表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

25/119

25話 人類至上派の狂気



 


 注意:今回は猟奇的描写があります。苦手な人はお気を付けください。


 


 


 どこともしれない闇の奥部。何重もの結界に守られた、だだっ広い部屋に丸い円卓が置かれたそこでは数十人との男たちが会談を行っていた。


 彼らこそ『人類至上派』のトップクラス、指導者の集まりともいえる存在たちだ。


 


「さて、それでは現状の作戦会議と参りましょう。まずは神弓ミストルティンの神血の件についてになります。」


 


 画面が切り替わると、そこには無数の男女が狂ったように、あるいは泣きわめきながらお互いに交わっているまさに乱交、サバトといってもいい場面だった。


 それは王家の分家の貴族たちを捕らえて、薬、洗脳、魔術、あるいは無理矢理近親相姦による交配を行い、より純血に近い『神血』を持った存在を生み出そうとしているのだ。そうなれば、王家を失った今の彼らでもミストルティンが動かせるようになるかもしれない、という考えである。


 


「御覧のように、現在は神血持ち同士の近親相姦によってより純度の高い神血持ちを『生産』中であります。魔術によって早めてはいますが、生産効率は悪いのはご了承ください。」


 


 その場面を見て、激高したり嫌悪感を持っている人間はここにはいない。


 皆、にやにやという意地悪い笑みを浮かべながら眺めているだけだ。彼らはこの泣きながら親子が交わっているシーンをいい娯楽として楽しんでおり、限定配信で配信して金すら稼いでいる。


 人類至上派を謳っておきながら、彼らには人倫に配慮する気など欠片もないのだ。


 


「では次にまいりましょう。両手足を切り取り、金属ゴーレムと接続して敏捷性の高いゴーレムを生み出す計画ですが、こちらは比較的上手くいっております。


 最終的には、首だけ……いえ、脳髄をゴーレム内部に移植すれば高性能な戦闘用ゴーレムが誕生することでしょう。


 現在、亜人たちを使用して脳と魔導機械との接続を試みております。また、脳を改造しての洗脳、及び脳機能の活性化によって魔術使用の向上を行えないか実験も行っております。」


 


 うむ、と彼らはその実験結果に頷く。それは亜人たちの脳を魔道装置の中に組み込んで研究を行っているということなのだが、彼らにとってしてみれば、「だからどうした?」と言わんばかりである。


 人類が世界を制覇するためには、亜人など喜んでその身を捧げるべきである、と彼らは信じているのだ。そして、人類至上派の現状を解説している男は、次が我々が開発した現在地点で最新にして最強の兵器です!!と堂々と叫びながら、場面を切り替える。


 それは普通の人間なら見るに堪えない悍ましい物体だった。


 極めて巨大な脳……恐らくはドラゴンの剥き出しの脳のあちこちに、数十体の亜人、竜人の首が装着されているのである。


 竜人たちの首はそれだけでも生存しており、その頭部に外部から様々な魔術的ケーブルを埋め込まれ、それによって操作できるようになっている。(当然ドラゴンの脳もそれだけで生存している)


 この竜人たちの首は、エルダードラゴンの脳を操作するための外部制御装置なのだ。


 竜人たちの首が苦悶や呪いの言葉を絶叫している悍ましい映像を見せながら、男は興奮しながら他の人間に対して叫ぶ。


 


「ご覧ください!!エルダードラゴンの脳を、数百人の竜人の脳で制御している我々の秘密兵器「千の顔の月」自動竜語魔術詠唱機『ヒュドラ』を!!


 数十人の竜人の脳を取り付け!外部竜人脳制御装置によってエルダードラゴンの脳を制御する!!これによって我々、人類至高派は竜の力を手にする事ができたのです!!」


 


 そのおぞましい『ヒュドラ』を見て、その場にいる彼らは一斉に立ち上がり、スタンディングオペレーションにより拍手の嵐が響き渡った。


 


「素晴らしい!実に素晴らしい!我々が竜の力を手に入れる事ができたとは!!」


 


「たかが竜人数十人の脳でエルダードラゴンの力を制御できるとは!!これは素晴らしい発明ですな!!」


 


『ヒュドラ』は元はエルダードラゴンであるため、外部からの刺激により人間より遥かに強力な竜語魔術を使用することができる。


 人類至上派の拠点に竜語魔術に強力な結界を構築したり、竜語魔術を使用して様々な実験に使用したり、攻撃魔術を放つことができたりと夢は膨らむ。


 この『ヒュドラ』が大量生産された暁には、もはや人類は竜に怯えることがなくなるのだ。なんと素晴らしい発明なのだ!と彼らは本気で信じていた。


 


 その熱狂的な拍手の雨に、男性は拳を振り上げながら演説する。そう、これは彼らにとって第一歩にすぎない。やがては竜族をもねじ伏せ、神々すら凌ぐ超絶的存在へと人類全体を導く。これこそが彼らの本当の目的なのだ。


 


「確かに我々、人類至高派は第一歩を踏み出しました。だが、これは最初の一歩にすぎません。亜人を弾圧し!竜を滅ぼし!神々すらも我々が支配する!!


そう!人類こそ神々の正当な後継者である!人類全体を『神化』させ!やがては神々すら凌ぐ超絶的存在となる!!人類の人工的『神化』こそ我々人類至上派の最終目的なのです!!」


 


おおお!!とその言葉にさらに一斉に拍手が起こった。


熱狂的な興奮と拍手の渦の中、苦悶の声と助けを求める亜人たちの声は彼らには届かず掻き消えていった。


 


-------------------------


 


お読みいただきありがとうございます。


 


面白いと感じていただけたら、☆☆☆やフォローをいただけると嬉しいです。


 


 


人類至上派は、某ARMSのエグリゴリや、某メガテンのメシア教とお考えください。


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ