを多数ベルトに吊るしそれを袈裟懸けに掛けて携行らしいが、まあやりやすければそれでもいい。


 要は使う人間がいかに早く撃てるか、ということである。


 これ以上になると、雷管を使用したパーカッション式の後装銃が次世紀の銃としては最もふさわしいが、それには雷管開発が必要になってくる。


 雷管など、素人に手の出せる分野ではない。少なくとも、魔術師や錬金術師、ドワーフ族などがいない今の彼らにとっては無理である。




「……何か随分と詳しいようだが。」




 思わずジト目で見てくる辺境伯に対して、エルは吹くこともない口笛をヒューヒューと吹きながら、そっぽを見て言葉を放つ。




『こ、これは全部ドワーフから聞いた話だから。全部ドワーフからの話だから。


 ……そういえば、この近くでドワーフ族がいる場所知らない?元のドワーフたちは皆マミィ……もといシュオールについていってしまっていないんだよね。』




バレバレのウソをつくエルを不審げな目を見ながら、ルーシアは自分の知っている情報をエルへと教える。




「ふむ……。確か少し離れた所にかつてシュオールが封印したとされる『腐敗竜』の封印を守護するドワーフ族がいると聞いたが……。確か、シュオールを神として崇める一風変わったドワーフ族らしいだからコンタクトをとってみたらどうだ?」




 なんでそんな厄介そうなのが封印されているの?と言いたくなるがともあれ、ドワーフ族でマミィを神として崇めているドワーフならば、こちらのいうことにも従ってくれるに違いない。勝ったなわはは!!とエルは心の中で叫ぶ。

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