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第27話 辺境伯との同盟

第27話 辺境伯との同盟


 バット・クアノを発見したエルは、大迷宮最上層へと一度帰還し、それをアヤに報告する。これはアヤから辺境伯にきちんと情報を伝えろ、という意思表示である。


 それは即時に伝えられ、数日という極めて早いうちに、辺境伯自身がお供を連れて大迷宮にまでやってくる事態になった。


 辺境伯自身が少数のお供だけで竜に直接会うなど前代未聞ではあるが、事態はそうは言っていられない状況だったからである。


 彼女は、馬から降りると、小型化したエルに対して、膝をつき、恭しく挨拶を行う。




「初めまして。竜様。私は辺境伯ルーシア・フォン・フォーサイスだ。二つの開拓村を救っていただき感謝する。本来は私の行うべき仕事だったのだが……。まあ、それはさておき、大量の硝石が確保できる場所が大迷宮で見つかったとなればな。それは真っ先に駆け付けるさ。」




 硝石の重要性を知っているということは、この世界においてやはり銃はそれなりに普及しているということだ。


 自分が初めて火縄銃の開発者になれないのは少し残念ではあるが、ドワーフならともかく竜の自分が火縄銃の開発を行っても人間たちはそれを認めまい。


 むしろ、そんな知性のある竜は危険だ、と判断されかねない。とりあえずそれを確認するべく、辺境伯へと話を聞いてみる。




『それで、聞きたいんだが、銃の情報は配信技術で広まっているのではないか?


 ……いや、銃についてはドワーフから聞いたから脅威は知っているからね。こんなのが配信技術で広まったなんてことになったらたまった物じゃないから。』




 嘘である。100%嘘である。(少なくともドワーフ云々は)


 かつては大迷宮にも多数のドワーフが存在していたらしいが、いつの間にか全て姿を消しており、少なくともエルは大迷宮内部でドワーフたちと会ったことはない。


 彼らは新しいシュオールの居住地を作っていると聞いたことがあるが、それは今はどうでもいい。




「では質問に答えよう。まず、銃の仕組みは軍事機密にあたる。その軍事機密が配信を通して他国に流れたらどう思うかね?まあ、本当に軍事機密を配信で流すアホが多いのが悩みの種だが……。ともあれ、そういった軍事機密を配信で流した者は死刑にされても何ら文句はいえない。銃職人たちも基本的は呪的契約で結ばれて離せないようになっているしね。」




 なるほど。最新の農業の技術やら何やらは配信によって広まっているが、銃などと言った軍事機密の技術や情報がそう簡単に配信で流れるはずもない。


 考えてみれば道理である。と、なるとこの分野では知識チートができるのでは!?とも思ったが、所詮は素人の付け焼刃である。


 技術というものは実践と研究データ、積み重ねた年月が全てだ。


 だが、とりあえずアイデアだけいってよさそうなアイデアを向こうに実用化してもらうという形なら納得いくだろう。




『なるほど。分かった。とはいえ簡単に軍事機密を見せたくない、というのも理解できる。それで交換条件といこう。


 新しい階層でバット・クアノ……コウモリのフンからなる多量の硝石の材料を我々は発見した。この階層の権利をそちらに譲る代わりに、こちらの開拓村にも銃器や弾薬の支給をお願いしたい。』




 辺境伯からしたら、多量の硝石の存在など喉から手が出るほどほしい。


 いかに情報が飛び交う世界と言っても、大量の硝石の作り方まで飛び交っているわけではない。(古土法などは存在しているだろうが)そうなれば、必然的にどこかしら硝石を調達するしかない。


 それが向こうから転がり込んできたのだ。これから人類至上派との戦いを控えているであろう辺境伯にとっては、まさに天の恵みそのものであった。




「ほ……本気か!?硝石の大量産地をポンと渡すなどと!!それだけで大金が手に入るのだぞ!?」




『確かに資源生産地ではあるが、今の我にはまさに宝の持ち腐れだ。それならそちらに渡して戦力増強に努めてほしい。そうだな。これをネタにしてそちらと我々は”同盟”関係を結びたい。こちらにとってもそちらにとっても、人類至上派が目障りな敵なのは事実だろ?奴らが襲い掛かってくるときに対して、今から強力な武器を生産して対抗していく必要がある。それは同じだと思うが?』




「ふむ……。なるほど。我々は運命共同体になるわけか。そちらも開拓村を救ってもらった以上、人類に無差別に危害を及ぼすことはなさそうだ。分かった、喜んでその提案に乗らせてもらおう。よろしく頼むぞ。竜殿。」




 どういうと、小型化したエルと辺境伯ルーシアはお互いに握手をした。


 お互い共通の敵がいる以上、力強い仲間になることは間違いない。


 エルからしてみれば、辺境伯という大貴族の後ろ盾を得られたことは非常に大きい。


 彼女の大貴族としての力を借りることができれば、こちらも社会的に排除されなくなり、堂々と振る舞うことができる。




『それで頼みがあるのだが、そちらの銃を見せてくれないだろうか。これから先、銃はますます強大な力になる。今のうちから対策を打っておきたい。』




なぜ竜なのにそこまで銃を恐れるのだろうか?と思いつつも、ルーシアは大人しく彼の要望に従う事にした。

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