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第21話 冒険者たちへの提案

 何とか階層を潜り抜けたエルだったが、それでも帰還の際がまた大変だった。

 植物地獄など完全にその階を制圧しているわけではない。帰りに植物などに襲われたりするのは確かに厄介だし、毎回これを行うわけにはいかない。

 特殊な帰還呪文や帰還用の魔晶石など準備するのも大変だし、きちんとその階層を制圧して怪物たちの出現を最小限にして、移動をスムーズにしなければならない、と判断したからである。


 「?冒険者たちに対して提案がある?まあ、彼らも完全に言うことを聞くわけではないのですが……とりあえず、お聞きしましょうか。」


何とか最上層まで帰ってきたエルは、冒険者ギルドの支部長のアヤに対して自分自身の提案を放つ。彼女から伝えられれば、いかに歴戦の彼らでもそれなりには話を聞いてくれるだろう、という考えのもとである。


『うむ、まずこの大迷宮は普通の人間が突破することは難しい。例え熟練の冒険者たちであってもだ。それこそ英雄クラスなら別だろうが……。

 そこで提案があるのだが、我が真っ先に階層を攻略するから、冒険者たちは我の攻略した階層をきっちり安定する仕事をしてほしいのだがどうか?』


 エルは階層は突破できても、その階層をきちんと調べて宝物などをゲットするなどと言った余裕はない。

 彼の目的は「大迷宮の最深部を攻略して大迷宮の制御権を獲得する」である。

 そのために、できる限り早く階層を突破する必要がある。

 対して冒険者の目的は「宝物をゲットして裕福に暮らす」である。

 下手にまだ攻略されていない深部に乗り込んで死亡するより、攻略した階層をきっちり探って宝物をゲットしたほうが彼らの特になる、ということだ。

 攻略した階層をきちんと安定化させれば、帰還の時にスムーズに帰れて戦力が低下した状態での安全な帰還が行える。

「行きはよいよい、帰りは怖い」は冒険者でも通用する。帰還魔術はきちんと存在して、普段はそれで帰還しているが、魔力が尽き果てて上層部まで歩いて帰還する時に、危険な魔物たちが平然と歩き回るのと、階層がきちんと攻略されて、魔物もほとんど出ないとでは雲泥の差がある。


 それならば、冒険者たちに安全な帰路を確保するために戦ってもらおうというのだ。

 宝物は確かに惜しいが、大迷宮の制御権に比べれば石ころのようなものだ。

 制御権さえあれば、魔晶石などいくらでも作り出せてそれを人類サイドに販売できる。大型の魔晶石は大都市の電力……もとい魔力消費を賄えるほどだが、それも大迷宮ならば容易く生み出せるだろう。そうなれば、人類サイドから大金をせしめることも可能である。


「うーん、私たちは冒険者たちに命じることはできないのですが、まあある程度そうしてくれ、というお願いならすることはできます。

まあ、お願いに従ってくれるかは彼ら次第ですが……。とりあえずお願いだけはしておきます。比較的安全な場所で隠されている宝物をゲットできるとなれば、彼らも喜んで言うことを聞きそうですが。」


よし、それでいこう、とエルは頷く。冒険者たちを目の前の財宝で釣り!こちらは肝心の大迷宮の制御権を手に入れる!制御権さえ手に入れば一生ウハウハ生活や!!ざ、財宝が取られるなんて悔しくないもん!!とエルは心の中でギリギリと歯を噛みしめながら何とか耐えていた。

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